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第十一話 悪魔と天使と新人魔法少女 その13

「ウフフ、阿部クンのことをこれからは聖獣戦士ダンパーと呼びましょうかネ~☆」



「な、なんだよ、それ! もっとカッコイイ名前を思いつかないのかよ!」



「ダサい名前ほど敵に憶えてもられやすいと思いますネ」



 敵に覚えられやい名前とはいえ、聖獣戦士ダンパーってネーミングだダサすぎる。私だったら、もっとカッコイイ名前をつけてあげるんだけどね。例えば、猛熊戦士パンダーXとかね! え、そのネーミングもどうかと思うって? むうう、いいのよ、私がカッコイイと思う名前なんだから!



「ふたりとも、遊んでないで戦ってください。敵は次から次へと増える面倒な相手なのだから――」



 ギンッと真っ赤な双眸に怒りを彩らせながら、リュシムナートはミカエル先生と阿部クンを叱咤する。むぅ、確かに緑の小鬼共は次から次へと現れる面倒な輩のようね。



「痛ぇ! この野郎!」



「キリがないですね。倒しても倒しても、ゾロゾロと新しいモノが現れるし――」



「ふむ、なるほど、コイツらの正体が判りましタ!」



「正体が判った?」



「はい~☆ それじゃ吸血鬼さん、そこにある大木の精気を吸収できますか?」



「無論です。生物なら、どんなモノからでも生命力を奪えます」



 延々と増え続ける緑の小鬼共――ん、ミカエル先生は連中の正体がなんなのかを突き止めた!? んで、リュシムナートにナニをさせる気なのかしら?



「なるほど、私にもカラクリが判りました。では、早速――」



 リュシムナートにも緑の小鬼の正体が判った!? さて、ミカエル先生が指定した大木にリュシムナートの右手が触れた瞬間、彼女のそんな右手を中心に赤い光が拡散する……ん、ズギュンズギュンという音が聞こえるわね。



「ガガガガ、ヤメロ!」



「ソ、ソノ木ハ俺達ノ!」



「サセルカァァ! ソノ木ガ死ンデシマッタラ、俺達は……俺達ハッ!」



「もう終わりですよ。本気で生命力吸収を行いましたから――」



「「「ガ、ガアアアアアッ!」」」



 緑の小鬼共が、落雷の轟音を連想させる大声を一斉に張りあげる――あ、動かなくなった!? ついでに、緑色の薄気味の悪い皮膚の色が、サーッと真白く変色する。



「ど、どうしたんだ、コイツら!? し、死んだの?」



「はい、死にました。連中の本体の生命力を私がすべて吸収しましたので……ん、味は微妙ですね」



「あ、味は微妙って、おいおい……と、とにかく、助かったんだよな?」



「一時的にですけどネ~☆ あ、コイツらの正体ですけど、あの木から伸びた(つる)です。ほらほら、本体である木とつながっているでしょウ?」



「む、むう、そうみたいだなぁ」



 ミカエル先生が指定し、リュシムナートが生命力吸収を行った大木が、緑の小鬼共を操っていた本体のようね。真っ白く変色し動かなくなった連中の身体に見受けられる蔓を例の木とつながっているようだしね。



「雪美、どこ~! あ、ミカエル先生!」



「あらあら、アナタは多重人格者な魔法少女の若本美雪さんの相棒のヘパイストスさんでしたっケ?」



 ん、カサカサと鬱蒼とした茂みをかき分けながら、ヌッとしゃべる小動物が現れる。多重人格者な魔法少女こと若本美雪の相棒であるアライグマのヘパイストスだ。そういえば、若本美雪の姿は見受けられないわね。



