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第十二話 魔法少女と強欲魔王 その2

 強欲を司る魔王マモンは、ナニが目的で光桜学園の旧校舎の視聴覚室こと自主アニメ制作部の部室を占領し、自らの固有結界――名無しの悪魔の歪んだ庭園改め強欲魔界(グリード・ザ・ワールド)とつなげたのかしらね? 奴のもとへ出張り、その理由を問いただしたい気分だわ。



「マモンさんは定期的に、僕達のようなモノをこの世界へ連れて来るんだ」



「ま、大体が、あの御方がチラつかせる金銀財宝に釣られたモノばかりだけどね」



「俺なんか何百カラットもあるでっけぇダイヤモンドの釣られちまってなぁ……」



「私は札束に……ぐぬぬぬ、それを使えないという生き地獄を味わっているよ……」



「ぐああああ、それは辛い! 辛すぎる! まさに生き地獄っすゥゥ~~!」



「ぐえええ、一種の拷問だァァ~~!」



 ヤスと狼姫が頭を抱えて苦しみ出す。ハハハ、確かに生き地獄であり、一種の拷問だわ。現界だったら莫大な財産になるモノが、この世界では巨大なダイヤモンドや札束であっても、タダの石の塊と紙クズ同然のモノでしたかないのだから――。



「私達はマモンに会いに行こうと思っている」



「マモンさんに会いに行くだって!? 今は危険だよ! 僕達が活動できる時間がやって来ると、黄金巨人も目を覚ますんだ!」



黄金巨人(ゴールデンタロス)!? へえ、そんな輩もいるのね」



 砂夜鬼のひとりが言う。自分達が活動できるようになると、同じく活動を開始する黄金巨人というモノもいるようね。



「黄金巨人か、そいつはどんな姿なんだ? 食べられるのか?」



「食べられるわけがないじゃん!」



「いや、食べられるよ。アイツは金粉入りのクッキーの巨人なんだ」



「な、なんだってー!」



 ちょ、金粉入りのクッキーの巨人だって!? ムムム、狼姫のお馬鹿な物言いが的中してるじゃん!



「マモンさんの兵隊は、みんなお菓子なんだ!」



「な、なにィィ! 丁度いいから倒して食う! 腹が減っては戦はできんからな、グフフフ♪」



「ま、まあ、とりあえず、僕の家においでよ。詳しい話を聞かせてあげるからさ」



「そうね、判ったわ。あの山と天辺にある黄金万魔殿の詳細をおしえてもらおうかしら」



 ま、なんだかんだと、詳しい話を聞いてから狂霊山の天辺にある黄金万魔殿へ行くべきかな。そんなわけで自分の家へと案内しようとする砂夜鬼の後に、私達はついて行ってみるのだった。



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「ふーん、この異界に二百年くらいいるんだ」



「うへ、砂人間さんは江戸時代の人間なんすね!」



 私達一行を独りでに光り輝く自宅へと案内してくれた砂夜鬼は、この強欲魔界に二百年ほど前からいるようだ。ふーん、二百年前だから江戸時代の人間だったわけね。ちなみに名前は、助兵衛。草鞋職人だったらしいわ。あ、父親の七衛門と母親のお滝も一緒に、この世界へ来てしまったようね。



「外の世界では二百年も経過してしまったのか……」



「時間の経過って恐ろしいですわねぇ……」



「う、うん、だけど、借金取りの熊五郎と子分達から逃げられただけマシだよ……」



 現界において助兵衛一家は借金取りに追われていたっぽいわね。とまあ、そんな折りに強欲魔界の主マモンの黄金の誘惑に誘われて、ここへやって来たって感じね。



「ここにはわしら以上の長い年月を過ごすモノもいるぞ」



「お隣の五条さんですか? あの方は公家のようですわね」



「あ、そんな五条さんは僕らが現実世界にいた時代からさかのぼること八百年前に、ここへやって来たそうです」



「そ、そうなんだ。上には上がいるのね」



 ムムムム、千年前から、ここにいるモノもいるようね。探せば、それ以上、長い年月を、ここで過ごしているモノもいそうだわ。



「あ、こんなモノしかありませんが、どうぞ」



「おお、カリントウか! いただきま……ぎゃいん! これは黒曜石じゃないか!」



「そうですよ。けっこう美味しいんですよ、それ――」



「うぐぐ、わらわは石を食わないんだ。アタタァ、奥歯がァァ~~」



「ま、とにかく、本題に入りましょう。あの山について、それにマモンさんとやらについての詳細を教えてもらおうかしらね」



 助兵衛達、砂夜鬼のお菓子は黒曜石のようね。うーん、食べるなんて無理だわ。とまあ、それはともかく、狂霊山、そしてマモンが住む黄金万魔殿についての詳細を助兵衛親子に訊くのだった。



「ここはマモンさんの趣味が繁栄された世界だ」



「金銀財宝に囲まれるのが大好きってわけね」



「それだけじゃないよ。マモンさんの趣味は果てしないようだ。そこの窓から城が見えるだろう? あの城の中では日々、新しい料理が創作されているって聞く。最近、料理に興味を抱いたためらしい」



「こっちに窓から見える城は、現界の歴史が詰め込まれた博物館らしい」



「へ、へえ、興味――それは果てしない欲望につながるわね」



 助兵衛一家の自宅は、ちなみに四階建てである。どんだけの黄金が使われているのやら――と、それはどうでもいいけど、私達は最上階である四階にいるわけだ。んで、そんな四階の窓からは、食糧保管城と博物館が見えている。



「ふーん、アンタ達の話を聞いているとマモンは、単に欲深いだけで別段、悪い奴には思えないわね」



「うーん、むしろマモンさんよりマジカナの方が危険だと思うよ」



「マジカナですって!? 沙希、あの馬のような悪魔を旧校舎に召喚した奴が、確か……」



「うん、マジカナだね!」



「うむ、そいつもマモンと一緒にいるのか! そいつも倒せれば一石二鳥だな!」



 マジカナもマモンと一緒に黄金万魔殿にいるっぽいわね。そんなマジカナっていうと、光桜学園の旧校舎内に馬夫ことアムドゥスキアス、それにマモンを召喚を召喚した迷惑な悪魔召喚士だったかしら?

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