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第二話 魔道書を狙うモノ達 その4

 狼姫の魔眼から放たれた邪気を受けて意識を失ったお爺ちゃんだけど、流石は魔術師ってヤツなのかな? 二時間もしないうちに回復し、そして烈火の如く、私は怒られるのだった。



 ま、それはともかく、私は○○県S市の都心にある自宅へと帰宅する。ん~世羅江野村にもう少しいれば良かった気もするけど、それどころじゃないんだよなぁ……。



 ああ、狼姫とタヌゾウとタヌキチ親子が一緒なんだよなぁ。アイツらは時代錯誤もいいところだからなぁ、トンでもない迷惑をかけられそうで恐いんだよねぇ……。



「ふう、試作品は完成したわ。次はナニを作ろうかしら……」



 さてさて、私は来るべき敵の出現に備えての武器作りを始める。んで、その試作品が今、完成したってわけだ。



「フフフ、今の時刻は午前二時半かな? 夏休みとはいえ、こんな深夜まで起きているなんて身体に毒だよ、沙希?」



「え、もうそんな時間なわけ?」



「ていうか、なにを製作したんだい?」



「バルザイの偃月刀よ」



 妖精さんことヘルメスが、ふわりと私の頭の上に舞い降りる。ミルちゃんという人形に宿った神霊のようだけど、なんだろう? 体温を感じるし、触れると柔らかいのよね。それはともかく、私はバルザイの偃月刀という武器を作成する。



「おおっ! でもさ、見た目は木刀じゃん……プププッ♪」



「わ、笑わないでよ! だけど、死霊秘法に記されていた呪文を刻んでおいたから大丈夫!」



「ま、とはいえ、作っただけでも立派な行為だ。ところで、他にも武器を作ったようだね」



「うん、一応ね」



 私が作成した武器は、なにもバルザイの偃月刀のみというわけではない。他にもいくつか作成してみたわけだ。んで、特にお気に入りなのは――。



「この彫刻刀で削って作った木の短剣の出来栄えには、自分でも惚れ惚れしているわ♪」



 私が作成した武器の中で、特に上手く作ることができたのが、ホームセンターで買ってきた長さ約三十センチほどの木の棒を彫刻刀で削って短剣だ。



「フフフ、しかし、君も物好きだねぇ。ホッキョクグマに変身すれば、そんな武器は要らないと思うんだけど……」



「むぅ、それは……」



 まあ、ホッキョクグマの変身すれば、武器を使う必要がないくらいの力を得られるけど、ある意味、隠し玉的なものだしね、変身は――。



「そういえば、ホッキョクグマ以外にも変身できるようになるかもしれない道具を君に預けておくよ」



「あ、ありがとう……ん、石? 化石の類かしら?」



 なんだろう、これ? ヘルメスから化石のようなモノを手渡される。



「フフフ、それは古代に生息した〝とある動物〟の骨の一部だ。賢明な君なら、大体のことは判るだろう?」



「うーん、なんとなく……」



 古代生物の骨の化石ってわけね。しかし、なんだろう? 絶滅種の哺乳類とか鳥類? もしくは恐竜とか大型爬虫類の骨とか?



「うーん、この骨の化石がどんな動物のものなのか? その候補が多すぎて頭が混乱しそう……お、名井有人からのメールだ」



 私はちょっとだけ頭が混乱する。だって候補が多すぎるんだもの――と、名井有人からのメールだ。まったく、こんな時間になんの用事かしたね?



「名井有人?」



「たまにメールを送ってくる正体不明のオカルトマニアだよ。何々『おはよー(・∀・) あ、まだまだ真夜中だったかな? さて、いつだったか教えた姫神塚古墳の亡霊の写真を撮るなら今日かもしれないよ! 興味があるなら君もカメラを持ってレッツゴー!』……ちょ、マジですかー!」



「ふむ、君は心霊写真マニアだったりするわけ?」



「そのまさかよ! こうしちゃいられないっ!」



 こうしちゃいられないわ! ダッと私はデスクの上に置いてあるデジカメを手に取ると、急ぎ足で私室の外へと飛び出す。ああ、バルザイの偃月刀とお手製の木の短剣、それにヘルメスからもらった化石も持って行かなくちゃ!



