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「山伏式神さんは日仏村(ひふつむら)でどうなさるつもり?」

「それが迷い込んでしまって」

「珍しい。人ならざる者が迷い込むなんていつぶりでしょう」

「帰りたいの」

 切実に、頼み込んだ。越久夜町からどのくらい離れているかは知らないが、徒歩でもいい。

「貴方、どこから来たの?」

「越久夜町という場所よ」

「あら、聞いた事あるわ。ここから離れているけど、道は繋がっているはず」

「よ、良かった!」

「ルシャ様。彼女を休ませてから送り出すのはどうでしょうか?」

(ええっ?!)

「のんびりしていってちょうだい」

 了承を得てしまい、山伏式神は何にも言えず楼閣から出されてしまった。

「山伏式神様には宿を用意しますので。あと、村民たちも顔合わせを」

「ええっ、そんな風に歓迎しなくても大丈夫だから!」

 まるで旅行客じゃないか。

(あれ、でも私、そんな知識持ってないはず…)

 違和感に首を傾げていると、彼はまた歩き出してしまった。

「お客様は久しぶりでして。わたくしたちも嬉しくて、ご挨拶なさい。日照(ひでり)

「わ!」

 いつの間にか佇んでいた血にまみれた巫女がペコリとお辞儀した。

「日照はこの地区を管理している眷属になります」

「よ、よろしく」

「不思議と山伏式神様は、ルシャ様に良く似ていますから。彼女、滅多に顔を出さないのですけどね」

 自らとあの支配者が似ていると?

 山伏式神は分からない事だらけだと、不安になりながら、宿に案内された。

 また温泉郷に降りると料亭旅館のような、古めかしい建物に通される。リスによれば日仏村(ひふつむら)で初めて建てられた『観光客向けの施設』だと言う。見た感じ長らく使われていないらしく、廃墟化していた。

「山伏式神様は新鮮な食材がお好きなようですので、こちらで手を振るってご用意させていただきます」

「あ、ありがとう…」

 廊下を通り、広めの部屋へ案内された。

「夜中になりましたらまた伺います」


 リスが去り、山伏式神は部屋の隅で所在なく座っていた。

 まだ使えそうな部屋ではあるが、かつての面影はない。ブラウン管テレビには埃が積もっていた。

「暇ねえ」

 長く生きて初めて旅館に泊まったが、やはり休むための施設なのか、やる事がない。

 テーブルの上に放置されたパンフレットが気になり、手に取ってみた。

『ようこそ、日仏村(ひふつむら)へ。自然豊かな山間部にある天然温泉、長寿温泉。鉄分豊富な源泉かけ流しで──』

「なるほど、やっぱどこかに温泉があるのね」

 パンフレットよれば村はかつてたくさんの店や、客をもてなす工夫がされていたらしい。

 昔から閉鎖的な越久夜町とは異なり、開かれ栄えた場だったようだ。

「温泉、少し入ってみたいわ…」

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