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 ルシャの必殺技と言える能力が全てを支配し塗り替えるものならば──山伏式神の元来の能力は全てを支配し消しさるものだった。だがその強大な力が成長しきる前に、当時の越久夜町で絶大な支持を得た山伏の一族に調伏され、弱体化し、長らく過ごしてきた。

(そうよ。私が山伏の姿をしていたのも、屈辱を忘れないため)

 無気力になり、忘れかけていた気持ちが蘇る。けれども何もかも今更である。越久夜町はないのだから。虚ろな気持ちだけが横たわる。

 霧が生ける屍や村の生命を内包し、破けた穴へ吐き出されていく。それは"外"の重圧に耐えきれず、砕けて無に変換されていった。

 山伏式神は内包したモノを食べはしない。膨大な記憶や、物質を食べ続ければいづれルシャの如く中身が腐敗していくだろう。

「あ〜あ。なくなっちゃったわね。貴方の王国」

 日照の自害に気を取られていたルシャが『憎悪を宿して、こちらを睨んだ』。彼女にとっては村を霧が蹂躙した自称やリスの問いかけも無かったに等しい。記憶が奪われたのだから。

 隠されたベールが剥がされ、僅かに残ったのは歪な楼閣だけだった。

「魂はどこ?食べてやるから」

「ああああああっ!!」

 掴みかかろうとしたその時、眼前の魔物の影から真っ白な猿が飛び出し、顔にかじりつく。

「やめて!母君の顔を!傷つけないでっ!」

 ジタバタともがくうちにハリボテの楼閣が崩れていく。崩落し、土砂のように穴へ滑り落ちていった。


 気がつけば、あのガラス張りの空間に放りこまれている。

「ぐ、うっ…」

 ルシャ・アヴァダーナが床に蹲り震えていた。

「…山の女神は?」

 白猿も姿を消し、いるのはリスと自分たちだけ。

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