君の瞳が欲しい
かなり言葉が拙いですが最後まで読んでいただけると幸いです。
もし面白かったら友達に紹介してくださると助かります。
「君の見ている世界が知りたい、だから、君の瞳が欲しい」
淵田玲はただ話し相手が欲しかっただけだった。
もとより、友達を作るのは苦手だった。高校に入っても、友達を作れる気がしなかった。教室に入っても、ただ、本と向き合う日々ばかり、誰とも話すことのない隔離されたような生活を送っていた。そんな日々も、もう終わりだ。
玲は読みかけていた小説を閉じ、帰り支度をしていた。
「玲君は、いつもなぜ一人なの?」
誰か知らないが、玲は自分に話しかけているとは思ってもいなかった。誰も自分に興味を抱くことがなかったからだ。たとえ、話しかけているとしても無視すればそれで終わっていた。しかし、彼女は違った。
「なんで無視するの!」
本当に怒っているとは思えない、ただ、単なる好奇心に満ちたそんな表情していた。玲は不思議な奴だと思った。自分に話しかけていることも、そのような好奇心だけで自分のようなハブれ者に話しかけることも、すべてが不思議だった。理解できなかった。
「話しかけているとも思わなかった。」
「いや、ちゃんと名前読んだよ?」
玲は無視したことを隠せれるほど人と話すのは得意ではなかった。人と話す必要もなかった。しかし、彼女は早口かと思うほど素早く言葉を並べる。生き急いでるのかとも思ってしまえるほどに。
「ねえ、何読んでるの?」
その質問は、玲に興味があったのか、それともただ玲の読んでいる、本に興味のあったのかわからない。
「ん、不死と孤狼ていう本。」
「ふーん、玲君は表紙とかタイトルで本を決める?それとも、本の内容を読んでから決める?」
いつの間に、話が変わる。
「タイトル。」
「やっぱり、そうだよね!なんか勘がビビッときちゃうのわかる??こうなんていうの、本が私を読んでいるというか」
「うん、そう。」
玲はよく話し続けることができるなと思った。友達にこんな反応をされたら普通の高校生であれば、話すのをやめてしまうぐらい玲の返答は冷たかったはずだった。
「ねえ、玲君一緒に帰らない?」
話しかけた時もそうだった。彼女は話が唐突すぎる。頭が追いつけない。頭が彼女が言った言葉をうまく処理できない。
「ちょっと、付き合ってほしいんだよね。ああ、あの彼氏になってっていう付き合ってじゃないよ?」
そんなことはもちろん知っている。
「別にいいけど。」
「じゃあ、決まりだね!思い立ったが吉日っていうし早速れっつらごー!!」
初めてだった女子と帰ることも、誰かと一緒に帰ることも。
彼女の瞳は光が灯っていた。立ち姿さえもまぶしく感じる。羨ましく、そして妬ましくも思う。俺が他人に興味がないのは、自分にないものを妬ましく思い、友人関係がうまくできなかったから。それは、表立ってクラスで目立つ人だけではない。目立たずとも自分の道をいく人も。自分に無いものを持つ人すべてが。そして彼女も例外ではない。彼女の元気で明るい笑顔。何を考えているかわからないけれど輝く瞳。まだ今はこれくらいしかわからないが俺には無いものをたくさん持っているだろう。この妬ましさは理解されないだろう。でも、それでも、彼女いるだけその時だけ俺は満たされる。空虚だった俺が彼女によって満たされる。この思いも理解されることもないだろう。
俺は空虚だ。だからこそ嫌いだ。誰かに頼らないと生きていけない。そして誰かを困らせる。だから、あえて距離をとる。誰も俺のせいで困らせたくないから。でも彼女だけはそう思わなかった。すこし変わったところはあるけれど。出会ったばかりだけれど。それでも彼女だけは離したくない。彼女についてもっと知りたい。聞きたい。近くで見ていたい。そう。
「ねえ!」そういえば名前を聞いていなかったな。
「えーと、名前を聞いていなかったんだけど。」同じクラスだからこそ余計に恥ずかしく思う。
「乃愛だよ!香美乃愛。名前覚えてくれてなかったんだ。かなしー。」
「えっとそれはごめん。こんなに話すとは思ってもいなかったから。」
「まあいいよ。これから覚えてくれれば。」何か嬉しそうにそういった。
「そういえば、どうしたの?玲君」
こう面と向かうと言いづらい。どう反応するか不安だ。これで気味悪く思われるかもしれない、それでも言いたい。彼女のすべてが知りたいから
「君のすべてが知りたい。」
「えーと新手の告白か何かな?困っちゃうなー。」
「待って、それで終わりじゃない。きいて。」
「君の見ている世界が知りたい、だから、君の瞳が欲しい」
彼女はいつだって笑っている。