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…LIFE:WAR…  作者: OGRE
3/4

接触と崩壊の始まり…

生命戦争…LIFE:WAR…開戦もはや引くことはできない国連の中枢に潜む影は世界に大きな罠を仕掛けた…

『MINDSの動向を見て来たが…おかしい…何故…あんな能力のヒューマは見たことないぞ…調べなければ…しかしほとんどの隊が殲滅されてしまった…』

『ならば…いっその事、小規模な戦闘作戦を起して敵の戦力を探っては?』

『うむ…お前が指揮をとれ…ライザス…』

『御意』

 総一郎の所にも風間から情報が流れて来ている…皇太にも任務が多く言い渡され多くは天那と二人でこなした…

「GPが覚醒しても本質的には変わらないの?」

「あぁ…俺らもDNAが少々変わっただけで普通の人間とあまり違わないそうだ…思考能力と生殖能力は変わらない…細かく言えば俺達は肉体…つまり運動能力が少し高くなった…天那や紫神はIQ…つまり頭が良くなったわけだ…」

「フーン…でもそれもありがたい事なのかもね…学校にも行けるし普通に外歩けるし…」

「そういうことだ…」

 この日は大きなトラブルが発生する…最初からその情報を得ている皇太の戦闘部隊は先に登校しているレイと光が作戦を開始していた…敵は秘密を守るためなら村一つ消すような組織だ…生徒が脱出できるように既に避難経路を確保している…そして紫神が先に一人で戦闘を始めその後皇太と誠司が加わる寸法だ…

「光…作戦開始だ…外で戦闘開始のゴングが鳴ったぜ…」

「わかっている…あの黒姫のやることだ学校を倒壊させるかもしれん…早急に避難させねば…」

「二人とも…紫神ちゃんが無茶苦茶してる!早く!」

 紫神のGPもセイントだが天那とは正反対で体に纏い体を活性させて戦うタイプだ…一発地面を殴ればクレーター…校舎に敵をぶつければ地震のような揺れ…サイボーグなら木端微塵…速度も音速を超える…容姿が高校生ぐらいの年齢に見えるのはおまけ…副作用が大きくGPの使用時間の二倍の時間は体が縮む…と…こんな感じだ…

「…皇…あの攻撃はホントに紫神ちゃん?」

「あぁ…アイツのGP…デスプリンセス…の第一形態…天那!掴まれ!早く行かないと学校の方が持たない…裏側から回る!」

「ちょっ!」

 生徒はなんとか全員避難させられた…そこに誠司がマスクを付けGPを解放した状態で頭上を抜けた…

『何あれ!鳥?』

『違う!人間と鳥が融合した感んじ…』

『バードマンだ!助けに来てくれたんだ!』

 敵も突然の誠司の加勢で慌てふためいている完全に敗色だ…だが…そこに敵の増援が加わった…βとγの混合部隊だ…流石に二人では危険な数がそろってしまい紫神の体の事もあるため一度離脱しレイと光が変わりに入った…

「ウルフ…どこに行きたい?」

「ホーク…解っているだろう?…敵の大将のところだ!」

「同じく!」

 猛禽類独特な足…そこにぶら下がるように白銀の毛の耳と尻尾の狼がいる…突然敵の集団の中心に急降下し狩りを始めた…

「天那!誠司を見つけて校舎の屋上に飛んで上から狙撃してくれ!」

「わかった!」

 最後の二人も行動を開始した…そして皇太と天那の攻撃で敵は完全に敗北するのだ…

「音羽さん!」

「丁度よかった!あたしを屋上にはこんで!」

「解りました…俺も今から紫神ちゃんを連れて行こうと思ったところです…ではいきますよ!」

 飛び上がり屋上にさしかかったところで敵に発見されてしまい銃撃されたが天那の狙撃でなんとかなった…無事に到着し紫神も天那と狙撃を開始、誠司は第二形態に移行しβとγを中心に攻撃を開始した…

