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冒険者ギルド

 俺はアリスとグレーテルを伴い、冒険者ギルドへとやって来た。アリスへこの場所を説明すると同時に、アリスの冒険者登録を済ませる為である。


 俺達がカウンターへ向かうと、顔なじみの女性職員が目を丸くする。そして、俺に対して問い掛けて来た。


「グリム様、如何なさいましたか? ご依頼の斡旋をご希望でしょうか?」


「今日は仕事を探しに来た訳ではない。アリスを冒険者として登録する為だ」


 俺がアリスに視線を向けると、女性職員が怪訝そうな顔をする。そして、俺へと探る様な眼差しを向ける。


「獣人奴隷でも問題はありませんが、その子を冒険者にですか? 冒険者として活動するには、些か小さ過ぎる気がするのですが……」


「これでもアリスは十三歳だ。年齢制限には引っ掛からないはずだが?」


 冒険者ギルドへの登録は、年齢で言えば十三歳から。種族や身分を問わずに誰でも登録できる。


 勿論、十三歳程の低年齢の物は、孤児等の食うに困る者達がメインだ。どぶ攫い等の危険が無い仕事を受ける者が殆どとなる。


 女性職員は俺の性格もある程度は把握しており、アリスの目的が雑用だとは思っていないのだろう。だからこそ、この小ささに戸惑っているのも理解はしている。


「はい、規則としては問題ありません。しかし、故意に仲間を危険に晒せば……」


「アリスを使い潰す気は無い。俺は彼女を一から育て、一流の冒険者にするつもりだ」


 俺の言葉に女性職員は渋々納得する。彼女の権限では、これ以上何も言えないだろうしな。


 そして、俺は女性職員といくつかやり取りをし、アリスの登録手続きを進める。アリスとグレーテルはその様子を、静かに見守り続けていた。


「――はい、これで以上です。それでは身分証を用意しますので、しばらくお待ちください」


「ああ、酒場で休ませて貰う。用意が出来たら声を掛けてくれ」


 職員へ声を掛けると、俺はアリスとグレーテルと共に酒場へと移動する。ここは冒険者の打ち上げや相談、待ち合わせなどで利用されるスペースとなっている。


 俺は席に着くと果実水を三つ注文する。そして、その到着に合わせてアリスが問いかけて来た。


「あの、グリム様。これで私も冒険者なのでしょうか?」


「そうなるな。冒険者として活動する事が可能となった」


 俺が頷くとアリスは目を丸くする。そして、オドオドした態度で俺を見上げる。


「冒険者になった事で、何がどう変わるのでしょうか?」


「ギルドで依頼の斡旋が受けれる。とはいえ、今のアリスはEランクだ。町の清掃などを請け負う必要は無いだろう」


 ギルドへの一定の貢献でランクが上がる。そして、高ランクの依頼を受けられるようになる。


 しかし、多くの冒険者は依頼の斡旋でポイントを稼ぐのではない。それよりも確実にポイントを稼げる手段があるからだ。


「基本的に冒険者の仕事はダンジョン攻略だな。魔物を倒して魔石を持ち帰る。それらの査定額に応じて評価され、ランクも自然に上がっていく」


「冒険者のお仕事は、魔石を集める事なんですか?」


「半分は正しく、半分は誤りだと言える。本来の冒険者の仕事は魔石集めでは無いからだ」


 俺の回答にアリスが首を傾げる。隣でグレーテルも真似して首を傾げている。


 グレーテルのは悪ふざけだな。そちらは無視して、俺はアリスへと説明を続ける。


「冒険者の本来の仕事は、未開拓地での新ダンジョン発見。そして、新ダンジョンの踏破にある。踏破済みダンジョンの攻略は、その為の訓練や資金集めの意味合いが濃い」


「新ダンジョンの発見に踏破……」


 アリスが驚きに目を見開いている。グレーテルはその隣で、なるほどと頷いていた。


 これらを実践する冒険者は数が少なく、一般人が目にする機会が限られているからな。


「ダンジョンは資源の宝庫だ。見つかればその場所に街が出来る。その発見を期待され、国から支援を受けているのが冒険者ギルドと言う組織だ」


「冒険者ギルドって、凄い所なんですね……」


 アリスがキラキラと目を輝かせている。表向きの話だけを聞けば、普通はそういう反応なのだろうな。


 しかし、グレーテルは隣で苦笑いをしている。冒険者の実態を少しは知っているからだろう。


 何せ凄腕の冒険者は貴族が囲い込む。自らの領地内で活動して貰わねば困るからである。


 それ故に、新ダンジョンを探す冒険者は皆無に等しい。ホームのダンジョンを攻略し続ける方が、安全で豊かな暮らしが約束されているのだから。


「アリスも当面はこの街のダンジョンで訓練だ。将来的には他のダンジョンへ挑むからもしれんが」


「はい、わかりました! 私はグリム様の指示に従うだけです!」


 今の所は俺も独自の研究があり、この街のダンジョン以外に興味は無い。当面は他の街への移動も無いだろう。


 しかし、今の研究次第ではそれも変わる可能性がある。新ダンジョンを目指す事も、可能性としては無い訳では無い。


「グリム様~! 準備が整いました~!」


 女性職員がカウンターから俺を呼んでいた。俺は立ち上がると、カウンターへと向かう。


 そして、ギルドカードを受け取るり、アリスへと手渡した。アリスは嬉しそうに、買ったばかりのポーチにカードをしまった。

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