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新装備

 グレーテルの用意した昼食を食べ、俺達は揃って庭へと出る。それ程の広さでは無いが、アリスのリハビリ程度には十分だろう。


 俺は昼食の準備中作った魔道具を、アリスにそっと手渡した。


「アリス用に用意した。今から使い方を説明する」


「えっ……?! 用意したって、流石に早過ぎ無い!」


 俺の言葉にグレーテルが反応する。アリスの持つ魔道具と、俺とを慌ただしく交互に見ている。


「素材が手元に揃っていた。こんな物は一時間で作れる」


「うっわぁ……。世の錬金術師が聞いたら怒るやつだ……」


 グレーテルは疲れた表情で息を吐く。だが、その指摘は間違いでは無い。実際に俺は錬金術師ギルドで、そう言って怒られた事があるからな。


 まあ、そんな事はどうでも良い。俺は手渡した魔道具について説明を始める。


「用意した魔道具は三つ。短剣、ブーツ、ブレスレットだ。まずは短剣から説明しよう」


 俺はアリスの手の中から、二本の短剣を手に取る。一つは柄に赤い魔晶石。もう一つには黄色い魔晶石が付いている。


「刀身自体は硬く、折れにくくなる工夫をしている。しかし、切れ味自体は普通の短剣だ。重要となるのはこの魔晶石だな」


「真っ赤で綺麗な宝石です……」


 アリスはキラキラとした目で宝石を眺めている。そんな彼女を、グレーテルは苦笑交じりに見つめている。


「この短剣は魔法剣だ。仕込んだ魔法は二つで、一つ目はこうだ。――ファイア」


「「――っ……?!」」


 俺の定めたキーワードにより魔法が発動する。そして、その刀身に炎が宿り、高温により空気が揺らめく。


「そして、この状態で二つ目がこうだ。――アロー」


 俺は刀身を地面に向けている。そして、二つ目のキーワードにより、刀身に宿った炎が飛び出す。直撃した地面はジュワリと焦げた。


「炎を宿した状態で斬る事も出来るが、メインは二つ目の炎の矢だ。人を殺せる程の威力は無いが、中距離での牽制としては十分使えるだろう」


「「…………」」


 二人は焦げた地面から視線を外す。そして、恐ろしそうな眼差しで短剣を見つめる。


 この程度の魔道具は比較的普通の代物だ。しかし、始めて見る二人には、恐ろしく見えてしまうのだろう。


「もう一つの短剣にも、二つの魔法を仕込んでいる。一つ目はこうだ。――ショック」


 キーワードに反応し、刀身がパチパチと帯電する。アリスとグレーテルは驚きで目を見開く。


「この状態で相手を斬れば、人間サイズならしばらく麻痺で動けなくなる。そして、もう一つの効果はこれだ。――ウェーブ」


 俺は再び発動のキーワードを口にする。勿論、刀身は地面に向けた状態である。


 そして、帯電した電気がブワリと放電される。投網の様に広がった電気は、すぐに拡散して消えてしまう。


「浴びせた相手の動きを、一瞬だけ止める事が出来る。足止めとして重宝するだろうから、上手く使いこなすことだ」


「「…………」」


 やはり、二人は短剣を恐ろし気に見つめている。俺はそれを無視し、次の説明へと移る。


「二つ目はブーツ。これには三つの効果を宿してあるが、キーワードは必要無い。常時発動するタイプの弱い魔法が込めてある」


 俺は短剣をアリスに手渡し、代わりにブーツを手に取った。そして、足の甲に着いた、極小の魔晶石を指さす。


 魔晶石はサイズに応じて使える魔力量が変わる。これは三つ付いているが、それぞれは弱い効果しか発揮出来ないものだ。


「一つ目の効果は足の筋力アップ。精々が二割アップと言う所だが、アリスとは相性が良いはずだ」


 アリスは兎人だけあり、瞬発力に優れた身体構造をしている。その種族特性を強化する事が出来るだろう。


「二つ目の効果は重量軽減。足の負担を二割程軽くする効果がある。これでより俊敏に動けるだろう」


 重い荷物にも効果が及ぶので、それなりに便利なはずだ。長く歩いても疲れにくいので重宝するだろう。


「最後は少し特殊で加速だ。つま先に一定以上の負荷が掛かると、体を前へ押し出す効果が発動する」


 これは風の基礎魔法。アリスの俊敏さを更に伸ばす事が出来る。使いこなせばかなり便利だろう。


「特にこのブーツはリハビリ期間で使いこなせる様になれ。アリスの能力を最大限に発揮するものだ」


「は、はい……。わかりました……」


 先程と違ってホッとした表情のアリス。グレーテルも安堵の笑みを浮かべている。


 まあ、これは試さねば効果が実感出来ないだろう。ここではこれ以上を語る必要もあるまい。


「そして、最後がブレスレット。実につまらん効果ではあるが、腕力を強化するものだ。成人男性を持ち上げる位は出来るだろう。腕に嵌めてパワーと言えば良い」


「「…………」」


 俺が手も触れずに告げると、二人は複雑そうな表情を浮かべる。そして、顔を見合わせて唸り出す。


「アリスちゃんの護身用って、最後のブレスレットだけで良くない?」


「そうですよね……。それだけの力があれば、大抵何とかなるかと……」


 愚かな発言をする二人に、俺は大きく息を吐く。腕力で解決出来る場面など、そう多くは無いと言うのにな……。


 むしろ、これはダンジョンの探索用に用意した物だ。非力なアリスの弱点を、少しでも補う為に用意したに過ぎない。


 ただ、それがわかるのは、まだまだ先なのだろう。俺はやれやれと無言で首を振った。

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