「ウルフ!来たぜ!俺らの大将が!」

「悪い!遅くなっちまって…」

「それよりなんとかしろ…この数は流石に三人ではきつかったのだ…」

「いくぜ!」

 最後に皇太が加わり敵のγランクと一対一になった…

「アタイの炎に焼かれな!」

「あたらねぇよ!」

 GP…ゲノムパワーは生物の特徴を取り込むのみでは無い…遺伝子に属性や素体の特徴を上手く書き込めば炎…水…氷…岩…空気…その他もろもろ…いろいろな物に変身できる…敵は最新鋭の人造人間のようだ…しかし…訓練度や完成度が低く結局自滅していく…

「なんで…体が溶けて…」

 素体が持たないのだ…過度なGP解放は命にかかわる…その点天那や皇太のような生物型は扱いにくいものの死亡率は低い…結局最後に残ったのはこの学校に潜入していたEDENの刺客…西城拳我のみ…それでも皇太に挑んでくる…

「喰らえ!」

「効かない…もっと力を入れろ!」

 どんなに力を入れても攻撃は弾かれカウンターが帰ってくる…諦めたと同時に皇太の動きも止まり最後にとどめを刺して来ない…

「なぜ殺さない…俺は敵なんだぜ…夜井…」

「知るか…俺はもう出来る限り人が無駄に死ぬのを見たくない…お前もそうだろ?…これからどこにでも逃げてもう一度人生やり直しな…それとも殺してほしいのか?」

「わかった…だがEDENは俺を探し出そうとするだろう…実験生物が敵の手に落ちないように…俺をMINDSに入れてくれ!なんでもするから!」

 皇太が手を差し出し誠司が起こしてやった…その他に重症、軽傷を問わず一度人造人間を施設に運び手当をした…その戦闘で考えを改めてMINDSに入団する者も多かった…今回の戦闘で学校の校舎が半壊した…そのため一時休校が決まり皇太の家に集まり会談を始めていた…

「で…あたしはどうなるの?」

「秘密を見た奴らは生かしてはおけない…」

「皇…京香なんだから許してあげなよ…」

「お前が言うなら…」

 天那の制止でなんとか終わり受付兼雑用でMINDSに入ることになった…皇太が天那にDVをしていると勘違いした天然少女もこれから微力ながら携わって行くのだ…

「…でも…紫神ちゃんやりすぎでしょ?あれは…」

「そんなことない…兄上が力出したら山が無くなる…」

「俺の話しではない…しかも関係ないし…」

「そんなことよりも話す事があるのだろう?」

 敵も大きく動き出したのだ…MINDSの殲滅を始めたらしい…これから戦闘が激化するのは確かだ…しかも敵の戦力はまだ計り知れない…今入っている近況でもこちらが劣勢であることはすぐに解る…

「で…親父殿はどうするつもりなのだ?」

「今はどうしようも無い…動けば大軍で攻め込まれる…問題はそこだけでは無いんだ…最近の近況の中に異次元の暴走が入っていたんだ…奴らは異次元の生物をこの世界に解き放つ気なんだ…」

「つまり…この世界を混乱に落としめ…自分たちを英雄と格付けた上で我々を殲滅する…という作戦で来るという事ですか?」

「その通り…親父も八方ふさがりで動けないんだ…今は動きを自重してくれ…」

 本当は組織と組織の抗争で済むはずの戦争が世界を巻き込もうとしていた…それは形となって現れ始めた…

『国連の研究施設が異次元制御に失敗しこの世界に異次元の強力な生物が多く侵入しました…皆さんも十分ご注意ください…』

「さっそく始まったな…もう…後には引けない…」

「でも…皇…どうするの?敵の戦力は圧倒的…勝てるわけが…」

「姉上…我々は勝たなくてはなりません…最後の一人になっても…」

「そうだけど…」

 次の日から学校の再建作業が始まった…異次元の生物…普通の人間の持つテクノロジーでは勝てるわけがない…正規軍の使用する核エネルギー型ナノマシンではドラゴンの鱗は貫けない…大地を腐食させるスライム状の生き物の対処すらできない…凶暴化している元々の原生生物…もはや…戦争では無く太古の生態系を復元させた殺戮…だんだんと敵の目的も解ってきた…EDENの上層機関であるhebunnが独裁を敷くための作戦…人情の欠片も無い行動…

