エピローグ サクサク派の勝利!メロンパン革命、完結
翌日、おじいちゃんはまた朝の散歩の途中、いつものように「ベーカリー拓哉」へ立ち寄った。
「あれ?今日は何か様子が違うな」
店の前に張り紙がしてある。
『限定・サクサクメロンパン復活!』
「ほほう、サクサクメロンパンが復活したか!拓哉店長はちゃんと約束を守ったんじゃな」おじいちゃんは目を輝かせ、店の扉を押し開けた。
「おはよう、拓哉店長!」
店内には、店長が忙しく動きながら、少し恥ずかしそうに頭を下げた。
「おはようございます、おじいちゃん。実は、おじいちゃんの言うように、サクサク派のお客様も多かったみたいですね」
「本当にか!?サクサク派の声が届いたか!」おじいちゃんは喜びのあまり、胸を張った。
拓哉店長はにっこりと笑いながら言った。
「そうですね、やっぱりあのサクサク感が恋しいっていう声も多かったんです。もちろん、しっとり系も引き続き出してますけど、両方楽しんでいただけるようにしました」
「これぞメロンパンの勝利じゃ!」おじいちゃんは胸を張り、壮大に宣言した。
杏子はその様子を見て、少し呆れた顔をした。
「おじいちゃん、それただの人気商品の復活でしょ?」
「いや、ぱみゅ子!これは伝統の勝利の証だ!革命に次ぐ革命、つまり、元に戻るんじゃ」おじいちゃんは断固として言い張る。
杏子は目を閉じて深くため息をつく。
「ただの売り上げ対策でしょ。それに、世界反メロンパン連盟の陰謀ってどうなったの?」
「うむ、確かにわしの推理は見事じゃったな」おじいちゃんは自分で自分を褒めながら、都合の悪いことは無視して、満足げな表情を浮かべた。
「だからその連盟は存在しないってば!」杏子はもう完全に諦め顔だ。
おじいちゃんはドヤ顔を崩さず、力強く言った。
「世界反メロンパン連盟の陰謀を阻止したのは、間違いなくワシじゃ!」
「だから、そんな連盟ないってば!」杏子はもう諦め気味に突っ込んだ。
おじいちゃんは最後に一度、メロンパンを手に取り、にっこりと笑う。
「サクサク派の勝利じゃ。やはり、メロンパンはサクサクが一番じゃ!」
杏子はそんなおじいちゃんを見ながら、ふっと微笑んだ。
「両方あるんだけどね。まあ、なんだかんだ言って、好きなものが食べられるならそれでいいか」
おじいちゃんと杏子は、再び並んでメロンパンを食べながら、穏やかな時間を過ごした。
そして、今日も商店街の風景は、変わらず静かに流れていくのだった——。
(完)