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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第三部

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49/214

トークライブに行きました。

 ダンジョンの営業が終わり、後片付けをしていると紅小谷が顔を見せた。

「お疲れさまー」

「あ、お疲れー」

「お疲れ様です」

 紅小谷はカウンター岩の前でウロウロしている。


「もうちょっとで終わるから」

 俺が言うと紅小谷は

「そういえば、花さんは行けるの?」と尋ねた。

 花さんが残念そうに俯く。


「すみません、今日は無理みたいで……」

「そっか、残念ねぇ」

「急だったし、仕方ないよ」

「そうよ、急すぎんのよ。ったく」

「ご、ごめん……」

 花さんがくすっと笑った。


 片付けが終わり、俺達はダンジョンを出て花さんを見送る。

「じゃあ、すみません。お疲れさまでした」

「うん、お疲れさま!」

「じゃーね」


 トークライブは、街から少し外れた場所で行われる。

 倉庫を改装した、お洒落なBARで五十人ぐらいが入れる広さだ。

「ここかな」

 入口の立て看板には

『メダルに目がない! MEDAL(メダ) NIGHT(ナイ) 出演:ギーザス丸井☓れんじろう☓古森収集癖』

 と書かれてあった。

「ギ、ギーザス……」

 呆然と看板を見つめていると

「丸井くんって学生じゃなかったの?」と紅小谷。

「そ、そうなんだけど、最近講演とかもやってるみたいだね」

「へぇ~」

 俺達は店内に入った。

 丸井くんに何があったんだろう……。


 中は間接照明がメインで少し薄暗く落ち着いた雰囲気。

 大きなカウンターの前に、テーブルと椅子が並べてある。

 奥にイベントステージがあり、名札の置かれた長テーブルが置かれていた。

「綺麗なとこだなー」

 俺がキョロキョロと店内を見回していると

「ちょっとジョンジョン、いつまで見てんの」と紅小谷に背中を押される。


 カウンターに行き、飲み物を頼む。

「紅小谷は?」

「私はスプモーニで」

「へ? バルプーニ?」

 紅小谷は大きく溜息をつき、自分で注文した。

「麦茶はないよなぁ……、俺はハイサワーをお願いします」

 飲み物を受け取り、テーブル席に座ると紅小谷が

「あんたバカなの? どんだけ麦茶好きなのよ?」と呆れ顔になる。

「ははは、ごめんごめん」

 とりあえず二人で乾杯してライブの開演を待つ事にした。


 しばらくして、ステージに出演者が上がった。

「おっ、丸井くんだ! ……あれ?」

「どうしたの?」

 丸井くんの髪が伸びてる! それにお洒落な洋服も着てるし!

「い、いや、何か変わったなぁって」

「そうなの、普通じゃない?」

「俺が知ってる丸井くんは丸坊主で、素朴な青年だったんだけど……」

「こういう場だからお洒落してるだけでしょ? 始まるわよ」

「あ、うん」


 壇上に司会者が上がりお辞儀をした。

 店内には、いつの間にか大勢のお客さんがいて驚く。

『本日はメダナイにお集まり頂きありがとうございます! では早速、本日のメンバーをご紹介させて頂きます、こちら、ギーザス丸井さん!』


 丸井くんがマイクに向かって口を開いた。

「どうも、ギーザス丸井です」

 皆が拍手をする。


『続いて、せとうちラジオでもお馴染み、れんじろうさん!』

「どもども~、クリスペ●ラーでーす。あ、違うかぁ~」

 マイクの微かなノイズが響き、皆の息が止まった。

 バーテンがグラスを置くカチャッという音で、皆が再び息を吹き返す。


『は、はい! 続きまして西日本を代表するコレクターでもあります古森(こもり)収集癖さん!』

「こんばんは、古森です」

『それではメダナイ、始めたいと思います! 最初のお題はレア度です』


れ「まあ、レア度と言ってもいっぱいありますから~、ギーザスさんはこの前見つけたでしょ?」


ギ「ええ、丸井メダルですよね? 何か自分で言うのは恥ずかしいですが」


古「いいなぁ~、私もメダルに名前付けたいですよ~」


ギ「ちなみに、今のメダル界ではスケルトンやゴブリン、ワームなど色んな種類の模様にランクみたいなものは存在しないじゃないですか、その辺りはどう思われてます?」


れ「う~ん、個人的にはスケルトン、好きやねぇ。ロックやろ?」


古「私はサキュパスですね、これは譲れません。ランク付けに関しては、日本人の性というか、もう昔からそうじゃないですか、音楽にしろ、小説にしろ、何かしらのランキングに皆依存してる」


