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序章
その少女に初めて出会ったのは、六月の雨の日だった。
ぐったりとした空気の重さに、私は何となく気だるさを感じていた。
「先生は時間というものはどんなものだと思いますか?」
少女は初めての診察でその様な質問をした。
「う〜ん、そうだな、真っ直ぐにすすんでいくもの、戻ることができないもの、かな?」
確か私はそう答えたと思う。
「戻ることができないもの・・・ですか」
「いや、言葉のあやだけどね。過去に戻ることはできないから」
「そうですか」
僕の答えを聞いた少女はどこか寂しげであった。
早く真実に気付くべきであったのだ。
しかし、気が付いたところで、いったい私に何ができたというのか。
あの少女はこれで救われたのであろうか・・・
『紫陽花 序章』をお読み頂き、ありがとうございます。
十六章+序章&終章、合計十八回連載となります。
お付き合いよろしくお願い致します。 05.11.2 立花友香