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第二話

=== 黒帝竜の(あなぐら) 20階層 ===


「情報通りなら――、このフロアにあるはずね」


 天井はかなり高く通路は十二分に広いものの、十全に明かりが灯された坑道にも似た階層。

 僅かに先行するミュートは、マップ片手に後ろを振り返りながらユリウス達に話し掛ける。


 ここまで、探索は順調だった。

 途中、15階層で一夜を明かしており、体調もほぼほぼ良好と言える。

 だが、ユリウス達にとって黒帝竜の(あなぐら)は初見のダンジョンではあるものの、所詮はまだまだ20階層。

 少なくとも、最高到達地点が42階層とされるこのダンジョンにおいては、まだまだ折り返し地点にも届いていない。


「しっかし、このダンジョンは雑魚しかいねーな。張り合いもない癖に、のこのこと出て機やがって」


 回復に特化したカミラの抜けた穴さえも、パーティーには聖騎士ミュートに加え、賢者マクウェルもいるのだから何一つ問題はない。

 ユリウス達だって、伊達にSランクをやっているわけではなのだ。


 テッドなんて、魔物の屍を越えてただ皆の後ろから追いかけるだけでよかった。


「ほんとよねー、ユリウス。ザコは一人だけで十分よ」


「まあ、まあ。しょうがないですよ。我々の相手になるような魔物なんて、深層にでも潜らない限りは現れないでしょうから。――とは言え、私としては、さっさとこんな場所とはおさらばしたい次第ですがね」


 単調なダンジョン探索を熟していれば、自然と愚痴も零れ出す。

 もっとまともな敵を求めるユリウスに、悪態をつきながら足早に進むミュート、マクウェルに至っては早く帰りたいと独り言ちる。

 テッドがこの三人と会話する事など、まず有り得ないが。


 とは言え、ここは魔物が溢れかえるダンジョンの中。

 そうは問屋が卸さないものだ。


 間延びした行軍を道なりに続けるパーティーの行く手を阻むようにして存在する魔物。

 その姿をミュートは通路の奥に捉え、腰に佩いた片手剣を抜く。


「ほら、また来たわよ。左前方、二匹、レッサーデーモンね。ユリウスは片方お願い。――《タウントッ!!》」


 ミュートから挑発スキルを浴びた一匹のレッサーデーモンは、片割れを置き去りにしたままパーティーへと駆け寄る。

 まるで強制的にスイッチが切り替えられたかのように怒り狂った表情を浮かべながら、大きく右腕を振り上げて。


「ほんっと、単調ッ! 《シールドバッシュ》」


 レッサーデーモンの踏み込みに合わせるように、腰を据えたミュートは左に構えた堅牢なカイトシールドを力強く叩きつけた。

 ごぎゅっ、と骨を砕く鈍い音が響き、レッサーデーモンは体勢を大きく崩しながらノックバックする。


 そこにあるのは、圧倒的な力量差。

 ミュートはただの一撃で勝勢を築く。

 後は作業と一緒。

 膝を突き睨めつけるレッサーデーモンの首を、ミュートは流れるように片手剣で軽く薙いだ。

 口火を切ってから、ほんの数十秒。


「あー、マジめんどくせぇ。――《雷鳴剣》」


 紫電を伴いながら袈裟懸けに放たれたユリウスの一閃は、目にも留まらぬ速度で残るレッサーデーモンへと到達し、何事もなかったかのように通過(・・)した。

 結果を確かめるまでもなく、ユリウスはミュートの方へと歩み寄る。


 しばらくして、遅れて届く高い激突音。

 道行く先の壁にでもぶち当たったのだろう。

 レッサーデーモンが立っていた場所には、両断された胴体が転がっている。


「さ、行きましょう」


 片手剣に付着した血糊を振り払ったミュートが、後ろも振り返らずに語り掛ける。

 もはや、戦闘後の労いも気遣いもなく、ユリウス達は進み出した。


 討伐証明部位と魔石を剥ぐテッドを置き去りにして。


 正直、Sランクパーティーとなったユリウス達にこんな場所で稼ぐ小銭は必要なかった。

 今は労力と時間の方が勿体ない。

 ただ、テッドにとっては長年の癖にも近い、自分の存在意義を求めているだけで。


 手早く仕事をこなすと、テッドはまたユリウス達を追いかける――

【筆者からのお願い】


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