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第二話 魔道書を狙うモノ達 その5

 ○○県S市の都心にある繁華街こと浪岡商店街アーケードなんだけど、私としては表通りより、路地裏の方が好きだったりするのよね。



 まあ、馴染みの店が路地裏に集中しているってところもあるかな? だけど、ここらへんはアウトローな連中の溜り場だったりするのよねぇ、困った困った。



「師匠ォォォ! 待ってくれっす!」



 鬱陶しい不良共の溜り場である空き地の前から立ち去って間もなくである。なんだかよく判らないけど、私のことを師匠と呼ぶ金色に染めた髪の毛がツンツンと逆立った小柄な少年が駆け寄ってくる。



「ん、アンタは不良の仲間でしょう?」



「まあ、そうっすけど、アイツらとは縁を切るっす! 今日から俺はアンタの弟子っす!」



「ちょ、なにを突然!」



 むぅ、なんなのよ、コイツ! でも、師匠って言われて気分がちょっとだけ嬉しいかも……。



「ああ、名乗ってなかったっすね。俺は安田靖彦(やすだやすひこ)っす! ヤスって呼んで欲しいっす!」



「は、はあ、ヤス君ねぇ……」



「ヤスって遠慮なく呼び捨てしてほしいっす!」



「むぅ~……」



 金髪ツンツン頭のチビ男子の名前は、安田靖彦というらしいわね。んで、ヤスって呼んでくれって言ってるけど、私は弟子にする気なんてないんだけどなぁ。



「あ、俺、見たっすよ! その木刀からなにかが放たれるのを! 衝撃波ってヤツっすかね?」



「み、見えたわけ? うーん……」



 木刀ことバルザイの偃月刀を振るうと同時に生じた衝撃波が、ヤスに見えた、と!? うーん、一応、不可視の波動なんだけどなぁ? ひょっとして魔法少女――いや、魔法少年の才能があるとか? 



「かぁー! 俺もあんなすげぇ武器が欲しいっす! それを師匠のように正義のために振るいたいっす!」



「は、はぁ……」



 あの~もしもし? 私は別に正義にためとか、正義の味方とか、そんなんじゃないわ。苛々が募ったことと、脅しもかねて振りまわしたにすぎないんだけど……。



「ところでさ? あの黒いフルフェイスでかぶった黒ずくめの三人組が、こっちに向かってきているんだけど、アンタの仲間だったりするわけ?」



「姉ちゃん、違う気がする。アイツらから嫌な気配がする!」



「んん、一緒にいるのは師匠の弟さんっすか? てか、仲間なんて連れて来てないっす!」



「じゃあ、あれは!?」



 ん、いつからいたんだろう? 黒いフルフェイスのヘルメットをかぶった黒ずくめの三人組の姿が、私と悠太、ついでにヤスの行く手を阻むように数メートル先に立ちはだかっている。どうやらヤスの仲間ではないようだ――嫌な予感がするわね。



「嫌な予感がする? 俺もなんだか嫌な感じがするっすよ、アイツら! 師匠、ちょっと待っててくれっす! おい、テメェら何者だ……グ、グギャ!」



「あ、ああ、ヤス!」



 無謀というかなんというか、ヤスが行く手を阻むように現れた黒ずくめに食って掛かる――が、その刹那、黒ずくめの男のひとりが打ち放った裏拳を顔面に受けてノックアウト! そんなヤスは、ゴロゴロと地面を転がり、雑居ビルの壁にぶつかって動かなくなる――むぅ、気絶しているだけならいいんだけど……。



「あの黒ずくめの三人組は敵かもしれないわね」



「て、敵!? うーん、間違いないと思う……うわ、来た!」



 ヤスを裏拳で殴り飛ばした黒ずくめの男のひとりが、私と悠太のもとのやって来る! なんだろう、この嫌な感じは――殺気というヤツか!?



「手荒な真似をして済まない――が、さっさと死霊秘法と黒き破片(ブラックチップ)を我々に渡すんだ! 命だけは助けてやる」



「な、なにィ!? 死霊秘法を渡せ? つーか、黒い破片ってなによ!」



 黒ずくめの男の目的は、私が持っている死霊秘法のようだ。だけど、誰が渡すものか、お前なんかに! てか、黒き破片ってなによ? わけが判らないんですけどっ!



「おい、黒き破片のことは知らんようだぜ。とりあえず、死霊秘法だけでも奪っちまおうぜ」



「そうだな。あの御方が待ちわびていることだし――」



 あの御方って誰よ!? とにかく、残りの黒ずくめの男も私と悠太のもとへ殺気だった物腰で近寄ってくる。



「沙希、そいつらを痛めつけちゃいないよ。さっき僕が渡した化石を使った〝媒介変身〟を試してごらんよ」



「え、さっきに化石を使った媒介変身!?」



「おい、無視してるんじゃねぇ! ゴルァァァァ!」



 別に無視したわけではないんだがなぁ。むぅ、黒ずくめのひとり――黒い男Aと仮称しておこう。んで、そいつが右拳を振りあげながら突撃してくる!



