ご飯、その後掃除の計画
「じゃ、俺はここで。って言っても隣なんだがな」
浩介達は家に辿り着いた。入学間もないこと、そして涼花という美少女と2人きりのことが相まって話はできなかった。ヘタレだな、と自嘲気味に思った。
「助かりました、本当にありがとうございます。そう言えば、不知火くん」
「ん、なんだ?」
何かほかにもあるのだろうか。
「不知火くん、食事はどうしているのです?買い溜めをするタイプですか?」
そう。一人暮らしということで、本来であれば自炊をするべきだが、浩介は買い物すらしていない。それが涼花には気になったのだろう。
「ああ、俺は宅配を頼むかコンビニ弁当だよ。作るの面倒だしな」
浩介も人並みに料理はできる。だが、基本的にめんどくさがり屋な為、よっぽどの事がない限り自炊はしないのだ。
「それはいけませんね、だから不健康な顔つきなのですか」
涼花が少し怒った表情で言う。叱っているようだ。
「君には関係ないだろう。俺は俺だからそれでいいんだ」
「ダメですよ。仕方ありませんね、私が作ります」
「·····は?」
浩介の頭には完全に空白ができた。一之瀬涼花がご飯を作る?俺のために?
「だから、私があなたに料理を振る舞うと言っているのですよ。そんな不健康な食生活を見逃す訳にはいきません」
「いや、だから君には·····」
「関係はありません。ですが、気になるものは気になるんです」
涼花はもはや完全にその気らしい。断るのは無理そうだ。
「じゃあ·····頼むよ。一応、感謝する」
「気にしなくていいですよ。私がやりたいだけなので。お台所、貸してもらってもいいですか?私の分も一緒に作ります」
「ああ、構わないよ。調理器具は揃ってるはずだ」
「自炊しないのにですか?」
「ものにはこだわるように親から教えられているんだ」
「いいご両親ですね」
そして2人は浩介の家へ入っていった。
「これは·····」
涼花が家に入っての感想を口にした。いや、口にはしていないが何となく言いたいことは分かる。
ゴミはないが、整理ができていない。それが浩介の家の現状だった。浩介は頭もよく、運動もそこそこできるが、自分に無頓着なのである。そのため家を綺麗にすることはあまり重要視しておらず、全く片付いていないのだ。
「不知火くん」
涼花が冷えきった声で言う。
「ご飯食べ終わったら、一緒に掃除しましょうか。掃除というよりは片付けですが」
「はい、分かりました」
即答だった。可愛い顔して恐ろしいオーラを纏った涼花に気圧された浩介は無意識に敬語で返事をしていた。