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 ルシャはガッシリと顔を固定させると、瞳を覗き込む。

「取り込んで自壊したくないの。同じ思想になってちょうだい」

 体が金縛りにあい、直感的に生命の危機を感ずる。(精神干渉するつもり…?!)

(どうしよう…あのレベルに適う防御力がないわ。…考えなきゃ)

 考えるのは苦手だった。思考停止しして生きてきた。

 人間のように生活する必要がないから。

(そうだった。ここで食われたら…童子式神との約束、破っちゃう…)

 今更、思い出してしまった。彼と約束したのを。

(別に、私の中で特別な存在でもないのに)

 主従関係でも、契約を交わした仲でもない。でもいつだか、窮地に陥った彼を励ました気がする。

 または違う世界で役割がなく、手持ち無沙汰だったかもしれない。

(アイツは、ズルい奴だった。だって世界の中心にいるみたいな顔をしていたもの)

「何笑っているのよ」

(ま、そんなものよね。魔物の一生なんて)

 食うか食われるかの狭い世の中で何も知らずに一生を終える。理想の人生だった。

(童子式神)

 ──なんですか?

 ふいに奴の声音がした。気配を探ってもどこにも居ない。

 ──ハア、やっと魂をくれる気になりましたか?

(ええ)

 ──ええと、どちらが山伏式神なんでしょう?

 山伏式神は邪推してしまった。

(私は…)

 まだ死ぬ気は無い。ならこの境遇を利用するだけだ。

(私は上にいる個体よ!)

 ──なるほど。

「ルシャ様!」お堂の外で待機していたのか、リスが乱入してきた。

「誰だっ!我らの異界に干渉する者は!」

 素早く印を組み、結界を貼ろうとした。今だ!

 ルシャを突き飛ばし、脱兎のごとく走り出す。四つん這いになり獣そのもので疾走した。

「ばぁ〜か!」

 童子式神に言ったのか、はたまたルシャたちを罵倒したのか。捨て台詞を吐き捨て森に逃げ込む。

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