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山伏式神はふいに道に散乱したパイロンを思い出した。あれは目の前にいる作業員の物ではないだろうか。
(…こんなヤツ、あまり見た事ないのに。なんで連想されたのかしら。この知識、私のものじゃない…)
脳裏にあの、ガラスの間での会話が過ぎった。このままでは童子式神に命を取られる。
(夢だとしても?──夢?人ならざる者が夢を見る?)
馬鹿げている。困惑しながらも人間を食べる。魔であるのなら人を食うのは造作もない、普通の生活の一部だ。お世辞でもあまり美味しい肉や血ではなかったが、連続で食事にありつけるのはありがたかった。
「それにしてもたくさん食べられるってありがたいわ!」
「喜んでいただけて何よりです」
リスが嘘くさい笑みで答えた。
「温泉ってのに入ってみたいのだけど、どこにあるのかしら?」
「申し訳ございません。温泉は人間様限定なんですよ」
「へっ??」
「人間には長咒池を温泉としてご提供させていだだいております」
あの湖だろうか?
「ルシャ様のお力で湖を温泉に見せているのです」
「そうだったのね…」
沐浴なら何度かした事があるので、少し残念だった。
「珍しい。人ならざる者が温泉に興味を持つとは」
リスが素面に戻って言う。「そう?」
「ええ、やはり、ルシャ様に似ております」