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第十一話 悪魔と天使と新人魔法少女 その18

登場人物紹介


・クーティ姫――深海の民と呼ばれる異形の種族の女のコ。


・三料理人――ノエル、キリヒメ、呂友の三人からなる三人組の妖精。

「ええと、この異世界の主はマモなんとかだった気がする」



「マモなんとか? はっきりしないのか、物覚えが悪いなぁ!」



「あうあう、はっきり覚えてないんや! 仕方がないやんか! だけど、悪魔は強欲だよ、すっげぇ~!」



「とにかく、現界にあるすべてのモノを、ここに保管しようと企んでいる悪魔の収集家だ! そんなわけで珍妙な生物でもある姫が狙われたってわけだ」



「コラ、誰が珍妙な生物よ!」



「ある意味、図星アルよ!」



「うんうん、間違ってはいないわね」



「お、お前らァァ~~!」



 ま、とにかく、東南アジアの蒸し暑い熱帯雨林地帯を完全再現された異世界こと名無しの悪魔の歪んだ庭園の主の名前は、クーティ姫の物覚えの悪さから全容がはっきりしないけど、どうやらマモなんとかっていうらしいわね。んで、すっげぇ強欲な輩のようだ。



「そのマモなんとかって悪魔はどこにいるのかしら? ひょっとして、底の窓から見えるもうひとつのお城?」



「んん~、どこだったっけ? 呂友、知ってる?」



「姫ェ、もう忘れたアルか! アイツは黄金万魔殿(ゴールデンパンデモニウム)にいるはずアル!」



「そういや、あそこの盗みに入って追い出されたんだよな、俺ら……」



「うんうん、でも、襲いかかってきた黄金巨人(ゴールデンタロス)の右足の親指を破壊して持ってきたじゃん~☆」



「うむ、あれは何気に収穫だったんやな~♪」



「ちょ、アンタ達って盗賊なわけ!?」



「「「「ちちち、違う!」」」」



 ムムム、クーティ姫&三料理人こと呂友、ノエル、キリヒメは、実は強盗のような連中なのかもしれない。



「あ、これを使いたくなったわ」



「わ、手錠はやめてーっ! もうしましぇーん!」



「ま、まあ、悪魔相手に泥棒を行ったんだし、許してやんなよ、早苗姉ちゃん!」



「ううむ、悪魔が相手とはいえ、警察官として見過ごすことができないのよねぇ……」



 ここは現実世界じゃないんだし、許してやってもいいのでは!? そうツチグモが苦笑しながら言うけど、警察官である早苗姉ちゃんにとっては許しがたい出来事のようね。ま、泥棒に入った先が悪魔の住処だったことだし、この場合は――。



「とりあえず、アナタ達の処遇は保留というこよにしておくわ。それより、黄金万魔殿はどこにあるのよ?」



「狂霊山の天辺アル! こっちにある窓から見えるアル!」



「ん、反対側の窓? わ、耳を引っ張るなー!」



 マモなんとかって悪魔の住処――黄金万魔殿とやらは、狂霊山という山の天辺にあるようだ。んで、三料理人のひとりである呂友が、グイッとツチグモも左の耳を引っ張りながら、蒐集物保管城が見える窓の反対側の窓を覗けって言い出す。そこから見えるのかな!?



「ムムム、山が確かにある……ん、その天辺でなにかが光っているけど、まさかアレのことか!?」



「そうアル! アレが黄金万魔殿だ! うへーなんか光ってるし!」



「あれれ、いつの間に夜になっているんだ?」



 呂友の言うとおりね。確かに、蒐集物保管城の反対側の窓から、マモなんとかの住処である黄金万魔殿があるという狂霊山が見える。さて、いつの間にか夜の戸張が降り、昼間から夜になってる。この世界にも昼夜が存在するようだわ。



「黄金万魔殿とやらから放たれているレーザーが一、ニ、三……とにかく、たくさんのレーザーが天空に向かって伸びているぞ。円を描くように――」



 狂霊山の天辺にある黄金魔万魔殿そのものが煌々と輝いているのに、おまけとばかりに空に向かって円を描くようにいくつものレーザーが放たれているわ。なんて贅沢な――と、私は言いたくなるのだった。



