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戦果

 地下七階での戦闘を終え、俺達は『帰還のスクロール』を使用した。その効果により、俺達三人は冒険者ギルドの地下倉庫へと転移された。


 目の前には『アイテムボックス』で回収した大魔石が積み重なっている。更にはレアドロップの『殺人の手斧(キラー・アックス)』が三本。これも高額で取引される品である。


 なお、これまでペローナが回収した中魔石や、その他の武具は見当たらない。これはギルド職員が回収済みだからだ。後で纏めて清算され、金額は口座に振り込まれる事となる。


 後は今回の大魔石を持ち帰って魔晶石に加工する。それと、『殺人の手斧(キラー・アックス)』はギルドに任せて王都で競売に掛ければ良いだろう。


 そう、上々の結果と言う奴である。俺とペローナの二人で狩れる、現状ではと言う意味であるが。


「よう、グリム! 流石じゃねぇか!」


 倉庫の扉が開き、中に入って来る人物が居た。ギルドマスターのアルベルトである。


 彼は満面の笑みを浮かべ、俺達へと近付いて来る。そして、『殺人の手斧(キラー・アックス)』を一本手に取り、ニヤリと笑って俺に問う。


「いつも通り、競売で良いんだろ? 王都の冒険者達が良い値で買ってくれそうだな!」


「ああ、任せる。俺が必要なのは大魔石だけだからな」


 ダンジョン産の武具は、いずれも高い魔力が込められている。武具でありながら、大魔石と同等の魔力を保有しているのだ。


 つまり、それらの武具は魔物に対して、致命的なダメージを与える事が出来る。冒険者なら喉から手が出る程に欲しい装備と言う事なのだ。


 けれど、俺にとっては必要が無い。大魔石を魔晶石化し、それで武具を作る方が高威力の武器を作れるからだ。


 むしろ、ペローナの魔導銃はそうしているし、ゆくゆくはアリスの短剣もそうするつもりだ。そうでなければ、深層の魔物を一撃で屠る事は出来ないからな。


 アルベルトはホクホク顔で斧を三本回収する。そんな彼に向って、俺は眉をひそめて問い掛けた。


「貴様、ギルドマスターだろう。わざわざ、俺達の戻りを待っていたのか?」


「ん? 大魔石が転移されたら、報告する様に部下に指示出しといたんだ。俺は丁度来たばかりだぜ?」


 ニッ笑うアルベルト。しかし、それは職員をこの場に張り付かせていたと言う事だろう。


 命じられた職員はご愁傷様だな。ずっと倉庫を見張るだけの仕事をさせられていたのだから。


 俺はやれやれと首を振る。そして、アルベルトへをギロリと睨む。


「そこまでする必要があったか? まさか、俺達の心配をしていたんじゃなかろうな?」


 俺はダンジョン攻略で致命的なミスをした事は無い。そんな命取りになるミスを犯すはずが無いのだ。


 誰よりも入念に準備を行い、必勝の策で攻略に挑む。そんな俺のスタイルを知ってなお、アルベルトは俺を心配したと言うのか?


 ただ、アルベルトはカラカラと笑って首を振る。そして、気安い口調で口を開く。


「いやいや、お前さんの心配はしてねぇよ。ただ、ダンジョンの様子はどうだった? 何か変化は無かったか?」


「――ああ、なるほど。そういう意味だと、レッドキャップは思いの他増えていた」


 前回のダンジョン攻略から、まだ一ヶ月と時間は経っていない。けれど、明らかに奴等の数は増えていた。


 俺達はそれなりに小まめにダンジョンを攻略していたので、レッドキャップがここまで増える事は無かった。あそこまでの数は、俺達が初めて地下七階を攻略して以来だろう。


「となると、地下八階以降も増えてるって事か……」


「まあ、そうだろうな。しばらく休んだら、また地下七階へ潜る。それで影響は多少なりとも抑えられるだろう」


 俺の答えにアルベルトは顔を顰める。ただ、仕方がないと諦め、俺へと苦笑いを向けた。


 と言うのも、ダンジョンは魔物を狩らないと魔力が増す。ダンジョンの脅威度が上がり続けるのだ。


 それを抑えるには出来るだけ深い階層の魔物を狩る必要がある。浅い階層の魔物では、微々たる魔力しか魔石として持ち帰れないからだ。


 まあ、最も良いのはダンジョンを完全攻略する事である。最深部のダンジョンコアを入手すれば、ダンジョンの成長は止まるらしいからな。


 魔石の生産量は落ちるが、それでも機能が停止する訳では無い。安定した運営を考えるなら、ダンジョンは攻略しておいた方が良いとされている。


「……ちなみに、攻略は出来そうなのか?」


「いずれは出来るさ。いつになるかは不明だがな」


 アルベルトの問いに、俺は素っ気なく答える。アルベルトはその答えに、微かに安堵の笑みを浮かべた。


 正直に言えば、再結成したパーティー『グリモワール』の方が、かつての『黄金宝珠』よりポテンシャルが高い。


 アリスが理想の形に成長すれば、ダンジョン攻略の可能性はグッと高まる。鍛え切ったとは言え、只の人間のハインリヒでは実力が不足していたからだ。


 後はアリスがどれだけ早く成長するか次第。俺はアリスに視線を向ける。するとアリスは戸惑った表情を浮かべた後に、ニコリと俺へと笑みを返した。

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