「皇太…話がある…我々MINDSは総崩れ覚悟でこの日本にあるEDENの拠点を全て攻撃し陥落させる…お前たちにはキツイ戦いになるだろうがなんとか生き残ってくれ…我々がいなくてもお前たちがいればなんとかなる…」

「親父…縁起でもないこと言うなよ…皆で生き残ろうぜ!」

 作戦は実行された…これから一年…世界中の大混乱の中でMINDSとEDENの攻防が始まるのだ…

「俺達は二手に分かれる…そして生き残る事が先決だ…まずは第一部隊…俺、天那と西城、に慶二だ…第二部隊は紫神…レイ…光…誠司…皆生き残ってくれよ…」

「わかってるって!」

「俺たちが死ぬはず無いだろ?」

「まったく隊長たるものもっと強気にならんでどうする…」

「皇こそ無理はダメだよ!」

「兄上が一番危ない…」

 思い思いの返事をし作戦を実行するための陣に着いた…前半戦はかなり善戦した…MINDS総司令官の総一郎が攻撃を受け死ぬまでは…

「こちら黒龍…敵艦隊撃破…」

「了解…山間地の弾薬庫を襲撃…」

 これが最後の言葉となってしまった…

『皇太、紫神…すまない…先に行くことになってしまった…お前たちが私の力の及ばない所に行くまで待とう…これが父親として最後にしてやれることになってしまったが…私はお前たちの父親になれて幸せだったぞ…』

「親父?」

「父上?」

『ありがとう…』

皇太と紫神に本部にあるシャトルを使い脱出することを命令し自分の信頼のおける部下のみを残して最後の攻撃を施行…『日本』ごと敵の施設を破壊した…それがMINDS総司令官の最後だった…生き残ったのは…皇太…紫神…天那…西城…光…誠司と数名のCランク戦闘員とSランクの少年…そして総一郎の命令で退去していた住民が五百人…それだけだ…

…それは二か月前…

「まずい…敵の増援の数が予想以上に多い…これでは総崩れは必至…皇太や紫神天那達だけでも逃げさせねば…だが彼らは諦めていない…どうすれば…」

 その頃…皇太と天那…紫神と誠司の組がより奥に西城、慶二が防衛…光とレイが航空部隊を攻撃していた…

「おい!アイツ!OGREだ!殺される!逃げろ!」

「逃がさない!」

 皇太と天那はかなり善戦していた…EDENの日本支部は総計209…およそ半分を二人で撃破した…最後の択捉支部を陥落させたころに総一郎から連絡が入り急遽引き返し生き残った味方や知人を連れ愛知県の本部に帰還…その後西日本に向った紫神の隊を連れ戻すように通達され急いで向った…

