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 足音がして、慌てて自らの収納スペースに資料をしまう。日照が廊下からやってきて、牢屋の施錠を開けた。

(今だわ!)

 素早い動きで飛び上がり、頭を蹴り飛ばす。後ろに吹き飛ばされた血まみれの巫女を確認し、一目散に旅館の窓を突き破った。

(こんな簡単に逃げられるはずがない!こちらも予想外の行動を起こさないと!)

 山伏式神は空中にゲートを作り出すと、どこでもない空間──世界の裏に隠れこんだ。

「はあ…見つかる前に何とかしないと…」

 人界と異界の狭間。堺の神たちが使う、特殊な裏口だった。

 己と同等の魂を持つのならば、ルシャもこちらを感知できてしまうだろう。なら今のうちに解決策を練らなければ。

(越久夜町に帰らなきゃ!アイツらに食われるなんてごめんよ!)

「おや、まだ食われてなかったのか?」

 暗がりに童子式神に似たあの魔物がいた。「わ!驚かせないで!」

「大丈夫。まだ見つかっていないよ」

「お願い!越久夜町に、蛇崩に返して!」

「ダメだ。あの村から持って帰ってきて欲しいものがある」

「えっ?」

 魔物は懐から勾玉を取り出した。

「私がかつて、人間を引き渡す際にヒツに渡した宝物。それを取り返して欲しい」

「それが貴方の狙い?」

「そうさ。この勾玉は陰陽で一つだった。私が持つのは陰。あの村にあるのは陽。あれが手元に戻れば、町は再びよみがえる」

 そういうとこちらに投げてよこしてくる。

「貴方、何者?」

「まだ明かせない。力を貸してやるから、それに従い探してくれ」

「ちょっと──」

 ぐい、と何かに手を引かれ、異界に連れ戻される。「やめて!」

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