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第二話 魔道書を狙うモノ達 その3

 さて、私と茜、それに悠太を行方を捜索するため百人体制で世羅江野村の住人達を中心とした捜索隊が組まれたとか、それに早苗姉ちゃんが○○県警のお仲間に援助を求めたせいで、さらなる騒ぎとへと発展していた。下手したら三百人以上の人間が、今いる姫鬼山にいるかもしれないなぁ……。



「沙希ィィィィ!! 超、心配したんだぞ! うおおお――ッ!」



「お父さん、汗臭い!」



「汗臭い? 久しぶりに再会というのにヒドいじゃないかァァ~~!!」



「うう、判ったから抱きつかないで――ッ!」



 こ、この親馬鹿! 私は無事だっつーの! つーか、汗臭いんですけどっ!



「うう、まあなんだかんだと、私を探しに来てくれただけでも嬉しいかも……」



 なんだかんだと、お父さんの姿を見たのは三ヶ月ぶりになる。国際的な考古学者というわけで、日本にいないことが多いからね。



「しかし、何事もなく見つかって良かった。この山は昔から危ないところだからなぁ……」



「うん、そういえば、冬彦さんはここで迷子になったんだよね、父さん?」



「ああ、神隠しに遭ったって騒がれたよ。この山には、その手の話が昔から多いからな」



 冬彦叔父さんの話は知っている。つーか、神隠しとか、その手の話が多いのは、タヌゾウとタヌキチの仙狸の親子や狼姫が関わっているんだろうなぁ――。



「馬鹿者ォォォォ!!」



「うわ、お爺ちゃん!」



 ひゃう、空を裂くような怒鳴り声が響きわたる。不動明王のような憤怒の形相のお爺ちゃんも捜索隊の中にいたのかー……うわ、ヤバそうな雰囲気が!



「アンタのお爺ちゃん? すごく恐そうね」



「ちょ、人事だと思って……す、すごく恐いに決まっているじゃん!」



 と、サマエルが訊いてくる。そのまさかよ! お爺ちゃんは怒るとトンでもなく恐い。まさに不動明王の如く怒髪天を突く勢いで怒っている、ヒィィ!



「ん、十二単を着た外国人……ギャッ!」



「ああ、お爺ちゃん!」



 そ、そういえば、狼姫も一緒だったわね……え、そんな狼姫と目が合った瞬間、お爺ちゃんは口から泡を吹いて仰向けに転倒する。な、なにが起こったわけ!?



「ああ、スマン、スマン♪ その爺さんには、何故かわらわの姿が見えるらしくてなぁ、ついつい……」



「え、アンタの姿が見える!?」



「ん~わらわは今、穏行の術という姿を消す術を使っているんだ」



「穏行の術? 姿を見えなくする術ってところかな?」



「まあ、そうなるかな? んで、あの爺さんには普通なら不可視の状態のわらわの姿が見えていたわけだ。ひょっとすると魔術師の類かもな。ああ、穏行の術を破ることができるから厄介なんだよなぁ、魔術師の心得がある奴は――」



「お、お爺ちゃんが魔術師!?」



「故に、ちと魔眼を使って黙らせたってわけよ」



「ちょ、おまっ!」



「沙希、独り言をぶつくさ言ってないでさっさと下山するわよ!」



「は、は~い!」



 姿を不可視の状態――要するに見えなくすることができる術があるんだ♪ 死霊秘法(ネクロノミコン)にも記されていそうね! 後で調べてみよう。そして体得しなくちゃね。なんだかんだと便利な術だし――。



「お爺ちゃんが魔術師か……」



 ちょっと信じられない気持ちだけど、自分の姿を不可視の状態にできる穏行の術を行使中の狼姫の姿を見ることができたようだから、お爺ちゃんはやっぱり魔術師なんだろうか……。



                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「お前もあの山で迷子になったのかよ♪ 冬彦もガキの頃、迷子になったよな、ハハハ♪」



「うう、人事だと思って……」



「…………」



 私達はお爺ちゃんの家へと戻る。ああ、サマエルと使い魔の黒猫のキョウタロウ、それに狼姫と茜の使い魔となったタヌキチ、ついでにタヌキチの父親のタヌゾウも一緒である。



 ああ、ちなみに、狼姫とタヌゾウは穏行の術を使っているので、お父さんや貞春叔父さん達には見えないわけだが――。



「変な気配を感じるんだけどさ。気のせい?」



「気配もそうだけど、洗っていない犬のニオイがするわ。これも気のせいかしら?」



「うん、気のせい!」



 私は即答する――というか誤魔化す。ヒュー夏美叔母さんと秋子叔母さんは、狼姫やタヌゾウの気配だけが感じることはできるっぽい。



「父さん、目覚めないわね」



「なんだか唸り声をあげてるわ! 村の診療所へ連れて行くべきかしら?」



 さて、お爺ちゃんはというと、狼姫の〝魔眼〟が放たれた邪気を受けて意識を失ったままである。とりあえず、身体的には大丈夫っぽいわね。



「あ、あれぇ? これはミルちゃん……私の部屋に飾ってある人形(フィギュア)じゃない!? それが何故?」



 さて、私達が今いる場所は、お爺ちゃんの家の茶の間で――ムム、そういえば、あの妖精さんのことを忘れていた――え、ミルちゃん!? 早苗姉ちゃんの部屋に飾ってある人形? 



「アンタでしょ、これを持ってきたのは!」



「ち、違うよ! 誤解だってばーっ!」



 むぅ、失礼な! 私はなにもしていないっつーの! 誤解だァァ~~!



