第一話
「ったく、使えねーな」
荒くれもの達が徒党を成す大陸でも有数の暗黒街、ハイドアウト。
別名、餞別の街――
冒険者ギルドの一角では、否が応でも目立つ一組のパーティーが、度々起こる一幕を繰り広げていた。
「ご、ごめん……」
「ゴミなんて、放っときなよユリウス。ただでさえこんな片田舎で、二日も足止め食らったんだ。早く行かなきゃ、カミラが――待ってるから」
無遠慮ながら眉目秀麗な勇者ユリウスの悪態に、勝ち気で容姿端麗な聖騎士ミュートはそんな些事などどうでもいいと嗜める。
「そうですよ。お荷物君に構う暇などあるのですか? 貴方だって、心配なのでしょう? 一刻も早くしないと、王都で待つ彼女が可哀想ではないですか」
「……そうだな。悪い、とっとと行っちまうか」
聡明叡知な賢者マクウェルからの後押しもあり、ユリウスは一瞬苦渋に満ちた表情を浮かべるも冷静を装っていた。
Sランクパーティーである『聖櫃の旗手』
勇者、聖騎士、賢者、――聖女、――荷物持ち兼テイマーの五人。
この場所にはいない聖女カミラと、とある界隈ではどちらが荷物なのかわからないと名高い、ゴミでお荷物君なテイマーのテッド。
ユリウス達は、とあるダンジョンを求めてこの街にやってきた。
半月ほど前に請け負った討伐依頼。
ユリウス達は、らしくもない下手を打ってしまった。
まさか、Sランクの自分達が……と慢心していたのは事実だ。
しかし、相手が想像を超える難敵だったのは否めない。
だからと言って、今際の際にエルダーリッチが放った埒外な呪術をカミラが受けるだなんて、想像だにしていなかった。
「そうよ、素材はほとんどが集まったわ。後は、シニエラの透輝石。……それさえあれば、カミラを救える」
遠く、王都に残してきてしまったカミラを想い、ミュートは拳を固く握りしめる。
「先人も『善は急げ』と残しています。さあ、行きましょう」
「ああ。テメェも早くしろ! ……まったく、なんでこんなヤツを――」
吐き捨てるようにして、ユリウス達は足早にギルドを後にした。
テッドを一人、置き去りにして。
どうせ、目的は同じなのに。
「本当に……なんでだよ、カミラ……」
テッドは一人嘆く。
何故?
どうして?
本来なら、自分に降り掛かるはずだった呪いを庇ってしまった、カミラを想って――
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