「そうだよ、僕はヘパイストス。オリンポス十二神の一柱で鍛冶の神さ! ま、分霊なんだけどね」



「ふむふむ、ところでここへ足を踏み入れた他の魔法少女達は、どこへ行ったんでしょうかネ?」



「さあ、それは僕にも――」



「それは困りましたネ……ん、ウワサをすれば!」



「あうう、やっと見つけました。山崎さん達はどこへ行ったんです?」



「あら、真田先生。ウフフ、山崎さん達とはぐれてしまったようですネ」



「ちょ、ミカエル先生、笑い事ではありません!」



 ん、ヘパイストスに続くかたちで背の低い眼鏡の女のコと烏帽子をかぶった白い兎が、鬱蒼とした茂みの中から姿を現す。真田先生と使い魔の兎田兎麻呂だ。



「ウフフ、それにしても小さくなりすぎですネ~☆」



「ムムム、背丈が縮こまってしまったいのは仕方がありません。十七歳の時の私はチビでした。ふう、大学時代に急に伸びたんです……本当ですよ!」



「へえ~、そうなんですカ? でも、私はちっちゃい方が可愛いと思いますヨ~☆」



「ミカエル先生、私を馬鹿にしていません?」



「いえいえ、そんなことはありませんヨ。クスクス……♪」



「つーか、アンタ達、何者なんだ! しゃべるアライグマはいるし、おまけに烏帽子をかぶった変な兎もいるし……」



「魔法少女でス!」



「先ほど、言いましたよね? 私は吸血鬼の真祖だって?」



「…………」



 阿部クンの真摯な質問にミカエル先生が即答する……あ、なんだか固まっちゃったわね。頭の中が混乱しちゃったのかな? ま、仕方ないか――自身の身に起きた出来事も兼ねて、現状を頭の中で整理しなくちゃいけないわけだし――。



「お、俺は足を踏み入れてしまったってことか? 一般人が知り得ない世界に……」



「あら、物分かりが早いですネ。ま、そんなところですヨ、阿部クン」



「そりゃ、パンダの姿に変身しちまったしなぁ。これはもう否定できるレベルじゃねぇ!」



 ふむ、阿部クンは現状を把握するのが早いわね。流石はヒーローを自称するだけのことがあるわね。



「さ、皆さン、先へ進みますヨ。いつまでも、こんな鬱蒼としていて、おまけに蒸し暑い熱帯雨林のような場所にいたくないでしょウ?」



「は、はい、こんな暑苦しい場所から早く抜け出したいです」



「さっさと抜け出したいっつーか、人間に戻れないのかよ!」



「ウフフ、その話はさておき、とりあえず、ここを離れましょうかネ。さて、私の勘では……こっちでス!」



「なるほど、この場を早々に離れた方がいいようですね」



 ダッとミカエル先生が駆け出す。一体、阿部クンや真田先生をどこへ連れて行く気なんだろう? ん、リュシムナートはチラリと背後を振り返る――ナニかいたのか!?



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「うおおお、集落があるぜ!」



「だけど、廃墟だらけですね」



「ウフフ、とりあえず、言ってみましょうカ――」



 ミカエル先生に導かれるかたちで、鬱蒼とした熱帯雨林が完全再現された異界――名無しの悪魔の歪んだ庭園内を進む阿部クン、真田先生、リュシムナート、ヘパイストスは、廃墟だらけの集落へとたどり着く。



「誰かいたりしないよな?」



「気配がありませんね。ここは無人の集落でしょう」



「ここは廃墟だらけだしね」



「で、でも、油断をしちゃいけないと思います! こういう場所にこそ〝なに〟が潜んでいるはずです!」



 廃墟だらけの集落だ。こんな場所に住んでいるモノがいるとすれば、奇特なモノに違いない! いや、その前に、ここは現界じゃないわけだし、仮に住んでいるモノがいたとしたら――。



「もしかしたら、ここには化け物が住んでいるかもしれませんネ~☆」



「ちょ、嫌な冗談をやめてくれよ、ミカエル先生!」



「ウフフ、冗談ですヨ。なにをそんなの怖がっているんでス?」



「そ、そりゃ、怖いっつーの! こんな得体の知れない場所にいるんだぜ? さっきの小鬼みたいなの輩が、また現れるかもしれねぇじゃん!」



「ウフフ、とはいえ、ハイテンションでボコボコにしていたじゃないですカ~☆」



「そ、それとこれとは違うっつーの! とにかく、俺は怖いんだよ!」



「ふむ、ビンゴかもしれませんね」



「え、どういうこと!?」



「あの教会のような建物から奇妙な気配を感じました。一瞬ですけど――」



 えええ、やっぱり、ナニかいるわけ!? 背後を振り返るリュシムナートは、ギンッとなにかをにらみつける。その視線の先には、ゴシックな教会を連想させる廃墟が――。



「それじゃ行ってみましょう、皆サン」



「うええ、行くのかよ! ま、まあいい、行こう!」



「もしかしたら、山崎さん達かもしれませんしね」



 スッとミカエル先生は先行するかたちでゴシックな教会を連想させる廃墟へ移動する。さて、リュシムナートが一瞬、感じたという気配の正体はなんだろうねぇ。

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