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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第三部

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一週間が経ちました。

 ――イベント当日、地下十三階。


 3体の水蜘蛛が扇状に並び、その後ろには2体の土蜘蛛が、背の禍々しい模様を見せて岩壁に張り付いている。池の周りには数十名のダイバー達が武器を構え、フロアは一触即発の空気に包まれていた。


 イベントには、絵鳩&蒔田コンビ、豪田さんと森保さんの二人、さらには、山田くんやギーザス丸井くんも駆けつけていた。一見さんや、レイドの時に見覚えのあるお客さんも来てくれて、客入りは上々である。


「常連さんも結構来てくれてるね」

 俺はデバイス本体を覗きながら、花さんに言った。

「はい、良かったです。ワクワクしますね!」

 タブレットの方で、動向を見守る花さん。


 ダイバーの動向を見るのは個人情報保護法で禁止されているのだが、協会に問い合わせるとIDの個人情報を見ないのであれば、管理者監督の下でビューの確認ぐらいは問題ないとの返答があったのだ。


 お蔭で、イベントの様子を花さんに見せてあげられる。

 さすがに、アイデアを出したイベントが見られないのは可哀想だし。


「お、出た出た、メガ牛鬼砲」

「狙ってますね」



 ――十三階、イベントフロア。


 絵鳩が池の周りを走りながら小さな茂みに隠れる。

 後ろの蒔田に、まるでサバイバルゲームのような手信号を送った。

 すかさず蒔田がそれに手信号で応え、一つ後ろの茂みに移動。

 周りでは、水蜘蛛の産んだ子蜘蛛とダイバー達が乱戦状態にあった。


 絵鳩は茂みから、ひょいと顔を出してキョロキョロと見回した後、蒔田に合図する。

 さささと蒔田が絵鳩と合流し、二人で茂みに隠れた。

「まっきーどうする? 水蜘蛛の方はあの人達に任せるとして、やっぱ土蜘蛛狙う?」

『うー、早くぶっ放したいけど……。もう少し近づかないと射程が』

「じゃあ、いつもの感じで行く?」

 絵鳩が薄い青色のフェザーメイルの羽根を指で触る。

『いいけど?』と蒔田がニヤリと笑った。


 次の瞬間――絵鳩が茂みから飛び出し駆ける。

 その後を、薄いピンク色のフェザーメイルをなびかせて蒔田が追った。


「邪魔!」


 絵鳩が白雲で子蜘蛛を斬り捨てた。

 次々と子蜘蛛が襲ってくるが、二人は上手く躱しながら岩壁の傍まで走った。

「まっきー!」

 絵鳩が叫ぶと同時に、蒔田がメガ牛鬼砲を構える。

『ウシオニス粒子装填、リミッター解除! 蒔田打ちまーっす!』

 メガ牛鬼砲から火花が散り、一筋の光が土蜘蛛を貫通!!

 ゴッ! という詰まった音が響き、岩壁からパラパラと石が剥がれ落ちた。


「お、おい! なんだありゃ!?」

 周囲のダイバー達が動揺する。

「あ、あの子達……」

 親水蜘蛛の相手をしながら森保が呟く。


 ――ぽっかりと胴体に穴のあいた土蜘蛛が霧散する。

「やった!」

『うーっデストロイ!』

 二人は同時に叫び、拳を合わせると、さささと茂みに身を隠した。

「とりあえず一匹殺ったけど、どうする?」

 蒔田はメガ牛鬼砲をぽんぽんと叩いた。

『この子の改良点はわかったからもう大丈夫。後は子蜘蛛倒してDP稼ぐ感じ?』

「おけ、じゃあ少し池から離れよっか」

『うん』

 二人は身を低くして、その場を離れた。



 ――カウンター岩。

「ジョーンさん、そろそろ土蜘蛛の投入をした方がいいと思います」

「あ、うん。了解」

 俺はデバイスを操作して、土蜘蛛を投入する。

「いやぁ、しかし、いい感じに乱戦だなぁ」

「みんな頑張ってますねぇ」

 段々と参加人数も増えてきた。

 これはいいぞぉ!


