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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第三部

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希少種が発生しました。

 朝。目覚めてすぐにスマホを見た。

 昨日はすぐに寝てしまったからなぁ……。

「ふぁっ!?」

 SNSのフォロワー数を見て驚く。

 夜中の間に、何があったんだ……?

 

 俺は早速呟いてみた。

『フォ、フォロワーさんが増えてる!』

 しばらくフォロワー60人という数字を見つめた後、カーテンを開けて背伸びをした。

 うーん、用意するかなぁ。


 軽くシャワーを浴びて、着替えを済ませる。

 おにぎりを握る前にSNSで呟いた。

『おにぎり握るなう、D&M10時からで~す!』

 さりげなく店の宣伝も入れてっと……。

 昨日まではフォロワーさんが一人もいない状態で、独り言状態だったが、今の俺には、60人ものフォロワーさんがいる! そう考えると、テンション上がるなぁ。

 

 用意を済ませると、俺はダンジョンへ向かう。

 口笛を吹きながらフェンスを開けて、カウンター岩に荷物を置く。

 タブレットを手に取り、フロアのチェックを始めた。


「ちょ!! ケルロスが……!!」

 地下十六階に寝ているケルロス、いや、ケルベロスと言っても良いのだろうか?

 少し小さくなった気がするが、頭が三つになっている!

 あれ? ここからまた、大きくなっていくんだっけ?

 ちょっと、これは花さんに訊いたほうが良さそうだな……。


 俺は花さんにメッセージを送った。

『おはよう! ごめん、ちょっと質問なんだけど、これってケルベロスになったってことかな?』

 デバイスの画面を写真に撮って添付。

 よし、後は返事待ちだ。


 メッセージを送った後、開店準備を始める。

 ガチャの補充や、染め物の準備、掃き掃除などを終わらせて、丁度開店時間となった。

「ふぅ……」

『開店しました、ご来店お待ちしております!』

 カウンター岩で、麦茶を飲んでいると矢鱈さんがやって来た。


「ジョーンくん、おはよう!」

「おはようございます!」

 今日も白い歯を輝かせて微笑む。

「昨日はありがとうね、まさか来てくれるとは思わなかったよ」

「いえいえ、あの本めっちゃ面白いですよ! 僕も海外ダンジョン行ってみたいです、ちょっと怖いですけど……」

 俺は興奮気味に感想を伝えた。


「ホント? ありがとう! あ、そうそう、俺、引っ越しする事になって」

 矢鱈さんは特に表情を変えずに言った。

「……え!?」

「次は九州に行こうと思ってさ」

「そ、そうなんですか……」

 俺が呆然としていると

「ちょ、そんな、二度と会えないわけじゃないから」と笑いながら言う。

「は、はい……」

 それはわかっているけど、やっぱり寂しいよな。


「ジョーンくんとはもう友達だし、僕は仕事で日本中飛び回ってるから、またすぐに顔出すって」

 そう言って矢鱈さんが親指を立てた。

「わ、わかりました! いつ行かれるんですか?」

「うん、これから」

「ブーーーーーーーーーッ!!」

 思わず麦茶を噴き出す!


「す、すみません! これからって……今ってことです?」

 俺はこぼれた麦茶を拭きながら訊く。

「そうそう、もう行かないと、下に車待たせてあるから」

「え、もう……? 突然すぎじゃないですか?」

「ははは、このぐらいが僕には丁度良くてね」

 思わず顔を見合わせて、吹き出してしまった。

「ふふ、はははは!」


 矢鱈さんらしいと言えば矢鱈さんらしいな。

 浮世離れしていると言うか、普通の人とはギアが違うと言うか。

「じゃ、ジョーンくんまたね、元気で」

「はい、矢鱈さんも、お元気で。待ってますね!」

 最後までシュッとしてるなぁと俺は感心しながら、矢鱈さんを見送った。

 少し寂しくなるけど、また来てくれるみたいだし、俺にはフォロワーさんもいるし。

 よ~し、頑張るぞ~!


 程なくして、花さんから返信が届いた。

『おめでとうございます! ちょっと驚きました、これはケルベロスですが『ベビーベロス』と言うとっても珍しい種ですよ! 小さいですが、上位種です!』

 ベビーベロス!? 初めて聞く名前だな……。

 俺はスマホで検索してみる。Wikiがヒット。


 【ベビーベロス】

 ・ケルベロスの変異種。特徴は身体が成体のケルベロスの半分ほどの大きさであり、個体数が極端に少ない。可愛らしい見た目ではあるが、攻撃的な性格と言われている。


 こ、これはもしかして、かなりラッキーなのではっ!?


