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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第三部

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57/214

新しいデバイスが届きました。

 ――最新型のデバイスが届いた。


 開店前。

 俺は花さんが見守る中、ダンボールを開けて、真新しいデバイスを取り出した。

「うわぁ~!! テンション上がるわ~!!」

「すごいですね!」

 花さんも目を輝かせている。


 ビニールに包まれたデバイス本体とタブレット。

 指紋一つ、ついていないタブレットの保護シートを剥がそうとすると

「ジョ、ジョーンさん、そういうタイプですか!?」

「え?」

 ペリペリペリ……。

「あーーー!!」

 花さんが叫ぶ。

「ご、ごめん、不味かった?」

「い、いえ、大丈夫です。大丈夫ですけど、何か勿体無い気がして……」

「そ、そうか……。ま、まあ、大事に使えば……ね?」

「は、はい……」

 気不味くなる前に

「さ、さて、本体の交換を」と俺は古いデバイスを取り外した。

 送られてきたダンボールに古いデバイスを入れる。

 これは、再度集荷が来るので、その時に回収するシステム!


 新しい本体をセットして、デバイスの設定を行う。

 タブレットの電源を入れると、ダンジョン協会のロゴが浮かび、基本画面になった。

「えーと、まずは同期か」

 説明書を読みながら、本体とタブレットの同期設定をする。

 本体にダンジョン名などが反映しているのを確認。

「よし、大丈夫だな」

 次にタブレットから自動接続を選んで……。

「お、簡単だなぁ」

 直ぐに接続が完了しましたとタブレット画面に表示された。


「なんかスマホみたいですね」

 覗き込む花さんに

「うん、楽でいいよねぇ」と答える。


 では、早速テストを。

 まず、メンテナンスモードから、順に試していく。

 俺はデバイスの画面をタップしてモードを切り替えた。

 ビューでモンスの状態を確認すると、皆大人しく休眠状態になる。

「大丈夫みたいですね」

「うん、じゃあプレOPENにしてみようか」

 プレOPENは最新型に追加された機能で、協会サイトにはCLOSE状態と表示される。

 試し運転みたいなものだ。

「マップも綺麗だし、ビューもかなり鮮明だね」

「処理も早い気がします」

 モンス達が動き始め、問題なく動作している。

「一応、CLOSEも」

 これも、すんなりと機能して設置はものの数分で終わってしまった。

「あっけないなぁ」

「タブレットの操作も簡単ですし、便利ですよね」

 花さんがタブレットを見ながら言った。

「うん、京都で見た時に凄いって思ったんだよね~。あ、花さんにもお土産あるから」

「え、いいんですか?」

「もちろん、大した物じゃないけどごめんね」

 俺はお菓子の入った紙袋を渡す。

「ありがとうございます、気を使わせてしまってすみません」

「大丈夫、大丈夫、気にしないで」

 それから、俺を客と見立ててデバイスの最終確認をした後、ダンジョンをOPENさせた。


「あ、ジョーンさん。D事案って大変でしたね」

「うん、ラキモンとかおかしくなっちゃったかと思って焦ったよ」

「え? ラキたんが……」

 ラ、ラキたん……? ここは敢えて触れないでおこう。

「そうそう、もう大丈夫だけど」

「可哀想に……」

 花さんは辛そうな顔で呟いた。

「まあ、レイドがあったのは経営的には助かったけどね」


 俺はそう言いながらデバイスを見る。

 十六階は、ケルロスがぐるぐるとフロアを徘徊していて、バブーンが避けるように移動していた。

 うーん、大きな岩が何個か増えてるし、洞窟タイプになりそうだな。

 バババットも何体か飛んでいて、順調な感じがする。


 そうしている間に、最初のお客さんがやって来た。

「こんにちはー」

「いらっしゃいませ」

 二人で元気よく挨拶をして、花さんがタブレットを差し出した。

「おぉ! 何ですかこれ!」 

「ふふふ……最新型ですよ」

「へぇ! これは良いですねぇ!」

 男が興奮したように言う。

「そうでしょう、そうでしょう」

 俺はうんうんと頷き、IDを受け取った。

「あー、ここで装備が選べるんですね?」

「そうです、ここをタップして選んで頂ければ」と花さんがサポートする。

 無事、受付を終えて

「これはかなりスピードアップですね」と嬉しそうに笑った。