 

 ――十三階、イベントフロア。


 フロアは熱気に包まれていた。

「うぉおお!!」

 獣神の斧を振り降ろし、豪田が土蜘蛛を叩き潰す。

 少し離れた場所で、森保が駆け抜けると、次々に子蜘蛛達が霧散していく。

 

 また、池の手前ではギーザス丸井が

「メダル! メダル出ろ!」と呪文のように呟き子蜘蛛を潰している。

 山田は他のダイバーと協力して水蜘蛛と交戦中だった。


「そろそろ上がる?」と絵鳩。

『うん、もう十分』

 蒔田がボーンクレセントを池の水で洗いながら頷く。

 二人は他のダイバー達に先に抜けますと合図をして、一階へ戻った。



 ――カウンター岩。


 絵鳩と蒔田コンビが戻って来た。

「お疲れ様でーす」

「お………す」

 俺は二人に

「お疲れさま、活躍してたねぇ」と笑いかけた。

 武器をカウンター岩に置きながら絵鳩が

「楽しかったよね」と蒔田に言う。

「……た……、……たし」

 花さんが、蒔田に

「え! まだ改良するところがあるんですか?」と訊く。

 会話が成立している。俺だけ聞こえないのか?

 必死で聞こうとするが、やはり俺には聞こえない。

 そんな俺を気遣ってか、花さんが

「メガ牛鬼砲のテストも兼ねてたそうですよ」と教えてくれる。

「へぇ、そうなのかぁー」

 すると絵鳩が蒔田に言った。

「射程が問題なんだよね」

「……、……から………、そこを……。めっちゃ……で、……の……する。問………だけど……す。」

「え!? そういう仕組みなんですか!?」

「え、なになに?」

 めっちゃ気になるけど!

 俺がそわそわしていると花さんが

「筒の中にドラゴンフライの喉骨を粉末に……後で説明しますね」と微笑んだ。

「あ、うん……」

 絵鳩と蒔田は

「じゃあ、また来ますね」と言って、満足そうに帰って行った。

「ありがとうございました」


 二人が帰ってすぐに

「で、どういう仕組みだったの?」と花さんに訊いた。

「えっと、筒の中の先端の部分に溝が彫ってあって、粉末を入れるとそこに粉末が残りますよね? そこに牛鬼の産毛を加工して作った弾が高速で通り抜けると、摩擦で発火してその勢いで弾が加速するそうです」

「でも、口とか火傷しないのかな?」

「なんか、吹く部分は押し扉みたいな構造らしいです」

「へぇ~、射程がなんとか言ってたけど?」

「溝の形状を変えるとか言ってましたけど……」

「そ、そうなんだ……」

 お、恐ろしい才能だ。文明が滅んでも生きていけるタイプだな……。


「おう、店長おつかれさん!」

「豪田さん、お疲れ様です! あ、森保さんも」

「お疲れ」

「お疲れ様でした」

 俺は二人の装備を受け取りながら

「どうでした? 蜘蛛は?」と訊いた。

「いやぁ、思ったよりも手強い。それに足場が悪いだろ? 大変だったよ」

「でも楽しかったわよ」

 良かった~! 楽しんで貰えたようだ。

「ありがとうございます! イベントが終わっても、当分は復活した蜘蛛が出るはずなんで、宜しくお願いします」

「ああ、もちろん狙いに来るぜ」

「十六階も何か変わってたね?」

「あ! 見て頂けました?」

「ええ、少しだけだけど」

「奥の方も変わってるんで、良かったらまた覗いてみて下さい」

「わかった、見てみるわね。花ちゃんまたね」

 そう微笑んで森保さんが先に外に出た。

「じゃあ店長、また来るぜ」

 豪田さんは森保さんの後を追うように駆けて行った。

 