ギ「それはどうでしょう? 一概には言えないと思いますが、ランキングはあくまで指標のひとつであって、中にはあえてランキングを避ける人もいるじゃないですか?」


古「まあいますね、そういう人(笑) しかし、そういう人って一部のマイノリティでしょう、マジョリティに属さないって事を目的にしているというか」


ギ「そういう点でいえば、古森さんはマイノリティですよね?(笑)」


れ「うんうん、絶対そうやわ」


古「それは……そうかも知れない(笑)」


ギ「マイノリティの集団の中でランキングを作るって事はありえますか?」


古「それは、十分にありえるでしょう。でも、そうなってくると、いずれはマジョリティ化してしまうでしょうね」


ギ「あ~、なるほど。ランキングがマイノリティのマジョリティ化を促すというわけですか」


古「ランキングを通して、思想の統一化みたいなものが形成されていくんじゃないかな」


れ「難しい話は置いといて、ギーザスさんが好きなメダルは?」


ギ「うーん、ボーンナイトのNo.155とか、ウィルオウィスプのNo.22とか好きですね」


古「かぁ~、渋いところ突くねぇ~」


ギ「そうですか?(笑)」


 ここで司会が口を挟んだ。

『ではこの辺で、次のお題にいってみましょう。現在世界一の保有枚数を誇るフェルドン氏ですが、先日SNSでこんな発言をされたんですねー。こちらです』

 司会者がボードを出す。

『ダンジョンの一室に住む事にした。だって、いつでもメダルが見れるだろ?』


れ「これはもうアカンのとちゃうの?(笑)」


古「理想形ではありますよね(笑)でも、個人でこれを出来る人なんて、そうそういないでしょ~」


ギ「資産規模にもよりますね。うーん、これを個人でやるとなると、例えば協力してくれるダンジョンを探して、一室をレンタルするわけですよね? ダンジョンは地形変化がありますから、そういったリスクも考えると無理があるのかなぁと思います」


れ「だいたい、ダンジョンに住むっちゅうのがね(笑)」


古「私は住めるものなら住んでみたいですが」


ギ「低層ダンジョンなら……いや、無理でしょう(笑)」


 紅小谷が小声で言った。

「ねぇ、この人たち何言ってるの?」

「しーっ」


 それから一時間ほどトークライブが続き、イベントを終えたギーザス丸井がテーブルにやって来た。

「ジョーンさん、来てくれたんですね。ありがとうございます!」

「いやいや。凄いよ丸井くん! なんか凄かった!」

「そ、そうですか、ありがとうございます」

「あ、紅小谷の事知ってるかな? さんダの管理人だよ」


 丸井くんは、急に目を大きく開いて

「え? す、凄い! は、はじめまして、丸井です」と言った。

「紅小谷です、よろしくー」

「しかし、丸井くんが有名人になっちゃうなんてなぁ」

「いや、ジョーンさん大袈裟ですよ」

 丸井が照れ笑いを浮かべた。


「コレクターって何人ぐらいいるの?」

「うーん、全国で二千人ぐらいですかねぇ」

 紅小谷が「意外と少なくない?」と言うと、丸井くんが答えた。

「ブームで一時的なコレクターはかなり増えたと思いますが、昔から集めているのはそのぐらいだと聞きました」

「へー」

 

 その後、丸井くんと海外コレクターの話や、東京のダンジョン話をして、紅小谷と店を出た。

「今日はありがとう」

「別にいいわよ、取材にはなったし」


 俺はふと思ったことを訊いてみた。

「ねぇ、紅小谷は、なんでさんダをやろうと思ったの?」

「何かいきなりね? そうね、やっぱダンジョンが好きだからかな。好きじゃなきゃこんな面倒なことやってらんないしね」

 紅小谷が前を向いて言った。

 大きなくりっとした瞳に、夜景がキラキラと反射している。


 そうか、紅小谷のダンジョン愛は本物だ!

 ならば我らは同士! 共に深淵を覗こうぞ!


「何よ! ジロジロ見ないでくれる?」と紅小谷が言う。


「悪い悪い、そうだよなー、やっぱダンジョンっていいよね?」

「ったく、気持ち悪いこと言わないでよねっ」

 歩く足を一段と早める紅小谷。


「ちょっと待ってよ」

 俺が小走りで追い掛けると

「ジョンジョンが遅いのよ」

 そう言って、紅小谷は笑った。

 所持DP    998,482

 来客 110人  55,000

 染色  17回   4,250

 特注   3点   2,400

 石鹸  20個   2,000

 ガチャ 61回   6,100

――――――――――――――――

       1,068,232

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