表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/127

パーティー登録

 アリスの魔法を一通り確認した。使える魔法は『加速』と『風の防壁』の二つのみだった。


 どちらも基礎的な初級魔法なのだが、問題なのはその練度だ。何故かこの二つだけは、俺と同程度の練度で使う事が出来たのだ。


 初級魔法とは言え、呼吸するが如く扱えるのは大きい。今のアリスの戦闘スタイルなら、これだけでダンジョン中層を突破出来る戦力と成り得る。


 アリスの実力が深層に通じるかは微妙なライン。けれど、深層七階であれば、俺とペローナの二人でも対応は可能である。


 その為、俺は深層七階へ向かう事を決めた。アリスに深層を見せるのと、大魔石を多少なりとも回収しておく為である。


「――って、グリムよ。深層に向かうのはもっと先って言って無かったか?」


「アリスが思った以上に優秀だったからだ。お前としても望む展開だろう?」


 俺は冒険者ギルドの応接室で、ギルドマスターのアルベルトと向かい合う。呆れた表情の彼に、俺は鼻を鳴らして言い返した。


 なお、俺達はソファーに座り、俺の左右にはアリスとペローナも座っている。俺達を一瞥したアルベルトは、大きくため息を吐いて俺に問い掛ける。


「もう深層に行けるのかよ……。なら、嬢ちゃんはB級にしとくべきか?」


「ああ、そうだな。この街のB級では、誰もアリスには勝てんだろうな」


 俺の言葉にアルベルトは目を剥く。しかし、隣のペローナが平然としているので、それを見て彼も納得したらしい。


 俺はブラフを使う事もあるが、ペローナはそういう駆け引きが出来ない奴だ。その彼女が何の反応も示さないのは、そういう事だと理解したのだろう。


「この街でA級はお前とペローナだけ。つまり、実質的にお前らがこの街のトップスリーって訳だな?」


「その認識で間違いはない。馬鹿共には良く言い聞かせておけ。多くの怪我人を出したくなければな」


 アリスの実力を疑う者は出るだろう。急速な昇級を妬む者だって現れる。そういう馬鹿共は、得てして愚かな行動を取るものだ。


 今のアリスにはそんな愚か者を退けるだけの力がある。そして、策を弄して搦手で来ようとも、俺やペローナがアリスを守る。


 俺もペローナもそんな愚者に手加減などしない。例え相手が貴族や王族だろうと、手を出したなら相応の報いを与えるつもりだ。


 ただ、俺達も一々相手をしたい訳では無い。アルベルトが上手く喧伝してくれれば、それだけ俺達の手を煩わさずに済むと言う話である。


「わかった、そっちは根回ししとく。で、パーティー登録するのか?」


「ああ、そうだな。早ければ明日にでもダンジョンに潜りたいからな」


 パーティー登録にはいくつかの手続きが必要となる。しかし、その辺りの面倒事は、アルベルトが上手く処理してくれるだろう。


 何せこいつも俺達に、深層攻略を任せたいのだ。魔物の間引きも必要だし、何より現状だと大魔石が枯渇しかねない。


 ダンジョンの出土品がこの街の経済を動かしているのだ。ギルドだけでなく、領主だって俺達の動向を気にしているだろうからな。


 そして、中層以降を攻略するならパーティー登録は必須と言える。その理由については、後でアリスに説明しておかねばな。


「んで、パーティー名は決めているのか?」


「ああ、『グリモワール』で登録してくれ」


 グリモワールとは魔法全般の書物。つまり、魔法使いが魔法を学ぶ基本となる物である。


 魔法使いは数が少なく、俺の様に効率的に教えられる者は限られる。故に多くの魔法使いは、グリモワールによって魔法を学ぶのだ。


 俺もアリスもペローナも、全てが魔法使いである。ただ、二人は俺が教えたので、グリモワールで学んだ訳では無い。


 しかし、俺達こそが生きたグリモワール。魔法使いとはかく在るべきと言う、生きた手本となる存在なのだ。


 ただ、アルベルトはそんな理由には興味が無いらしい。了解と手を振ると、それで話を終わらせてしまった。


「それじゃあ、今日中に処理を終わらせておくよ。スクロールが必要なら、また明日に来てくれ」


「ああ、わかった。こちらも今日は準備がある。何もなければ明日にでも、また顔を出すつもりだ」


 俺の言葉にアルベルトが頷く。それで話は終わりで問題無いらしい。俺は席を立って扉へと向かう。


 アルベルトは決して賢くは無い。けれど、こういう無駄なやり取りの無い所は好感が持てる。ある意味で、冒険者らしいギルドマスターと言えるだろう。


 俺は目的を達成したので部屋を出る。そのすぐ後ろを、アリスとペローナが続く。


 こうして、俺達のパーティー登録は完了した。今日から俺達は『グリモワール』として活動を開始する事となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