「くそ!間に合ってくれ!」

「皇!あそこ!」

 そこにはセイントの能力を最大限に開放し敵をなぶり続ける紫神の姿があった…それは悪魔のように容赦なく敵をゴミとして殺していく…誠司がこちらに気付き制止してきた…

「皇太!近寄るな!紫神ちゃんが暴走してる!能力が切れるのを待って俺が救い出すから中国地方に行ったレイ達の方が心配だ!そっちに向ってくれ!」

「わかった!」

 誠司が紫神を助け出すといい皇太と天那を先に向わせた…そこではレイと光が手傷を負っていたもののなんとか奮闘していた…

「レイ!」

「皇太さん!」

 光が戦闘機やヘリの上を飛び移り次々に落としていく…しかし…皇太が加勢しても焼け石に水…次から次へと現れる上数が違いすぎる…落としても落としても湧いて出てくる…

「レイ!引くぞ!本部への退避命令が総隊長から来ている!行くぞ!」

「解りました!」

 光をのせ皇太とともに滑空していくレイ…しかし…疲れ果てているレイに追尾ミサイルの集中砲火が迫っていた…そして…

「皇太さん!光を頼みます!」

「レイ!」

 爆音とともにレイの姿が黒煙の中に消えた…皇太が助けようと急降下したもののレイが最後の言葉を言い残し樹海に落下していった…

「光を…頼み…ます…」

「くそ!」

「レイ―――――――!」

 光の悲痛な叫びが戦闘機のエンジン音でかき消された…皇太の背中で天那が大弓を使い再び撃墜を始めた…なんとか逃げ切った皇太…総一郎の前に出て最後の戦闘許可をとり…誠司と紫神の所に向った…

「くそ…このわらわがこの様な雑魚どもに!」

「紫神!」

「皇太!来てくれたのか!」

「早く行け!俺が食い止める!生き残ってくれ!」

 中国地方の戦闘機隊と現在そこに居る陸上戦闘部隊…北陸と海を渡ってきたサイボーグの増援部隊…その全てを一手に引き受け父親…総一郎が全国に居るMINDSの生き残りに本部への集結を促す電信をしている間の時間を稼ぐためだ…

「来い!カスどもが!」

 三時間…皇太自身の体力を考えて稼げる時間だ…その間に海中のMINDS基地へ次々にシャトルが出発…そして二時間半…総一郎からの通信が来た…

「MINDS本部に終結した生き残りおよそ千人を無事に退避させた!帰って来い!お前と最後の連中を脱出させる!」

「了解…これより帰還する…」

 向ってくる敵を憎悪の矛先が向くままに惨殺した皇太…むなしさばかりが残るがこうしなければ天那や紫神、誠司、光は守れない…全ての敵を完全に殲滅し一直線に帰還していった…

「夜井皇太…只今帰還しました…」

「皇太さっそくで悪いがお前たちもシャトルで深海にある我々の総本山に向ってくれ…それからレイの事だが…敵に捕縛されてしまった…」

「解りました…これから残りのメンバーを連れ向います…」

 紫神が残ったメンバーと荷物を全てシャトルに搭乗させ出発の許可を待った…

「皇太…速く行きなさい…なるべく速く…」

「親父は?どうするんだよ…」

「私はつぎに向う…」

「…」

 シャトルに乗り基地を出発した…皇太をはじめ天那も誠司も拳我も黙り俯いている…光の泣き声だけが響く…すぐに特殊なバリアが張られた場所にたどり着いた…中に入った瞬間大きな波動で海中が揺れた…

「到着した…こちらSD‐37…こちらSD‐37…格納庫へ格納許可を申請します…」

『許諾しました…SD‐37の搭乗員を歓迎します…』

 皇太達は海中要塞poseidonnに到着した…皇太はある経験からここが嫌いだったがこの状況ではここしか頼れないのだ…EDENやhebunnに見つかっていない所はここしかない…

「規模…設備…人員のうえでここは最終的な砦でしょう…貴方達ヒューマを歓迎します…ここにはMINDS以外にも多くの反hebunn組織が基地を置いておりこれから貴方にMINDSの総司令官としてここに駐留していただきます…」

「ちょっと待て…親父いや…総一郎はどうした?」

「MINDS本部の反応の消滅とともに消息を絶たれました…」

「親父…」

 これで第一次生命戦争の勝敗は決した…それは多くの犠牲と『日本列島』の消滅という形で終結…双方に大きなダメージを与えた…被害の差はそこまで大きく開いてはいないがMINDSの敗北が濃厚だ…しかし…この戦争で反hebunn連合の各組織が意識を高め始めた…皇太や天那…他のヒューマの活躍をたたえ連合は常任理事の理事長に就任を要請…