「ちょ、いきなりなにを! は、だけど、そんな拳など……ガアアアアッ!!」



 ごめん、ちょっとだけキレちゃった♪ だって、いきなり攻撃してくるんだものっ! そんなわけでヘルメスの言うとおり、あの化石を媒介とした変身――媒介変身とやらを早速、私は試してみようとばかりに、例の化石を自身の魔力を呼応させ黒い男Aをボコってやろうと思うのだった。



「お、俺の拳を受け止めただと!? な、なにィィィ! うわああああああっ!」



 黒い男Aは、私が拳を受け止めたことに驚くが、さらに驚き悲鳴をあげる。フフフ、私が例の化石を媒介として変身した姿に身の毛も弥立つ恐怖心を抱いたようね。しかし、まさか〝あの動物〟の骨だったとは意外だったわ。



「おおお、お前、ヒト型爬虫類(レプティリアン)か! そ、そうか、判ったぞ……蛇人間(イグ)だな!」



「ちょ、なんだかよく判らないけど、私はフツーの人間よ! つーか、よ~く見なよ……アンタは得をしているのだから、クククク……」



「う、うわああっ! わあああっ!」



「そんなに暴れなくていいじゃん。アンタは生きた恐竜をこうして見れたんだし♪」



 さて、例の骨を媒介として変身した今の姿だけど、私達、人間を含めた哺乳類は栄えるずっと以前――太古の地上を縦横無尽に闊歩していた絶滅種の大型爬虫類こと恐竜なのだから――。



「ちょ、ティラノサウルスTレックス!」



「わお、あの恐竜の骨だったのね、あれは♪」



「うへぇ~すごいなぁ♪ まさか恐竜に変身できるなんて♪」



 すっごい驚きだ! まさか恐竜に変身できるなんて――しかも恐竜の王者と言っても間違いないあのティラノサウルスTレックスだ♪ とはいえ、小柄な私の身長を基準としているので、大きさは精々二メートルあるかないかってくらいかな? うーん、大きさ的にデイノニクスとかヴェロキラプトルみたいな感じだろうか?



「う、うわあああっ! ブクブクブク……」



「あ、気絶しちゃった。泡を吹いてるっぽわね……あらら、元に戻ってしまった」



 黒い男Aは気絶しちゃったようだ。情けないわねぇ♪ あ、すぐに元の人間の姿の戻ってしまったわ。



「初めての媒介変身だし、身体が馴染まなかったみたいだね」



「そうなのかぁ……。うーん、しかし、恐竜に変身できたなんて夢のようだわ。フフフ、また化石を頼むわ――別の恐竜の化石を♪」



「もちろんさ♪ 君をサポートするのが僕の役目だからね、フフフフ……」



 私の脳裏には様々な恐竜の姿が浮かぶ。プテラノドン、ステゴサウルス、トリケラトプス――化石さえあれば変身できる! しかし、ヘルメスはどこから化石を持ってきたんだろう? そこらへんも気になるわね。



「あ、黒ずくめの男が逃げ出した! 追いかけるのか、姉ちゃん?」



「いや、放っておこう。しかし、お仲間を放置するなんて酷い奴らだわ」



 むぅ、気絶している黒い男Aを置いてけぼりにするかたちで、お仲間の黒い男BとCは逃げ出す。まったく、なんなのよ、アイツら! 死霊秘法を奪いのやって来たっぽいけど、戦わずして逃げるとか――。



「どうでもいいけど、気絶してる黒ずくめの男の素顔を覆っているフルフェイスのヘルメットを脱がしちゃおうよ、沙希」



「お、いいね。早速、脱がしちゃおう。悠太、脱がしちゃって!」



「ええ、俺が? 仕方がないなぁ……うお、なんだ、コイツ!!」



 お仲間に置いてけぼりにされた黒い男Aの素顔が気になるわね。そんなわけで私は、面倒くさがる悠太に素顔を覆い隠す黒いフルフェイスのヘルメットを脱がすように命令するわけだ――が、その刹那、思わずゾッとしてしてしまう光景に遭遇してしまうのだった。



「うわああ、蛙男っすか、コイツ!」



「あ、ヤス! 無事だったわけ?」



「大丈夫っすよ! 俺は不死身っす♪ それより、コイツ……人間なんすかね?」



「蛙男っつーか魚っぽい顔だから半魚人じゃないかな?」



「うーん、蛙と魚の混合生物(キメラ)って感じね……」



 黒いフルフェイスのヘルメットの下から現れたのは、蛙と魚の特徴を混同させた異形の面構えである。なんなの、コイツ……人外ってヤツなの!?



「インスマス面ってヤツだね。こりゃ深きもの(ディープワン)絡みだなぁ」



「インスマス面? それに深きもの?」



「深きものっていうのは、クトゥルフ眷属邪神群(CCD)と呼ばれる怪異の中で、もっとも有名な連中だったと思う」



「うむぅ……」



 うへぇ~なんだか面倒くさい連中が、私が持つ死霊秘法の目をつけてきたわね。さてと、黒い男Aをどうするかなぁ……。

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