                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 私、山崎沙希は心霊写真マニアである――が、自分自身では、その手の写真を一度も撮影したことがないのが痛いなぁと思っているわけだ。



「うえぇ、今年も懲りずに撮りに行くのかよ! 去年はなにも写らなかっただろうに……」



「うっさいなぁ、アンタは黙ってついて来ればいいのよ!」



 さてと、今は夏休みというわけで、現時刻が午前二時半とはいえ、ゲーム三昧な生活を送っている夜更かし中の弟の悠太を強引に連れて行くかたちで、私は向かっている。毎年、八月の半ば頃になると出現すると言われている〝とある幽霊〟の姿を撮影するため姫神塚古墳という古墳がある浪岡自然公園という場所へと――。



「ところで姉ちゃん、その木刀はなんだよ? 妙な文字みたいなモノが彫ってあるけど……」



「ああ、コイツに記されていたバルザイの偃月刀ってヤツを作成してみたのよ」



「バルザイの偃月刀? 関羽の青龍偃月刀みたいなモノか?」



「名前は似てるけど、全然、違う代物よ。あ、そうだ。アンタにこれを渡しておくかなぁ~♪」



「ちょ、なんだよ、このダセェお手製の木の短剣は!」



「ダ、ダサい!? 自信作なんだけどなぁ……」



 うう、ダサいって言われた。悠太に手渡したお手製の木の短剣は、私にとっては自信作なのに……。



「ハートブレイクなことを言うわね、コイツ!」



「だって、本当のことじゃん! それより、嫌な連中が真っ向から向かってくるぞ」



「むぅ、忘れていたわ。今いるあたりは不良共の溜り場だってことを……」



 あうう、浪岡自然公園へ向かうための近道を通ったせいか、私は誤って不良共が集まる繁華街の路地裏にある空き地の前に――むぅ、案の定、薄暗い空き地にはガラの悪い連中のシルエットが! しかし、午前二時半だというのに元気すぎるのよねぇ。夜更かしの天才かもしれないわね。不良共って……。



「おい、お前ら! ちょっと待てや!」



「ヒィッ! 声をかけられた!」



「ちょ、なに隠れているのよ!」



 ヒィと喉の奥で悲鳴をあげる悠太は、サササッと私の背後に身を潜める。ちょ、男でしょう? 情けないなぁ。



「なにか用事? くだらない用事で声をかけたんなら、このまま行くわよ!」



「ちょ、ケンカ売るような返事してどうするんだよ!」



 確かにケンカを売るような返事かな? でも、思わずイラッとしちゃったんだし、仕方ないわ。



「ヘヘヘ、生意気な女も悪くねぇ♪ なあ、俺達と一緒に遊びに行かないか?」



「だが、断る!」



 ナンパ? つーか、興味なし! そんなわけで即答する。



「テ、テメェ! 俺がせっかく声をかけたのに即、断るだと!」



「わあ、不良がキレた!」



「落ち着いてよ、悠太。やれやれ、こーゆーヤツには……こうだ!」



 私の背後で悠太が悲鳴をあげる。まったく情けないわね。こういう場合は、姉であるか弱い私を守る騎士になるところでしょうが! フン、まあともかく、絡んできた不良のひとりを黙らせる必要がありそうだわ――と、そんなわけで私は両目の邪気を集中させ、そしてギンッと放つ!



「ぐ、ぐわあああっ! ブクブクブク……」



 不良は私と目が会うと同時に、ドシャッと仰向けにひっくり返る。ヒュー魔眼を初めて使ってみたけど、大成功ね♪ ああ、ちなみに、魔眼は狼姫から学習したってわけ。



「うわ、佐藤! な、なにが起きたんだよ!」



「口から泡を吹いてる! どどど、どうしたんだァァ~~!」



 不良共は混乱している。コイツら強がっているとはいえ、普通の人間だ。お仲間が口から泡を吹いて倒れてりゃビビッて当然だろう。



「おい、ゴルァァァ! 佐藤になにをしやがったァァ!」



「五月蝿いなッ! これ以上、絡んでくるようなら――」



 やれやれ、不良共の怒りに触れちゃったみたいね。てか、意外と仲間思いな連中だわ。ま、それはともかく、私は連中を驚かすためにバルザイの偃月刀を振り回す。



「う、うお! な、なにが起きた……あああ、土管が割れている!」



「な、なには起きたんだァ! ヒイイイイ―ッ!!」


 うお、すげぇ! 木製とはいえ、流石は死霊秘法に記されていた武器だわ! バルザイの偃月刀を振り回すと、轟ッッ!! と、衝撃波が巻き起きる――とまあ、そんな衝撃波が不良共の溜り場に置いてあるコンクリートの土管を打ち砕く!



「うーん、ちょっとやりすぎたかな。反省……」



 ひゃ~ちょっとやりすぎたかも、テヘペロ♪ ま、なんだかんだと不良共は腰を抜かしているうちに浪岡自然公園へ行かねば!

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