一本道
『目的はなんなの?』
2人に向かって言った。
すると罪人は笑って
『世界征服....とでも言えばいいかい?』
と冗談っぽく言った。
もちろんそんなのは嘘だと分かっている。
あからさまに嘘をついているところを見ても、何か大きな秘密があるのだろう。
『もし結びをしたとして、それは何か重要なことに繋がるのかい?』
紫音は静かに、何かを主張するかのように言った。
『重要なことには繋がらないよ。ただ契約者の場所が、お互いにすぐ分かるようになるだけさ』
ならなぜ結びをさせようとするのだろう。
たしかに居場所が分かるというのは便利だが、
それは何か悪いことに手を染めてしまうような、
罪人と同じになってしまうような、そんな気がした。
『それだけじゃないよ!契約者同士の繋がりは、情報を共有しやすくするんだ。追手の動向など、広く多くの者に伝えるのにこれほど向いているものはないさ』
『今のはどれもメリットばかりだ。デメリットも教えてもらえないとフェアじゃない』
声を荒げるでもなく、シナーに向かい目線をそらすことなく紫音は言った。
ピエロの顔のまま、シナーは紫音を見つめつづけた。
話しだす気配など微塵もない。
シナー自身も隠したいことなのだろう。
どんな人もデメリットなど言いたくはない。
進んで言う人など、一握り程度しかいないとさえ思う。
言ってしまったら結んでもらえないかもしれない。
その可能性が少しでもあるうちは、決して口を開くことはないだろう。
2人が向き合っているのをただ眺め、不穏な空気が流れはじめたとき、紫音のシナーが口を開いた。
『デメリットと呼べるものが1つだけ』
『それは?』
『結んだ相手が捕まると、巻き添えをくらうという可能性』
それは十分にデメリットと呼べるものだった。
『ただ実例がほとんど無くて、断言は出来ない。今は本当に、可能性止まりで.....。』
女性のような高めの声で、小さくゆっくりと言った。
確証はないにしても、“可能性”が少なからずあるのなら結びたくはない。
紫音もそう思っているようで、目を伏せている。
予想外の者の発言にシナーは腕組みをし、笑顔であったはずの顔が少し歪んでいる。
空気が少しずつ重くなるのを感じた。
そんなとき、動いたのは紫音だった。
『もう、結ぶしかないんじゃないでしょうか。指にあった線も消えていますし。端から道は1つしかなかったわけですよ』
そう言われ指を見ると、たしかにあの存在感のあった二重線が消えている。
これでは戻ることができない。
結ぶしかないのか....。
選択肢が1つしか用意されていないのなら、抗わずに乗った方がかえって安全なのかもしれない。
紫音も結ぶ気になったようで、私をじっと見ている。
あとは私次第.......。
でも、だからといって簡単に「はい、分かりました」なんて言えない。
私だけではなく、周りにも何か起こってしまうかもしれない。
起こるのではないか。
そう思うと怖くなった。
そんな私に耐えかねたシナーは、私の手をとり、指先を少し切った。
『痛......何するの』
指先から血が流れ、ぱたっと地面に落ちた。
落ちたところが白くなり、波紋のように広がっていく。
それはずっと遠くまで広がっていった。
見えないほど遠くまで。