「ミルちゃん……山の妖精さんシリーズの一体で唯一の紅一点」



「この人形ってシリーズものの一体なんだ」



「うん、でも、ミルちゃん以外は筋骨隆々の男の人形ばかりなんだ。ああ、何故か女性に人気のシリーズなんだよ。俺はミルちゃんのような女性型人形も増やして欲しいんだけどね」



「そ、そうなんだ、へぇ~……」



 と、そんな説明をする冬彦叔父さんがニィ~と怪しく微笑む。ああ、ちなみにだけど、冬彦叔父さんは人形オタクである。同じくオタクである漫画家の秋子叔母さんの家に居候しており、アシスタントを勤めて稼いだお金をすべて人気アニメやゲームのキャラの人形に注ぎ込んでいるとか――。



「ん~それを持っているってことが、早苗、お前って……プププッ♪」



「は、はわわわっ! 冬彦、それ以上、言わないでぇ――ッ!」



「あ、早苗、僕と兄さんシリーズの新作を描いたんだけどさ。今いい? アンタは熱狂的なファンだしさなぁ、是非とも感想を♪」



「ううう、秋子さんまで……」



「…………」



 冬彦叔父さんが言いたいことは判る。しかし、意外だなぁ、まさか早苗姉ちゃんが――まあいいや、人の趣味にツッコミを入れるなんて野暮な話だし♪ ちなみに、僕と兄さんシリーズとは、秋子叔母さんが描いているBLな漫画で何気に人気漫画だったりするのよねぇ。へえ、あの漫画の読者とはねぇ、こっちも意外だわ。



「あ、あれぇ、沙希がいない!? それに茜ちゃんと悠太、それにサマエルって外国人も……はう! 私のミルちゃんも……お、おかしいわね? さっきまで、そこのテーブルの上に置いてあったのに?」



(ふう、上手い具合に穏行の術を使えたわ)



(うんうん! 早く使い慣れておかないとね、沙希ちゃん!)



(うお、すげぇー! 俺にも姿を消す術が使えたぜ♪)



(フン、使えて当然よ。こんな初歩的な術なんて!)


(アハハ、まあとにかく、家の裏に広がる森の中へ行こう。妖精さんが来いって言ってたしね)



 私と茜、それに悠太とサマエルは穏行の術を使って姿を早苗姉ちゃんらに姿を見えなくする。その理由は、妖精さんが私達になんだかんだと話があるから、人気のないお爺ちゃんの家の裏にある森の中へ来てほしいって言ってたわけで……ったく、どんな話があるんだろうねぇ。



                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 私、山崎沙希のお爺ちゃんこと山崎源三郎の家の周りは、そりゃもう奥深い森である。タダでさえ、あまり開拓されていない田園風景が広がる世羅江野村のもっとも奥にある家だし、そこらへんは仕方がないのかもしれない。



「お、鹿だ! 捕まえて丸焼きにすると美味いんだぜ、ジュルリ……」



「ああ、狼姫! ど、どこへ!」



 むぅ、狼姫が鹿を追いかけて森の奥へ――まあ、別にいいんだけどね。女帝のアルカナカードがあれば、アイツがどこにいても召喚することができるっぽいしね。



「おまたせ~! おっと、名乗っていなかったね。僕の名前はヘルメス。沙希、君が持っている魔道書の死霊秘法に封印されていた神の一柱だ。ああ、この人形に宿らせてもらっている」



 妖精さんがひらりと悠太の頭の天辺に舞い降りてくる。んで、ヘルメスと名乗る……ん、ギリシャ神話に出てくる神様?



「死霊秘法に封印されていた神の一柱!? ん~その前にヘルメスってギリシャ神話の神様かしら?」



「ご名答! そうなるかなぁ――とは言っても、僕はヘルメスの本体から分離した存在――分霊なんだけどね」



 要するに、妖精さんはヘルメス神から分離した力の一部みたいなものかな? そういえば、日本各地でには同じ神様を祀る神社が数多あるわけだ。その場合、何々神の御神体が鎮座する総本山的な神社から分けてもらった神の一部を祀っていることになるわけだから、こちらも分霊と言っても間違いないと思う。



「ねえ、妖精さん――いや、ヘルメスさん。私達をここへ呼び出した理由を語ってほしいわね」



 妖精さんことヘルメス神の分霊さんに対し、私は呼び出した理由を尋ねる。



「そうだねぇ、ありていに言うとしよう。その本――死霊秘法を手にしてしまった以上、沙希、それに茜、君達の周囲で怪事件が多発する!」



「「な、なんだってー!」」



「そして、それを解決するのが、最凶の魔道書、死霊秘法が持ち主と選んだ、君達の使命!」



「「…………」」



「んで、あの本の先代の持ち主で、僕の大切な友人、天宮弓子からの遺言に従って、僕がサポート役を務めるよ。大船に乗った気分でいてくれたまえ♪」


「う~ん……」



 ちょ、なんだか面倒なことを押しつけてきたわね、ヘルメスは――てか、怪事件が多発するってどういうことよ! ああ、嫌な妄想が頭に中に浮かびまくるっ!



「ちなみに、君達の予め渡しておいたアルカナカード、それに狼姫は〝奴ら〟と戦うための牙だ!」



「ちょ、〝奴ら〟ってなんなのよ!」



 ひょっとして敵が現れるってこと!? うえぇ~なんなのよ、まったく! ととと、とにかく、敵が現れる前に、色々と供えておかなくちゃいけない気がするわ!

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