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映画などでありきたりな展開だと、我ながらに思う。
(映画っての、見た事ないけど)
映画とは人間が嗜む娯楽の一つ。知識によればこれはお決まりなパターンらしい。
「お清めされる前に逃げなくちゃ」
(とはいえ、退魔の呪法がかけられてる。どうすればいいのかしら)
逃げるとするのならば牢屋を開けた日照を負傷させ、その隙に逃げるしかない。それか日照を人質にとり、越久夜町への逃げ道を作らせるか。
ふと自らの隠し持っている闇──収納スペースに入れた資料を思い出した。
(何かヒントがあるかも)
資料を出現させ、手に取る。
『日仏村の成り立ちや歴史について』
日仏村について。
日想観が強い村。日仏村と呼ばれる前、人が居着く前はヒツ(古語)と呼ばれていた。涙を流す場所。遺体を捨てる場所だった。中世前から人が住み始める。
昔からヒツに遺体を捨てると、ごっそり無くなっていると不思議な噂があったが。
──その昔、遠い山奥にヒツと呼ばれた地域があった。ふいに山伏式神の記憶に確かな会話がよみがえる。
「なあ、知ってるか?ヒツがいなくなったらしいんだよ」
旅人が握り飯を食べながら同行者に言う。山伏式神は当然、奴らを食おうと群生したススキに身を潜めていた。
「え?ヒツの化け物か?」
「そうとも。何でもヒツを祀るってんでよ。この村より先にある集落に移動させたんだと」
「はぁ〜…何のために」
「知らねえ。ヤツらの考えてる事は分かんねえよ」
(ヤツら?誰だったっけ?)
旅人らを食い殺し、自らは忘れてしまっていた。確かに越久夜町がまだ村で、貧しく、人々も神仏や魔を信じていた頃。ヒツと読んでいた山があり、そこは『姥捨山』や『口減らしの山』と村人が噂していた。