『その他…管理保護区以外の地域では人類の生存は確認されず人口は百億人から十億人にまで減少…国連の理事は深く謝罪の意を表しているが多くの人の命を無駄に失わせた罪は重く…』

「…レイ…」

「皇…あたしたちこれからどうするの?」

「EDENの動向を探り敵をつぶす…たとえ命を落としても…俺は奴らを許さない…」

 今…ここのMINDSの施設内に居るのは皇太の住んでいた街の住人が五百人ほど…MINDSの戦闘員が五百人ほど…合計約千人…海中の要塞はさらに拡張を続けているため居住区には困らない…他のMINDSの施設から来る人々との交流も濃くなる半面差別化も大きな問題に成り始めた…

「皇太…大丈夫か?」

「あ…あぁ…大丈夫だ…」

「どう見ても大丈夫では無いがな…夜井…」

「皇…休んだら?」

 皇太がMINDSの理事になって数週間…働き詰めの皇太…受け入れられない事を忘れるためにがむしゃらになっている…父の死に親友一人を失った…その他にも学校の友達を多く死なせた事…これが大きな重圧になっているのだ…

「兄上が昔の目をしている…」

「あぁ…孤児のころのか?」

「ということは…」

「えぇ…かなり心身共にダメージを受けているでしょうね…兄上は人に自分の感情をぶつける事が少ないひとなのでなんとかしないと…」

 皇太の部屋に行っても応答なし…紫神が声をかけても応答が無い…

「皆…今はアイツを一人にしてやってくれ…音羽さんは部屋に入ってもいいが話かけない方がいいとおもうぜ…」

「丁度いいのでお伝えします…真田さん中央ホールにきてください…兄上が渡したい物があるそうなので…」

 レイの部屋から持ち出した荷物を全て光に渡したのだ…それから全員を招集し作戦を練った…

「皇太…これからどうするつもりだ?」

「これからまずすべきはレイの奪還…そしてまず敵の核となる主要施設の破壊だ…」

「ですが兄上…そこまで簡単に行くでしょうか?レイさんと言えど洗脳されていれば簡単には捕まってくれないでしょう…?」

「そこは光に頑張ってもらうしかない…俺も解ったしな…グダグダしていても仕方ない…まずはアメリカのニューヨークにある敵の主要プラントを破壊する…多分レイはまだ洗脳されていないだろう…敵の技術ではまだ猛禽類の解剖はしていないはずだしな…そこで今回は速攻で方を付ける…」

 作戦はこう…皇太がおとりになり最低限の人数だけで敵を壊滅させる…まず皇太が目立つように空中から侵入…そこに紫神と光がラボの中心に入り込みレイを奪還…拳我と慶二は二人の護衛で天那は皇太の補佐…というかなりポピュラーな作戦で敵の施設をおとすのだ…

…決行日…

『MINDSの皆さん!おやめください!無駄死にするだけです!』

「やらなくては解りませんよ?」

「私たちはそういうチームなんですよ…」

 海底を進み大西洋を目指す…到着まで皇太の他のメンバーは誰も口を利かなかった…そして目的地に到着…今回の戦闘で危険なのは皇太の耐久と原生生物の襲撃…それも計算に入れたがこればかりはどうしようもない…