 興奮冷めやらぬ間に次々とダイバーが来店し、いつもなら慌ただしくなるのだが、タブレットのお蔭でスムーズに接客ができた。

「これは、思ったより快適だよね」

「はい、工程が少なくて済みますし」


 そこに、豪田さんと森保さんが来店する。

「あー、どうも! こんにちは」

「いらっしゃいませ」

 豪田さんは汗を拭きながら

「いやぁ、いつになったら涼しくなるんだか」と苦笑した。

「ホントですよねぇ」

 森保さんが

「あら、このタブレットは?」と訊く。

 花さんがニヤリと笑って

「これ、最新型なんですよ、ほら、ここで選んで頂けるんです」とタブレットを見せる。

「おぉ! これ凄いな!」

「へぇ、便利ね」

 二人が感心したように頷く。


「しかし店長、大変だったな? もう大丈夫なのか?」

「はい、もう大丈夫です。デバイスも新しくなりましたし、イベントも近いうちにやりますから」

「おぉ、それは楽しみだな」

 豪田さんはそう言って、森保さんを見る。

「何? 一緒に来る?」

 森保さんが、からかうように言うと、豪田さんが顔を真赤にした。

「ま、まあ、なんだ、その……。さ、とにかく行こうぜ」

 恥ずかしかったのか豪田さんはさっさとダンジョンへ向かった。

「ふふふ、可愛いでしょ?」

 森保さんが花さんに言った。

「は、はい……」

 可愛いかどうかは別として、豪田さんって、なんてわかりやすい人なんだろう……。


 二人がダンジョンに入って、しばらくすると花さんが

「ジョーンさん、ちょっといいですか?」と尋ねた。

「ん? どうしたの?」

「実は、十六階のケルロスの事なんですが……」

「え?」

 花さんが言いにくそうにして

「あの、成長が遅いですよね?」と訊く。

「あ、ああ。うーん、元々遅いタイプだとは思うけど……どうかした?」

「迷惑だったらすみません、ただ、熱が足りてないのかなって……」

「熱?」


 そういえばモンス診断士を目指してるんだよな……。

「あの、ケルロスが発生するフロアって普通は溶岩があるんです。教科書にもそう書いてあって、水の代わりに溶岩を舐めるんですけど……」

「そ、そうなの!?」

 し、知らなかった……。

「はい、なので、もし良ければ溶岩を設置してあげれば喜ぶんじゃないかなって」

「な、なるほど!」

「なんか生意気言ってすみません」

 花さんがペコリと頭を下げる。


「いやいや、とんでもない! 助かるよ! めっちゃ助かる!」

 俺は花さんに力の限り訴え

「あの、花さん、他に気になる事とか……ない?」と尋ねた。

「そうですねぇ、十六階ですが……ちょっとマップ見ても良いですか?」

「うん、どうぞどうぞ」

 俺はタブレットを渡す。

 花さんはマップを見ながら

「この感じだと洞窟タイプですが、私なら半分に区切って、手前を迷宮タイプ、残りを洞窟タイプにして、溶岩はこの辺りに、それでここに何本か木を立てます。あと、ここに低位アンデッド数体と、奥にスライム、ジャッカル、デスワーム辺りを配置すればいいかなぁ~って」

 す、すげぇ……。

 マジで本物だ、この人。


「で、でも、この雑誌に、構成比が書いてあるんだけど、こういうのは気にしなくて良いのかな?」

 俺は月刊GOダンジョンを見せた。

 花さんは雑誌を食い入るように見て

「あー、これは船木メソッドを軸に考えてあるんですね。これも以前までは主流でしたけど、今はコアモンス・アレンジメントが主流です」

「こ、こあモンス……アレンジメント?」

「はい、フロアのコア、核となるモンスを決めて、そのモンスに最適な環境になるようにフロアタイプの構築、及び構成モンスのバランスを決める方法です」

 も、もしかして、花さんって、凄い人……?

「な、なるほど、もし良かったら、相談に乗ってもらっても良いかな?」

 花さんの目が大きく開く。

「え! いいんですか! 嬉しい、私も勉強になりますし、ぜひお願いします!」

「うん、こちらこそ頼りにしてます」


 その日、空いた時間を利用して、花さんにアドバイスをもらいながら計画書を作成した。

 ――あとは実行するのみだ。

 俺はピカピカのタブレットを見つめた。

 所持DP  1,490,732

 来客  77人  38,500

 染色  10回   2,500

 特注   1点     900

 石鹸  13個   1,300

 ガチャ 38回   3,800

――――――――――――――――

       1,537,732

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