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 アルバエナワラ エベルム?

 そんな奴聞いた事もない。

 ──ああ、アンタには会ってないから当然だ。巫女式神の姿を借りて越久夜町にはいたけどな。

(巫女式神、なるほど。全くの無関係ではないのね)

 ──山の女神を呼べ。深淵のヌシに食われる前に。

(?)

「…。ルシャ・アヴァダーナの所へ行くのでしょ。早く連れていきなさいよ」

 ──正気かお前。

「潔いな」

「ええ」

 企みも何も無い。元より荒れ野の暴食魔神には利口さはない。食うか食われるかならば、こちらが捕食者になればいいのだ。

「正々堂々戦ってやる」

 ──ハァ〜、頭すっからかんなのかよ。コイツ。


 御堂まで再び案内され、ルシャと対面する。彼女から余裕さは失せてはいるが、こちらを一瞥すると軽薄な笑みを浮かべた。

「最期まで理解できなかったわね。貴方の事」

「他人だから当たり前でしょ」

「でも一つだけ分かる。人外らしく、殺し合いするのが貴方とは分かり合えるって」

「私は捕食者よ。今までそうしてきた」

 豪華絢爛な装束を剥ぎ取り、ルシャは軽装になる。「では、始めましょう」

 山伏式神は早速、建物内に蟠る闇に手を出す。我が物にし、増殖させた。視界を遮る。

 それが山伏式神の武器であった。

 犬一郎の手記に書かれていた。──欠点は目をつぶると力を発揮できない。

 "見る"は自分のもの(視界の内側に限る)に取り込む。

「がァ!」

 牙を剥いて、ルシャの喉に噛み付いた。奇妙な血が飛び散りこちらにも降りかかる。

「あはは!引っかかった!私は血でできてるの」

「あっそ」

 こちらを認識するためにわざと無防備になったのか。

 山伏式神は体を闇に変え、離れる。お堂の上層に着地し、姿を現した。「いて!」

 栗毛色の髪を引っ張られ、背中に激痛が走る。

「瞬間移動はこっちだってできるんだから」

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