「あそこへ行くわよ! ここから出るには、あの黄金万魔殿へ行く必要があるわ!」



「う、うん、そうだな。あそこに行くしかないよな、早苗姉ちゃん!」



「よし、行こう!」



「途中ではぐれてしまった私の使い魔のヘパイストスとかに会えればいいんだけどね。そして部室を取り返し、現界へと戻ろう!」



「あ、そういえば、今の時間帯は、ここにいた方がいい。ま、遭遇したいならかまわないけどな、ゾンビ共に――」



「「「な、なんだってー!」」」



「ム、そういえば、さっきから窓の外から嫌な気配を感じるぜ!」



 狂霊山の天辺にある黄金万魔殿へ向けて出発だ! と、意気込む早苗姉ちゃんらをクーティ姫が引き止める――ゾ、ゾンビが出る!? ミカエル先生達が遭遇した花屍鬼のことかしら? んで、そいつらのモノかは判らないけど、窓の外から嫌な気配を感じるってタツが言い始める。



「な、なんでゾンビなんかが!? つーか、マジでいるのかよ!」



「ああ、ゾンビはマジだ! 光球で外を照らしてみるからさ。確認してみるといい、ニッヒッヒ♪」



「お、おい、引っ張るなよ……う、うえええ、腐った人間がいる!」



 ニヤニヤ笑いながらミスティアは、ツチグモを窓辺に連れて行く。んで、パタンと窓を開け、パチンと指を鳴らすと、親指の爪ほどの大きさだけど、あたり一面を一瞬にして昼間に回帰させてしまうほどの光量を持つ小さな光の玉が出現する――ムムム、いた! 夜の闇に包みこまれる食糧保管城(?)の外を蠢く身体のあちこちが腐敗した禍々しい蘇った死者(ゾンビ)共が!



「ヒ、ヒイイイッ! こっちに来る!」



「ハハハ、心配はない。アイツらは、ここには入れないんだ」



「そ、そうなのか、ふうう……」



「プーックックック♪ お前、チビったろ、ツチグモ?」



「な、なにを言うんだァァ~~! そんなわけないだろう!」



 ソンビ共は、ここに入って来れないようだ。とりあえず、一安心かな……あ、ツチグモが失禁したっぽい♪ 足許に水溜りが……ま、初めて見るわけだし、ある意味、仕方ないよね、クックックック。



「クククク、わらわのお洋服を貸してやろうか?」



「うん、お願いするわ。出雲君、いいわね?」



「ちょ、早苗姉ちゃん! お、女物の服なんて絶対、拒否したいぜっ……お、おわっ!」



「あ、ツチグモが窓の外に落っこちた! こりゃ、不味いな!」



 自分の服を貸してやろうか? そう言うとクーティ姫は、ニヤ~とわざとらしく微笑む――あ、その刹那、女物の服や下着なんて絶対に着るか! と、早苗姉ちゃんのもとから後ずさり、両手を胸の前に激しく横に振り、慌てながら拒否るツチグモが窓の外に落っこちる、あちゃー。



「まったく、なにやってるんだよ! 助けに行くぞ、ファム!」



「え、えええー! フン、仕方がないわね!」



「俺達も行くぞ!」



「むう、いきなり召喚されたと思ったら、外にゾンビがいるとは――まあいい、行こう!」



「うむ、外に落っこちたツチグモを早々に救出し、食事の続きをしたいものだ」



 ミスティアとファム、それにタツが急遽、助っ人として呼び出した相棒のエリザベートを召喚する。で、そんな相棒のエリザベート、使い魔のクロベエと一緒に窓の外に落っこちたツチグモを救出すべくゾンビ共が蠢く深淵の闇が支配する食糧保管城の外へと飛び出す。



「わ、私達も追うわよ!」



「え、追うの? ゾンビがいるんでしょう?」



「でも、出雲君を助けなくっちゃ!」



「よし、これを貸すわ、沙希の姉ちゃん! ヘパイストスからもらった獅子型万能装甲(レオ)よ。絶対に役に立つはずよ!」



「獅子型万能装甲!? ライオンの人形にしか見えないんだけど……」



「とにかく、コイツを貸してあげます。きっと、役に立つ――さ、私達も外へ出るわよ!」



「あ、待ってよ!」



 ミスティア達を追おうとした早苗姉ちゃんに対し、美雪が手の平に収まるほどの大きさの小さなライオンの人形を手渡す。獅子型万能装甲ねぇ――と、そんな美雪とともに早苗姉ちゃんと使い魔の女性型夢魔(サキュバス)のレインも、窓の外へと飛び出すのだった。

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