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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
叔父さんのダンジョン編

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同接

「しかし一位って、まいったね」


母さんっていっつも極端なんだよなぁ……。


「まあ、仕方ないですね。認めてくれただけありがたいですよ」

「そらそーやけど、おっちゃんも仕事しながらやと時間がなぁ……」

「ふふふ、私の出番ですね。私ならフレックスで対応できますよ」

 博士が自信たっぷりに言う。


「それを言うなら、僕もですが……とりあえず、ジョーンさんはD&Mもありますし、当面は僕と博士で反応見ながら企画動画をあげていくのが良いと思うんですよね」

「うん、俺はその辺は全然わかんないから、もう丸井くん頼みっていうか……」

 隣で叔父さんも頷いている。


「わかりました。じゃあ、ムシヒロで寝泊まりさせてもらっても?」

「ええよええよ、好きなだけ寝てもろて」

「叔父さん、ちゃんと蜜子さんにも言わなきゃ駄目だよ?」

「う、うん、わかっとるで。姉ちゃんに○されとうないもんな……」


「「……」」

叔父さんの言葉に皆が沈黙する。


「すごい迫力でしたよね……」と博士。


駐車場に着き、叔父さんが車のドアを開ける。


「どないする? 一回家とか帰るんなら送ってくで?」

「あ、このまますぐ作業入りたいんで、大丈夫です。ありがとうございます」

丸井くんが即答した。


「やる気満々やん……ほなら、これ鍵な。おっちゃんも毎日顔出すけん、いるもんあったら連絡してや」

「わかりました」

「タケオくん、運転気をつけるようにな」

博士が軽く手を上げる。


「ええ、博士もすんませんけど、よろしくお願いします。ほな、ジョーンくんもまた相談させてな」

「もちろんです、頑張りましょう!」


叔父さんはプッとクラクションを短く鳴らし、家に帰って行った。

車を見送った後、丸井くんが俺に頭を下げた。


「ジョーンさん、ありがとうございます」

「ちょ、やめてよ、俺は何もしてないし……」

「いえ、ジョーンさんと出会ってなかったら、このチャンスには巡り会えませんでした……」

「丸井くん……」


その時、博士が丸井くんの肩に手を乗せた。


「企画なんですが……出会って5秒で孵化、とかどうですかね?」


「「……」」



    *  *  *



翌朝、俺は久しぶりに早起きをしてダンジョンへ向かった。

朝のひんやりとした空気で、脳が覚醒していく。


丸井くんの影響を受け、俺もこのままじゃいけないと気持ちを新たにした。

最近はいろいろあったにせよ、新しいイベントをするでもなく、ルーティン作業になっていたと反省したのだ。


黒いゲートを抜け、ダンジョンの入り口にある岩カウンターにサコッシュを置く。

朝日に向かって深呼吸をして気合いを入れる。


「っし! やるかっ!」


箒を手に取り、掃き掃除をする。

入口周辺から下の駐車場までの獣道のゴミも拾っていく。


「一個のゴミが命取りっと……」


入口に戻って、上から見下ろし、綺麗になったことを確認。

さて、今日は少し模様替えをしてみるか……。


オープンしてからずっとこの入口だもんな。

ちょっと変わるだけでお客さんも新鮮に感じてくれるかも。


俺はタブレットデバイスを手に取り、壁材なんかを物色する。

今のD&Mの入口は、一階が洞窟タイプってこともあり、岩肌で統一されている。


大手のダンジョンなんかだと、フロアと受付の違いをはっきりさせるところもある。

好みだとは思うが、よりアトラクション感が増すような気も……。


「うーん……良し悪しだよなぁ」


岩カウンターの位置を変えるか?

いや、岩の色……?


季節的に今は春……春と言えば、桜か。

入学シーズン、新入生、新社会人……決算……。


それっぽいキーワードからヒントを探っていく。

ピンクの岩ってのも変だしなぁ……。


「ん? これは……⁉」


タブレットの画面には、モンススタチューが表示されている。

人気のあるモンスの石像やオブジェだ。


「へぇ、結構種類あんじゃん……これなら色つきでも悪くないかも……」


・リュゼヌルゴスの石像……6000DP

・ケットシーの石像……28000DP

・ラキモンの石像……300000DP

・バーメアスの石像……40000DP sale!!