「到着!これより作戦を決行する!紫神班は先に陸に上がり警備をかいくぐっていけ…」

「了解しました…」

「天那…見つかるなよ…それから俺が暴走したら迷わず逃げろ…俺の事は気にせずにな…」

「…」

 作戦は決行された…皇太が空軍基地上空を滑空しわざと見つかる…それと同時に紫神班がラボに侵入…ここまではなんとかなった…問題はここからだ…

「兄上!まずいです!レイさんは洗脳されておらず無事に救出出来ました…しかし脳内から情報を読み取られて兄上や我々の情報が敵に流れています…」

「安心しろ…これからこいつらの基地は跡かたも無く消えるからな…データすら残さない…敵も俺が動くと踏んで抹殺計画を執行してくるだろからな」

 その時…聞き覚えのある耳障りな声が響いた…

「よぉ…夜井!久しぶりだな!」

「貴様は日野…やはりか…」

「俺はライザス!この国連の機密軍の大佐だ…ここがお前の死ぬところだ…死ね…これまでの俺とは違うのだ…」

 敵もここまでは予定どおりだったのだろう…これが原因で地表に生きるほとんどの人間が居なくなるのだ…そのきっかけを作った男こそがライザス大佐…本名日野陽助だ…

「冷却胞発射!」

「まずい!…こいつらホントにやるつもりか…」

 回避するもやはり数が違いすぎる…腕や足が徐々に凍結していく…遂に氷は羽にまで達し空から皇太の姿は消えた…天那は不振に思ったが敵の航空機を打ち落としているため解っていない…その時…北アメリカ大陸が地獄にするきっかけが起こった…皇太としては回避したかった事だ…しかし…時既に遅し…

「良くやった!こいつは実験に使える!ラボに運べ!」

「貴様らが我らを落としめたか…殺す…殺してくれる!我はこの者の同胞…許さん…許さんぞ!」

「なっ…なんだ!」

第四形態までしか進んでいないはずの皇太が何故か最終形態へと変化していく…そしてナノマシンが本体から切り離され暴走を始めた…ナノマシンは本人の意志のままに動く…意識を失い眠っていたOGREが再び目覚めた…それは怒り…皇太を攻撃した人間への憎悪だ…切り離される直前にそれはナノマシンに伝達され暴走していく…本体も無理な変化をしているため本人の体も歪な形をしている…

「総員退避!夜井皇太が暴走している!退避!」

『逃がさない!』

『貴様らを闇に葬ってくれる!』

 近くに居た者はもちろん近くにある研究施設に甚大な被害が出た…もはや修復や再建は不可能…そして異次元管理施設に魔の手が伸び異次元と完全に繋がってしまった…雪崩のように向こう側から生物がわき出てくる…それは全て皇太の方向に向って行くのだ…黒い渦を巻き中心の個体の方へ…それも何故か中心付近で無くなる…巨大な龍であってものみこまれて姿を消す…やがてそれは逆の方向に渦を巻き拡散を始めた…

「まずい…皇太の奴がマジで暴走し始めた…」

「おい!まだあそこには天那も居るぞ!」

「皆さん…!天那姉さまは大丈夫です!問題はこの大陸の住民です!バリアが消えた今彼らは格好の餌食です!なんとかしなくては…」

「皆…今のあそこに近づくな…hebunnはこれを狙っていたんだ…しかし…予想以上の被害が出てしまい奴らは対処できずにいるだろう…今近寄れば俺たちも皇太さんに食い殺される…」

「しかし…」

 渦はアメリカ本土からカナダまでを包み完全に飲み込んだ…そして中心から渦が消え始めた…

「天那姉さまだ!あそこ!」

「俺が迎えに…」

「レイ!お前じゃ無理だ!俺が行く!」

「誠司…頼む…二人を助けてくれ!」

 天那がなんとか皇太を抑え悪循環は消えた…しかし…開いた異次元の歪は戻っていない…それでも生物の流出は止まりつつある…

「皇…大丈夫?」

ナノマシン…OGREと再び結合した皇太だが体に相当なダメージが残っている意識も未だに無い…それは捕食者達からすれば格好の獲物でしかない…巨大な龍が現れ接近してくる…GPを使用しすぎた天那は何もでいない…皇太は意識すらない…絶対絶命だ…その時…

「音羽さん!」

「誠司君!なんで!」

 危機一髪とはまさにこの事だ…天那の手と皇太の服の襟を掴んで舞い上がった…大きく急上昇と降下を繰り返し捕食者を撒きなんとか移動用のシャトルにたどり着いた…海底に潜りposeidonnまで進んでいく…皇太の容体は安定していき回復した…天那も副作用がようやく回復を始め一同は帰還した…