 俺は花さんに返事を送る。

『いやぁ、花さんのアドバイスのお蔭だよ! 朝早くにごめんね、ありがとう!』

 すぐに返事が届く。

『とんでもないです、では頑張ってください!』

 いい子だなぁ、俺はしみじみと思いながらタブレットでベビーベロスを見た。

 確かに小さい。

 三つの頭がそれぞれに何かをクンクンと嗅いでいて、まるで犬のようだ。

 とても攻撃的には見えないけど……。


 とにかく、すぐに告知をしておこう。

 俺は協会サイトに『ケルベロスのレア種、ベビーベロス爆誕!!』と告知文を入れた。

 かなりレアみたいだし、お客さん来てくれるといいなぁ。


 と、そこに紅小谷からメッセージが届いた。

『ベビーベロスが発生したのね~、おめでとう』

「早いね! そうなんだよ、ちょっと可愛らしい感じw」

『後で写真送ってよ』

「わかった。あ、矢鱈さん九州に行くって。さっき来てもう行っちゃったよ」

『え? ありがとう連絡してみるわ、じゃね』

 さすが紅小谷、早いなぁ。

 常に公式をチェックしているんんだろうか?


 スマホを眺めていると豪田さんと森保さんがやって来た。

「おっす店長! 見たぜ、SNS!」

「私もフォローしちゃった」

「え? ホントですか!! ありがとうございます!」

 俺は麦茶を差し出す。


「まあ、今日はベビーベロス? っていうの見に来たんだよ」

 豪田さんが満面の笑みを浮かべている。

「あ、ああ、見てくださったんですね? なんか希少種らしくて」

「豪田くんは犬派だからねー」

 森保さんが覗き込むように豪田さんを見た。

「べ、別にそういうわけじゃないけどな」

 少し顔を赤くして、豪田さんが頬を掻いた。

「へぇ、犬派なんですね」

「ど、どっちかと言えばの話だからな? じゃあ店長行ってくるわ」

「じゃあねー」

「あ、はい。お気をつけて」


 二人を見送った後、立て続けにお客さんが来店する。

「いらっしゃいませー」

 聞くと、やはりベビーベロス狙いだと言っていた。

 早くも集客効果があるとは、これはエースの予感!


 順調に客足が続く。

 染め物も今日は意外と注文が多いなぁ。

 午前中は、カウンター岩と染め物の場所を行き来しながら、あっという間に時間が過ぎる。

「ガチャの補充をしないと……」

 予備のカプセルを補充して、カウンター岩で珈琲を飲んでいるとスマホが鳴った。


 見たことのない番号だ。誰だろう?

「もしもし……」

『あ、D&Mさんでしょうか?』

「はい、そうですけど」

『私、月刊GOダンジョンの小日向(こひなた)と言いますが、今お時間大丈夫ですか?』

 げ、月刊GOダンジョン!?

「は、は、はい! だ、大丈夫です!!」

『ええと、D&Mさんのサイトを拝見しまして、ベビーベロスが発生したと言う紹介を見たのですが、こちらを取材させて貰えないかなと思いまして』

「しゅ、取材ですか!!!」

『どうでしょう、もちろん謝礼はお支払い致しますので』

「も、もちろんです!! お願いします!」

『ありがとうございます。では、都合の良いお時間をお伺いしてもいいですか』

 ヤバい! めっちゃ手に汗が!

 汗を拭いながら

「えっと、開店前か、閉店後ならいつでも!」と答える。

『じゃあ、閉店後によろしいですか?』

「はい、大丈夫です!」

『では明日の閉店後に、取材は30分程度で終わりますので。私、小日向がお伺いします、宜しくお願いします』

「はい、ありがとうございます! お待ちしております!」


 て、手が震えとる……。

 お、俺が、あの月刊GOダンジョンの取材を受ける日が来るなんて。

 ダンジョン沼時代からの愛読書であり、俺のバイブル。

 ああ、この感動をフォロワーさんに伝えたいが……。

 取材前だから言っちゃ駄目だよなぁ、明日、小日向さんに訊いてみよう。うん。

 うわー、言いたい、ぐぅーー。

 あ、そうだ、ファンとしては、電子書籍版も出して欲しいと伝えなければ。

 あー、そわそわしちゃうなぁ。

 それとなく呟いてみようかな。雑誌の紹介ぐらいなら良いよね?

『僕の愛読書、月刊GOダンジョン。街角モンスのコラム、おすすめです!』

 ふふふ……、これで実際にD&Mの記事が載ったら、みんな驚くかな?

 

 俺はニヤニヤと妄想しながら珈琲に口をつける。

 お! お客さんだ。

「いらっしゃいませー!」

 所持DP   1,801,732

 来客  86人   43,000

 染色  16回    4,000

 特注   2点    1,800

 石鹸  11個    1,100

 ガチャ 29回    2,900

―――――――――――――――――

        1,854,532

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