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不思議な女の子(グレーテル視点)

 グリムさんが新しい女の子を連れ帰ったのには驚いた。しかも、それが有名な三獣士の一人との事である。


 どうなる事かと思ったけれど、ハーシーちゃんは良い子だった。とても聞き分けが良く、私の言う事を何でも聞いてくれた。


 私達、女子一同が玄関に集まる。そして、私はハーシーちゃんへと声を掛けた。


「それじゃあ出かけるよ~? 準備は良いかな~?」


「は~い、ママ! ハーシーは準備出来てるよ~!」


 そして、何故だか私はママ認定されてしまった。年齢的には同い年だと思うんだけどね?


 いや、むしろ彼女は高身長だし、胸がギガントサイズだ。中身が中身なら、私が妹扱いでもおかしくない見た目なのである。


 けれど、手を上げてニコニコ笑うハーシーちゃんに、私は思わず笑みを零す。こんな可愛い子が娘なら、別に見た目なんて些細な事だと思えてくるね。


 そして、さあ出かけるぞと思った所で、ハーシーちゃんがあっと声を漏らした。


「どうしたの、ハーシーちゃん?」


「ママとアリスちゃん……。同じポーチだ……」


 ハーシーちゃんがじっと見つめているのは、私が肩から下げたポーチである。以前にアリスちゃんと一緒に、色違いでお揃いのデザインを買った物だ。


 私はブラウン系の服が多いのでポーチの色もブラウン。アリスちゃんはメイド服に映える赤色のポーチ。


 ハーシーちゃんの視線は、私達のポーチを羨ましそうに見つめていた。私は笑みを零してハーシーちゃんへと声を掛ける。


「それじゃあ、ハーシーちゃんもポーチ買っちゃう? 私達とお揃いになっちゃう?」


「うん、ハーシーも買う! 同じポーチでお揃いが良い!」


 私の提案にハーシーちゃんが笑顔を浮かべる。本当に嬉しそうにニコニコと笑っていた。


 その無邪気な笑みに、私は心が満たされる。こんな可愛い子の相手してると、本当に自分の子供が欲しくなっちゃうね……。


 いやまあ、相手がいないんだけどさ? グリムさんは私に、そういう感情抱いてないしね……。


 私は内心で一人で勝手に落ち込んでいると、ハーシーちゃんのくるっと振り返る。そして、少し離れて立つペローナさんへと問い掛けた。


「ペローナお姉ちゃんも、お揃いのポーチ買う?」


 問われたペローナさんは動揺で視線を揺らす。そして、そっと腰のポーチに手を伸ばした。


 それは腰のベルトに装着するタイプ。左右には拳銃のホルスターがあるので、ポーチはお尻の側に装着してある物だった。


「い、いや、私は止めておく。これはグリムから貰った物だから……」


「そっか! パパから貰った物なんだ! それなら大切な物だね!」


 ハーシーちゃんの言葉に、ペローナさんは小さく頷く。その表情からホッとしている様子がわかる。


 ペローナさんもグリムさんを大切に思っているからね。愛用のポーチから買い替えたくはなかったんだろう。


 ただ、ペローナさんは獣人で、グリムさんは人間だ。それをわかっているから、ペローナさんはグリムさんへ恋愛感情は抱いていないみたいなんだけど……。


 その辺りは少しばかりモヤモヤする。アリスちゃん推しの私としては、種族差なんて関係ないと言いたい所だ。


 けれど、アリスちゃんを推しているから、ペローナさんの応援も出来ない。下手にペローナさんを突いても、今の関係を壊す未来しか見えないしね……。


 私が内心でため息をつくと、ハーシーちゃんの視線がアリスちゃんに向く。そして、ニコリと笑って手を差し出した。


「それじゃあ、行こうか。アリスちゃん♪」


「はい、ハーシーさん! 行きましょう!」


 アリスちゃんは笑顔で手を握る。ハーシーちゃんは嬉しそうにニコニコと笑う。


 そんな微笑ましい光景に、私も自然と笑顔になる。すると、ハーシーちゃんは私に向かって手を伸ばして来た。


「ママも一緒! 手を繋ごうよ?」


「うん、そうだね。そうしよう!」


 私はハーシーちゃんの手を握る。それは小さな子供の手では無いけど、とても暖かな手のひらだった。


 血の繋がりも無いし、種族だってバラバラだ。それでも彼女を中心にして、私達は家族みたいに思えてしまう。


 この不思議な感情に戸惑っていると、ハーシーちゃんは再びあっと声を漏らした。


「ペローナお姉ちゃんと手を繋げない……」


「気にするな。私はお姉ちゃんだからな」


 ペローナさんは苦笑を浮かべてハーシーさんへと告げる。柄にもないと思ってそうだけど、自分でお姉ちゃんと言う辺り、そのポジションは満更でも無いのだろう。


 私がくすりと笑うと、ペローナさんは気まずそうに視線を逸らす。余りからかって、機嫌を損ねられても困るからね。私は見て見ぬフリをして、ハーシーちゃんの手を引いた。


「じゃあ、行くよ~! しっかり付いて来てね~!」


「は~い! ハーシー、しっかり付いて行くよ~!」


 私は引率役として先頭を歩く。その手を引かれながら、ハーシーちゃんもニコニコと付いて来る。


 アリスちゃんとペローナさんも穏やかな笑みだ。私はこんな幸せな時間が、ずっと続くと良いな~と考えていた。

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