『お帰りなさい!よくぞ御無事で!』

「医療施設を開いてください!重症患者二名!」

『了解しました!』

内部の医療機関で治療を受けレイは徐々に回復し脳のダメージとミサイル激突時の火傷もほぼ完全に修復された…しかし…皇太の方は全く意識も戻らず昏睡が続いていた…

「レイ…皇太さんはどうなったの?」

「おそらく…冷却されナノマシンとの結合がとかれ体組織が不安定になっているんだろう…音羽さんもそんなに心配しない方が良いだろう…気力が持ちませんよ…」

「でも…皇が…」

「天那…俺が知らせてやるから寝て来い…」

 慶二の一言でなんとか部屋に戻らせた…そののちMINDS以外の組織も陸への侵攻を開始した…そして北アメリカ大陸での調査の結果恐ろしい事が起こっている事が判明した…『世界の浸食』…が始まったのだ…

「ここは?ってなんか前にもこんなことなかったかな?」

「皇太!やっと気付いたか…そのまま待ってな…うるさい奴を連れて来てやるから…」

「慶二さん?それよりも…伝えたい事が…」

「まっ…まずは心配していた連中を安心させてやりな…」

 慶二の呼び出しで最初に天那…次にレイと光…紫神に誠司…他にも多くのMINDSのメンバーが病室に集まった…それから二日…

「皇…もう大丈夫なの?」

「大丈夫…だと思う…それよりも理事会に伝えなくてはならない事があるだから行かないと…」

「何を?」

「これから俺たちがしなくてはいけない事…」

 理事会では皇太の目撃した内容と照らし合わせposeidonnに基地を置く組織すべてに連絡を送った…結果…この世界で今起きている事はこの世界全てに関わる重要な事なのだ…最近のいい例ではhebunnの主要基地が黒い渦のようなものに飲み込まれ消えたらしい…

「夜井さん…これからどういたしましょう…我々はもう滅びるしかないのでしょうか…人類は自らを葬り去ってしまうのでしょうか?」

「それはさせない…今現在の状況で人類は国連のhebunn上層における管理下の住民…そしてこのposeidonnに居住している数億にのみ…俺の案は二つ…今の科学を用いて宇宙に避難するか…もうひとつはあの異空間との接点を消しさる…二つとも出来るが俺は二つ目を実行したいと思う…」

「ですが…前者の方が効率的では?」

「いや…夜井さんの言いたい事を察すると…あの空間は地球だけではなく宇宙を飲みこみかねないということ…私も後者に賛成です…」

理事会の中央会議室内に再び沈黙が広がった…二つとも大きなリスクだけでは済まないということに加え後者に関しては任務を遂行した勇気ある戦士は生還することは難しくどこの組織も挙手をしないということだ…もちろんMINDSは実行チームからは除外されている…

「それに時期はまだだ…それまでにどいつもやらないなら…俺…夜井皇太が任務を遂行する…MINDSが総力をかけて空間を消滅させてやるよ」

「…」

 皇太とMINDS科学研究部所属の風間健斗がつきとめ消しさる方法もなんとか発見し作戦も組んだ…それまで皇太や他のメンバーには休息が与えられた… 

「皇!久しぶりにデートに行こうよ!」

「おう…どこに行きたい?」

 人間としての素体は変化していないため普通に人間のように生活をしている…久々の外出で二人とも楽しそうに話している…poseidonnの生活区は流通の部門が充実しており下手なアミューズメントよりも客足がいい…

「…皇は一人で行く気?」

「いや…数人を連れて行く…が生きて帰れる保証はない…」

 皇太や天那…他のMINDSのメンバーは徐々に緊張感で口数が減っていった…作戦実行日まで残り五日…hebunnはほぼ崩壊しposeidonnに従属する機関が増えた…地上はほとんど異生物や凶暴化した原生生物で埋め尽くされ作戦は難航の一途をたどって行った…


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