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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第三部

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緊急討伐依頼、魔人種発生 前編

 ――前日、閉店後の迷宮フロア。


 ポリポリ……。ポリポリ……。

 通路の骨を拾って齧るラキモンの姿があった。

「物足りないラキ……」

 ぴょこぴょこと歩きながら、とある小部屋に入る。

「うたちゃん、アレ唄ってラキ~!」

「あれ?」

 小部屋の中には、目当ての歌い骸骨は居なかった。

「うーーたーーちゃーーん!!」

 ラキモンは大声を出すが、返事はない……。

「いないラキかぁ……んぴょっ?」

 床の隅に何やら光る物を見つけた。

 黒くて丸い石のような物で、ピカピカと輝いている。

「きれいラキ! おいしそうラキね~!」

 そう言うと、迷わず口に入れた。

 ガリガリと音はするが、しばらくしてペッと吐き出す。

「ラッキーーッ!! 硬すぎるラキ!」

 石を投げ捨てて、通路に出るとまた骨を拾ってポリポリと齧り始めた。

「ふぅ、これが一番ラキね~」

 そう言いながら、ラキモンは迷宮の奥へ姿を消した。


 ――ジョーンの家。


 俺は背伸びをして布団から起き上がった。

「快晴、快晴!」

 昨日は結局誰もベビーベロスに勝てなかったなぁ。

 今度、俺も戦ってみようかな?


 鼻歌を唄いながら、Tシャツに着替える。

 GOダンジョンの取材も終わったし、フォロワーさんは増えてるし、絶好調じゃない?

 自然と身体が揺れる。陽気な気分になっちゃうぜ。フゥー、ヘイヘイ!

「大分、髪も伸びてきたなぁ」

 鏡を見ながら、前髪を引っ張る。う~ん、さっぱり切っちゃうか?

 でもまた坊主は嫌だし……。

 俺はハサミを持って、目に入りそうな前髪だけ少し整える。

「ふ~ん♪ ふふ~ん♪」

 さてと、今日は外で食べていこうかなっと。


 パルルルルルルル……。


「あー、動いて良かったー」

 鍵がささったまま、庭の片隅にあった原付バイクに乗り街へ向かった。

 寝起きの身体に、朝のひんやりとした風が心地良い。

「はー、極楽極楽」

 やはり田舎は時間がゆっくり流れている。

 この前まで感じていた、都会の喧騒が嘘のようだ。


 しかし、色々と探してみても、時間が早すぎてうどん屋しか開いていなかった……。

 仕方なく、コンビニでパンと唐揚げを買って、ダンジョンへ向かう。


 開店準備を終えて、デバイスをOPENに。

 すぐに、ベビーベロス狙いのお客さんが来る。

 いやぁ、いい仕事するなぁ。

 集客効果が高いのは良いことだ。うん。


 数分後、カウンター岩前に、ダイバーが転送されてきた。


「え?」

 俺は何事だと急いでダイバーに駆け寄った。


「どうしたんです? ベビーベロスですか?」

 いや、それにしては早すぎるか!?


「あー、びっくりした。魔人だよ魔人、初めて見た!」

 ダイバーはゆっくりと立ち上がった。


「魔人!? 魔人種ですか?」

「多分そう、動画で見たことあったから、店長さん、あれ、そのままにしとくと不味いかもよ?」

「え、どうしてですか?」

「あれは多分『バーメアス』って言って、何でも襲う魔人種だよ」

「何でも?」

「そう、ダイバーも、モンスも見境い無いんだ。俺も一人じゃ勝てる気しないから、今日は帰るわ」

 ダイバーはそう言って、帰っていっった。

「すみません、ありがとうございました!」


 ダイバーを見送ると、俺は慌ててデバイスを確認した。

 マップを見てすぐにわかる。


 赤い点が、赤い点を追いかけている……。


 地下七階、迷宮フロアか。

 ビューに切り替えると「ひっ」と思わず声が漏れた。


 迷宮の通路の壁には、破裂したミドロゲルガの体液と肉片が飛び散っていた。

 その通路の先には、一体のモンスが歩いている。


 よく見ると、人の様な姿をしているが、耳は尖っているし、手には鋭い爪、下半身は山羊の様で、何より肌が青い。全身からは薄っすらと、黒い煙のようなものが揺らめいて見えた。


「あ、あれが魔人……バーメアス……」

 ふと、その名前に引っかかるものがあった。


「ん? バーメアス? 何処かで……あっ! そう言えばバックドアが開いた時に、リーダーが言ってたよな?」

 俺は、あの時のことを思い出した。確か、手強い奴だと言っていたはず……。


 デバイスに目を戻すと、バーメアスはそのまま下に向かっていた。

 八階に降りたバーメアスは、ウィスパーやボーンナイトらを、まるで蝿でも払うように倒していく。


 こ、これは本当に不味い、いくら復活するとはいえ、片っ端から倒されてしまうと商売にならない。

 どうする? 倒しにいくか?

 いや、俺じゃ倒せそうにないな……。


 ともかく、急ぎネットで情報を集める。

 えーっと、魔人種の復活には法則性がなく、大抵の場合は倒すと当分復活しない……か。

 となれば、全力でアイツを倒す事だけ、考えれば良いわけだ。


 ――そうだ!

 俺は急遽討伐(ハンティング)依頼(・オーダー)を行う事にした。


 討伐依頼とは、近場のダイバー達に報酬を用意して来てもらう方法だ。

 ターゲットを倒したダイバーには、ダンジョン側が用意した報酬を進呈する。

 ※原則として、イベントの様に特別な入場料は取らない。


 まずは、協会サイトに『緊急【 討 伐 依 頼 】ハンター求む! 魔人種『バーメアス』発生!! 討伐者には、当D&M一ヶ月フリーパスを進呈します! ※御本人様のみ』

 かなり魅力的な報酬だと思う。これで来てくれるといいのだが……。

 俺はサイトを更新した。


 次に、花さんへメッセージを送った。

「ごめんね、魔人種のバーメアスってモンスの事、何か知ってる?」

 すぐに返事があった。

『バーメアスが発生したのですか!? 早く倒さないと駄目です! 魔人種は核を破壊しない限り倒せません、核は体内を移動し、非常に手強い相手だと聞きます。私もすぐに行きます』

 あぁ! そんな、悪いことしたなぁ……。

 でも、来てくれるなら心強い!

「すみません、助かります! 後で埋め合わせしますから!」


 俺はそう返事を送って、デバイスを見る。

 ちょうど、バーメアスがバルプーニの首をちぎっていた……。

中編へ続きます。


※バーメアス26・27話参照。

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