……


メニューを選択すると色とサイズの指定もできる。

大体の基本色は揃ってるな……。


バーメアスがセール中か。

たしかに魅力的なDPだけど、こいつ嫌いなんだよなぁ……。

ここはやっぱり万人受けするラキモンか、それともリュゼヌルゴスか……。


入口に置くとなると……。

俺は頭の中で自分がお客さんになってシミュレーションしてみた。


はい、店に着きました、ここがD&Mかぁー。

うわー、狭いけど大丈夫かよー。

あっ! ラキモンの石像じゃん。へぇー。

『すみませーん、初めてなんすけど……』


――駄目、弱い。

やっぱ、ラキモンなんてメジャーすぎる。

出し惜しみなんてしてちゃ駄目なんだよな……。

大手じゃあるまいし、ウチみたいな零細は初っぱなから掴みにいかないと。

俺は再度、想像を巡らせる……。


はい、店に着きました、ここがD&Mかぁー。

うわー、狭いけど大丈夫かよー。

うおっ⁉ びっくりしたぁ、リュゼヌルゴスじゃん!

『すみませーん、初めてなんすけど……』


まあ、アリっちゃアリか……。

ただ、二回目どうなんだって気もするよなぁ……。

初回で印象与えてる分、二回目のハードル上がりそうだし……。


待てよ、そもそも石像を置くという発想が逃げてる気も……。

安易だよなぁ……。

工夫がないっていうか……。


――そもそも入口は普通でいいのでは?

やっぱ、フロアを充実させるべきだよな?


うーん、構成的には今がバランス良いっちゃ良いんだが……。


「はあ……」


俺はフロアマップを眺めながらため息をつく。

いくら眺めても良いアイデアは浮かんでこなかった。


「ま、焦っても仕方ないか。珈琲でも飲もっと……」


珈琲を淹れながら、ニコラスさんの『Dungeon City of the Dead』を思い出していた。


あれだけエンタメしてるのはさすがっていうか、すごいよなぁ……。

サブスクも魅力的だったが、ウチの規模だと宝の持ち腐れっていうか、今のオネイロスで十分だし……。


ブブブ……。


「ん?」


スマホが震える。丸井くんだった。


『お疲れ様です、テスト配信始めました。まずは一階の定点を流して反応見てます

 #ムシヒロ一階 ライブ 丸っとムシだらけ!チャンネル』


「へぇ、どれどれ……」


俺はスマホからタブレットにリンクを送り、協会サイトのダイブモーションを開く。

そこには、ムシヒロの一階が映し出されていた。


「……」


特に変わりはない。

草や木、あとは壁の叔父さんが手彫りした横穴がすこし見えている。

しばらく眺めてみるが、何が起きるわけでもなく、たまに草が揺れるくらいだった。


「大丈夫かな……」


楽しさがあまりわからないが……。

そのとき、サッと大きな虫が横切る。


「あぁっ⁉」


身を乗り出すが、もう虫はどこかに消えてしまった。

ちょっとテンションがあがっている。

うーん、なるほど……これは、何か作業中に流すのも良いかもしれない。


ふと、画面枠を見ると、同時接続数30,000人となっていた。

へぇ、三万人も見てんだ、ははは。


「ん?」


三万、人……?


俺は元の画面に戻し、珈琲を一口飲んだ。

落ち着け……何かの間違いかもしれない。


あれだ、こういう動画とかって、ユーザー数も多いっていうし……。

三万って数字は特に珍しくもないのかもしれない。


でも、三万人って……かなりの人数じゃないのか?


俺はスマホで検索してみる。

「ダイブモーション 接続数 普通 どれくらい」


『ダイブモーション接続数、初動がすべて⁉ 一週間で同接5000人も夢じゃない』


とりあえず一番上のリンクを踏んでみる。


――――――――――――――――――――――――――――――――

みなさん、同接取れてますかぁー?

ダイブモーション塾、塾長のやすおです!


さて、当塾では業界最大の難関と言われるダイブモーションの同時接続数アップに特化した情報をお届けしています!


しかも、当塾で公開している手法はすべて僕の実体験から得られた知見をもとにしているため、再現性がとんでもなく高いんです!


まあ正直、ここまでぶっちゃけてるのは僕くらいでして……笑

同業の方からは毎日のようにお叱りのメールをいただいております……。

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――――――――――――――――――――――――――――――――


「意味がわかんないな……」


とりあえず、この記事を読む限り5000人でそこそこすごいってことだよな?

じゃあ、いきなり三万人って……。


そうか、餅は餅屋だ――。ここは紅小谷に聞いてみよう。

俺は紅小谷に電話をかけることにした。

ありがとうございます!

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