無愛想な隣人
恋愛モノは初めてなのでアドバイスをよろしくお願いします。
「今日は曇りか」
せっかくの入学式が台無しだと、不知火浩介は独り言をこぼした。
そう。今日は彼の高校、有栖川学園高等学校の入学式なのだ。4月だというのに天気は微妙、桜は3割方散っている。
「まぁまぁ。天気ばかりはしゃーないだろ、祈ってどうにかなるもんでもないしな」
中学校からの付き合いである大西遥斗がそういってくる。
「まぁな。清々しい気分で入学出来なかったのが少しばかり残念だっただけだ。別に気にはしてない」
「それ、世間一般じゃ気にしてるようにしか聞こえないからな」
そんな他愛もないはなしをしながら彼らは高校の門をくぐった。
「教室は·····ここか」
浩介たちは割と早い時間に着いたと思っていたのだが、案外人が集まっていた。中には中学時代に部活で見知った顔もいたのでクラスには馴染めそうだと胸を撫で下ろした。
「あれ?浩介じゃん!あんたも有栖川受けてたんだ、知らなかったよ」
急に後ろから声をかけられた。聞き覚えのある声だ。
「お前は·····葵か」
「おいこら、たかが2週間で名前忘れないでよ」
「大丈夫だよ、俺は分かってたから」
「いや逆に分かってなかったらぶっとばすよ遥斗」
このちょっと男勝りな女子は寺本葵。彼女もまた中学校からの知り合いだ。ちなみに遥斗と葵は付き合っている。いわゆるリア充と言うやつだ。とはいっても浩介は別段青春に飢えている訳では無いためあまり気にしてはいない。むしろ彼らの会話を微笑ましく感じていた。
「にしても同級生が固まるなんてありがたかったよ。あたし知り合いいなさそうだったからさ」
「お前ならすぐに仲良くできそうだけどな」
「まぁね、あたしにかかればちょちょいのちょいよ」
「今日日聞かないなそれ」
「葵は何故かババくさいところあるからなぁ。まぁそこが可愛いんだけどさ」
「惚気んな。葵も照れ照れすんな」
そうして浩介たちは談笑していた。その時だった。
金色の長い髪。蒼い瞳。均整のとれたスタイル。背が高く、すらっとした足。
まるで、漫画の世界から出てきたかのような、綺麗な女子が入ってきた。
当然、場はざわつく。
「ね、あの子めちゃくちゃ可愛いくない?」
「本当だ。どこ中だろう?」
「おい、話しかけてこいよ」
「うっせ、お前が行けよ」
などなどベタな会話が聞こえてくる。
「あの子·····」
「遥斗、知ってるのか?」
「ああ、多分一之瀬涼花だな。塾で見た事がある」
「なるほどな」
「遥斗、まさか手出したりとか」
「するわけないだろお前がいるのに」
「だから惚気んなって」
浩介は確かに綺麗な少女だと感じた。しかし、それだけだ。顔は無表情で、何を考えているかわからない、そんな顔をしている。笑えば可愛いのだろうが、典型的なクール系美少女なのだろうと勝手に結論付けた。
そんな事はあったが、式は滞りなく進み、ホームルームが始まった。とはいっても単に自己紹介をするだけだったため、全員の顔と名前を一致させるための時間だった。涼花の時だけは教室がざわついたが、先生の目もあるため大した騒ぎにはならなかった。
そうして帰りの挨拶も終え、今日は帰宅となった。有栖川学園では一人暮らしが認められている。何故ならこの高校は県内有数、いや国内でもトップレベルの進学校だからだ。勉強に専念するために一人暮らしを選ぶ者も少なくない。浩介はある事情があるために一人暮らしをすることにした。そのため遥斗と葵は電車だが、浩介は歩いて帰った。
「ま、悪くない家だよな」
そう玄関の前独り言をこぼした。実際、内装も外観も綺麗なアパートだ。文句はない。
「あら、貴方は·····」
声をかけられた。誰だろうと後ろを向く。
「君は、一之瀬さん·····だったよね」
浩介の前にはあの美少女が立っていた。同じアパートだったのか、と内心かなり驚いていた。
「ええ。不知火くん、でしたよね。これから隣人として、よろしくお願いしますね」
「あ、ああ·····よろしく」
実際に近くで見ると、その可憐さがよく分かる。しかし、浩介の中での評価は変わらなかった。
「では、また学校で」
そう告げ、涼花は家に入っていった。
なぜだか、胸騒ぎがする。
その胸騒ぎの正体に浩介が気づくには、まだまだ時間がかかりそうだ。
宜しければ高評価等、よろしくお願いします。