「ありがとうございました!」


 二人を見送った後、俺はデバイスでフロアを確認する。

「大分、落ち着いてきたかな」

「そろそろ投入は控えた方がいいですね」

「うん、後は成り行きだね」


 閉店時間前になって、丸井くんが戻っていない事に気付く。

「あれ、山田くんって帰ったよね?」

「はい、かなり前に帰られましたけど」

「だよねぇ」

 俺はデバイスで確認すると、丸井くんがひたすら子蜘蛛と戦っていた。

「さすがに、ちょっと止めてきた方が良いかな……?」

「そうですね、もう丸井さんだけですし、ちょっと身体が心配です」

「わかった、俺ちょっと見てくるね。誰か来たら、悪いけどもう閉店って事でよろしく」

「わかりました」


 俺はダイバースーツを装備して、ルシールを片手にダンジョンへ向かった。

 駆け足で十三階へ行くと、丸井くんを見つける。

「丸井くん! 大丈夫? そろそろウチも終わりだから……」

「メダル……メダルでろ……メダル……」

 丸井くんは何かに取り憑かれた様に、大金槌を振っている。

「丸井くん! まーるーいーくん!」

「あ、ああ! ジョーンさん!」

 やっと、丸井くんがこちらに顔を向けた。

「ちょ、大丈夫!? 目の下に凄いクマが出来てるよ!?」

「あー、ちょっと夢中になってて……ははは」

「そ、そっか、ウチもう閉店だからさ、そろそろ上がろうよ」

「あ、もうそんな時間! すみません、わかりました」

 一階へ戻りながら丸井くんに

「今日はどうだった?」と訊く。

「いやー、全然ダメでした……。やっぱりアンデッド以外は落ちにくいですね」

 肩を落とし、呟くように答える。

「ま、まあ、元気だして! ごはんも食べてないでしょ?」

「あ、そういえば忘れてました……」

 苦笑する丸井くんに

「良かったら、ウチでうどんでも食っていきなよ?」と誘ってみる。

「いやいや、悪いですから。それにこの後トークライブもあるので、すみません」

「ライブ!? いいよいいよ、ウチは気にしないでいいけど、大丈夫なの?」

 丸井くんは青白い顔で

「大丈夫っす!」と力強く親指を立てた。

 ホントに大丈夫かな……。


 カウンター岩に着き、花さんが丸井くんの顔を見て驚く。

「大丈夫ですか! 顔色が悪いですけど……」

 丸井くんは照れながら

「だ、大丈夫です。移動はタクシーなので……ははは」と笑った。

 俺は丸井くんに麦茶を渡す。

「あんまり無茶しない方がいいよ」

「ありがとうございます、あー、生き返りますね」

 一気に麦茶を飲み干して

「ごちです。じゃあ、また寄らせてもらいます」と頭を下げた。

「あ、うん、気をつけてね、ライブ頑張って!」

「お気をつけて~」


 丸井くんを見送り、花さんが

「心配ですね」と呟く。

「うん……」

 最早、沼の水を供給する側に立っているといってもいいかも。

 頑張れ、ギーザス。


「さ、片付けようか」

「あ、はい」

 手際よく片付けをする花さんに

「今日は本当にありがとうね、花さんのアドバイスのお蔭だよ」と礼を言った。

「いえいえ、とんでもないです。楽しかったですねぇ」

「うん、皆も喜んでくれてたみたいだし……」


 今日のイベントは成功と言ってもいいだろう。うん。

 十三階は当分、蜘蛛たちをダイバーが狙いに来るだろうし、この調子でケルロスが成長すれば……。

 そうだ、ケルロスが成長した時のイベントも考えておかねばっ!

 ククク……忙しくなるぞぉ~。

【6日分】

 所持DP   1,520,082

 来客 528人  264,000

 染色  88回   22,000

 特注  21点   18,900

 石鹸  72個    7,200

 ガチャ299回   29,900

―――――――――――――――――

        1,862,082


【イベント】

 所持DP   1,862,082

 来客 177人   88,500

 染色  27回    6,750

 特注   7点    6,300

 石鹸  32個    3,200

 ガチャ 99回    9,900

 召喚      -175,000

―――――――――――――――――

        1,801,732

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