表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/181

方針変更

 アリスとグレーテルが帰宅したが、話があると俺はリビングへと呼ばれた。


 俺達三人がテーブルに着くと、グレーデルは一枚の金貨をそっとテーブルに置く。そして、俺へと説明を開始した。


「――という事があった訳です」


「度し難い程の愚か者だな……」


 要約すれば、アリスが酔っ払いに絡まれた。メイド服を着るだけでは、思った程の効果が無かったと言う内容である。


 時にはその様な愚かな者が現れる。そう考えてメイド服へ魔法を付与したが、それが早速役だったと言うだけの話だ。


 とはいえ、これで愚か者が現れる事は証明された。ならば、より強固な対策を取る必要があるだろう。そう考える俺に対し、アリスが涙目で問い掛けて来た。


「グリム様……。埋めちゃうんですか……?」


「埋める? 俺が何を埋めると言うのだ?」


 不安げなアリスの様子に俺は首を傾げる。すると、グレーデルが気まずそうに口を開いた。


「あ~、絡んで来た酔っ払いのことかな?」


「馬鹿を言うな。何故、俺がそんな手間を掛ける必要がある」


 探せば見つかるだろうが、そんな手間を掛ける気は無い。相手にするだけ時間の無駄である。


 それに、そいつ等を罰した所で愚か者は再び現れる。それでは根本解決にはならないだろう。


「アリスの強化を優先するべきか。Cランク冒険者程度は、自力で対処出来る様にならねばな」


「えっ……? 私が自力で、ですか……?」


 アリスとグレーテルは目を見開く。そして、半信半疑と言う眼差しで俺を見つめる。


 俺は二人の態度に溜息を吐く。しかし、アリスは自分の無知を理解している事を思い出し、次に発する言葉を変える事にした。


「アリスはCランク冒険者がどういう存在か知っているか?」


「いえ、わかりません……」


 シュンと肩を落として答えるアリス。自らの無知を嘆く姿には好感が持てる。


「冒険者にはA~Eまでのランクがある。Eは最底辺だが冒険者と言うよりも雑用係。この仕事を請け負う者は孤児や浮浪者と言った、他では働けない者達だな」


 俺の言葉にアリスがコクコクと頷く。真剣な眼差しで、俺の言葉を理解しようとしていた。


「Dランクは駆け出し。Cランクは一人前。Bランクはベテラン。Aランクは最高位の冒険者と考えれば良い。ここまでは理解したか?」


「はい! 理解出来ました!」


 アリスは嬉しそうに笑みを零す。また一つ賢くなれた事に喜びを感じているのだろう。


「そして、Cランク以上の冒険者に求められる素質。それは大きな体でも、屈強な筋肉でも無い。魔法もしくは魔道具を巧みに扱うセンスとなっている」


「大きな体でも、屈強な筋肉でも無い……」


 アリスはポカンと口を開く。だがそれも仕方が無い。これは素人が良く間違う所だからな。


「少し考えればわかる事だ。人間の体は決して強靭では無い。どんなに鍛えた所で、オーガやドラゴン等の圧倒的質量を持つ生物を、剣や槍で殺せる訳がないのだ」


 無論、駆け出しの頃は話が違う。狼程度の大きさなら、知恵と工夫と鍛えた筋力で、何とか出来る場合がある。それとて、命懸けの戦闘になるだろうが。


「人間の弱さを補うのが武器や防具。そして、人間の限界を超える手段が魔法だ。魔法の武具で身を固め、巧みに操る者だけが一流の冒険者となれるのだ」


「私の着ている服みたいな……?」


 アリスはメイド服に触れる。付与したカウンターマジックは、一定以上のダメージを受けると発動する仕様となっている。


 これも上位の冒険者には一般的な魔法である。使える魔法使いはBランク以上であり、魔道具として持つ者はAランクに限られるみたいだがな。


「なので、アリスには魔道具を用意してやる。しばらくはリハビリも兼ねて、与えた魔道具の扱いに慣れるが良い」


「私の為に、ご用意して頂けるのですか……?」


「何度も言わせるな。アリスは俺の物だ。お前を最善の状態とするのは俺の務めだ」


 俺の言葉にアリスが頷く。目の端に涙を浮かべるが、今回はニコニコと微笑んでいる。


 ただ、何故だかグレーテルが俺を凝視していた。信じられないものを見る様に、先程からずっと固まっている。


「何だ、グレーテル? 言いたい事があれば言え」


「いや、アリスちゃんには、随分と親切だなって思って……」


 グレーテルの言葉にアリスが目をパチパチさせている。どういう意味かと、不思議そうに首を傾げていた。


 俺は大きく息を吐く。そして、愚かなグレーテルへと説明を行う。


「愚かだな、グレーテル。アリスは俺の物だ。彼女の成長は俺の為になる。俺が親切心で動くとでも思ったか?」


「うん、それは、その通りだね……。その通りなんだけどさ……」


 グレーテルは視線をアリスに向ける。そして、その強張った表情を緩め、笑みを浮かべてこう言った。


「グリムさんが選んだのが、アリスちゃんで本当に良かったなって思ったんだ」


「ああ、それはその通りだな。アリスは悪くない拾い物だった」


 俺の言葉に反発する事無く、素直に学ぶ姿が好ましい。アリスであれば俺の望む姿へと成長させてやれるだろう。


 俺とグレーテルはアリスを見つめる。アリスは俺達の視線に顔を赤らめるが、俺達へと嬉しそうに笑みを返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