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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
叔父さんのダンジョン編

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ムシヒロ一階

「よっこいせ……っと」


叔父さんが大きなベニヤ板を横にずらした。

むわっとするような湿った空気が流れてくる。


「うわー、まるで熱帯ですね」

「うん、でも雰囲気あるなぁ……」


叔父さんの後ろに続いて中に入る。

岩肌が続き、広めの洞窟といった雰囲気だ。


「この辺は、おっちゃんの作った檻とかあるとこやけん、危ない虫は出てこんから大丈夫や」


「檻?」

「なんか不穏なワードですけど……」


丸井くんが心配そうに眉を寄せる。


「ほらほら、ふたりとも見てんこれ! すごいやろ⁉」


叔父さんが嬉しそうに指を指す。

そこには、くりぬかれた岩に鉄格子を嵌めて作ったであろう、叔父さんの「マイ檻」があった。


奥は暗くて見えない。

何が入っているのか不安で、俺は少し言葉に詰まった。


「……ジョーンさん、大丈夫……ですよね?」


丸井くんも同じ気持ちだったのだろう、明らかに動揺している。


「あ、う、うん、大丈夫大丈夫、あはは……」


「どしたん? 見んの? ここはクワガタンが入っとるで」


「「クワガタン⁉」」


俺と丸井くんは身を乗り出した。


クワガタンといえば、虫系モンスの中でも常に人気ランキング上位の花形……。

生息するダンジョンが少ないため、ややレアなことも人気の要因となっている。


「見とってよ? おーい、おーい」


叔父さんが檻の隙間から指を入れてピロピロする。


――ガシャァアアンッ‼‼


「ひぃいいっ⁉」

「うおぉっ⁉」


突然、闇の中から黒光りする二本の角が飛び出してきた。


「うひょー、これこれ。どう? 迫力あるやろ?」


叔父さんは満面の笑みを浮かべて、クワガタンの角を指でつついている。


「これ、まだ大きいなるらしいで」

「えっ……いまでも結構な大きさですよね?」と、丸井くん。


「そうやなぁ、いまで一畳くらいやけど、二畳半くらいにはなるんちゃう?」

「すごいですね……」


「しかし、よく捕まえられたというか……」


「これな、クワガタンが好きな蜜を奥に置いて、あとは気合いで鉄格子。ホンマヤバかったわ~おっちゃん、死ぬかと思たし」


「気合い……」


「ま、まあ、それはいいとして……ここから先はどんなモンスが?」


叔父さんは腕組みをして、

「うーん、オニヤンマルーガ、ゼンショクテントウ、エンペラービートル、ドラゴンフライ、オオセミ……大体、一般的な奴はおるな」と頷く。


「え、地下もあるんですよね?」

「あー……うん」


え、何? いまの間は……。

足で地面をならしながら、叔父さんは目を合わそうとしない。


「叔父さん? 地下、あるんですよね?」

「……う、うん、ある、と思う……」

「「思う?」」


俺と丸井くんが叔父さんに近づく。


「ちょ、ちょ、タンマ、タンマやって!」


叔父さんは俺と丸井くんに両手を向ける。


「じ……実はな、行ってないねん」


「え?」


「いや、だけん、入り口は見えとんよ。でも、おっちゃん、装備もこんなやし、そこまで辿りつけんねん!」


「え、じゃあ、まだ降りてないってことですか⁉」

「う、うん。そういうことになるな……」


そうか……まあ、デバイスで見た限り2フロアで間違いないとは思うが、こればっかりはバックドアの可能性もあるし、探索してみないことには何とも言えないか……。


「まあ、でも三人ならたぶん行けますよ。ヤバそうなら装備変えるなり、討伐要請出すなりして、なんとでもなりますし」

「そ、そうなん⁉ さすがやでジョーンくん!」


叔父さんが俺の手を取ってぶんぶんと振る。


「どうします? 一気に行ってみますか?」

「そうだね、じゃあ、叔父さん真ん中で先頭は俺が行くよ。丸井くんは後ろお願い」

「わかりました!」

「よっしゃ、道案内はおっちゃんに任せとき!」


そうして、俺達はマイ檻コーナーから、さらに奥へと進んだ。



――ブゥウアアアン!!



「うぉっ⁉」

「オニヤンマルーガや! わぁ見てみ? あの羽根、めっちゃ綺麗やん!」

「ちょ、叔父さん! そんなこと言ってる場合じゃないっす!」


オニヤンマルーガは三体でV字編隊を組み、上空で旋回した後、俺達目がけて急降下してきた。


「うぉおおおっ! ――シュッ!」


『グギギィッ⁉』


真ん中のオニヤンマルーガの頭部がパックリと割れる。


「丸井くん、そっち!」

「はいっ!」


丸井くんがタイミングを合わせて、大金槌を振り抜いた。


――バギャッ!


頭部が粉砕し、残された体が草むらに突っ込む。


「残り一体!」


俺と丸井くんは、叔父さんを隠すように武器を構える。

すると、オニヤンマルーガは何度か上空を旋回した後、どこかへ飛んで行った。


「ふぅ……」

「なんとかいけましたね」


「ふ、ふたりともすごいやん……っ! やっぱ頼りになるわ~」


目をキラキラさせた叔父さんが、俺と丸井くんの回りでキャッキャしている。

何だろう、何か憎めないというか……。


「おっ⁉ しかもドロップしとる! これ素材になるんちゃう?」


叔父さんがオニヤンマルーガの羽根を拾って、嬉しそうに見せる。


「なかなか良さそうですね」

「装飾に使えそうだよね」


「これランプシェードにしたらええんちゃう? 虹色になんで」

「そうか、そういう使い方もありますね」


「ええやろ? とりあえずおっちゃんのアイテムボックスにしもとくな」

「あ、お願いします」


「よっしゃ、どんどん行こ!」


それからしばらく、密林タイプのダンジョンが続く。

しかし、出てくるモンスは相変わらず虫系ばかりで、密林といえばのバルプーニ一匹すら見当たらない。

本当に虫系しか出ないのか……。


「あ、あれあれ! あそこに階段があるんよ!」


俺と丸井くんは草むらに身を隠しながら、叔父さんが示す方を見る。


「……虚ですかね?」

「うん、たぶん虚の中に階段があるんだと思う」


大きな木が何本も絡み合う中に、大きな虚ができている。

そして、その中に石の階段が続いているのが見えた。


「ジョーンさん、なんかヤバい空気出てますけど……」

「たしかに……ゲートキーパーとか出そうな雰囲気だね」


むせかえるような熱気。

首筋に汗が伝う――。


「じゃあ、倒せそうならそのままゴリ押しで、無理そうなら一旦戻ろう」

「そうですね、それがいいと思います」

「うん、無理はいかんな」


三人で互いに頷き合い、アイコンタクトを交わす。


「さぁ、行きましょう」


俺は肩を鳴らし、ルシールのグリップを握り直した。


垣間見えるおっちゃんの狂気……w

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― 新着の感想 ―
おっちゃん良いキャラしてるw
おっちゃんのリアルにこういう人いるよね感がw
虫好きは虫攻撃するのに躊躇ないから凄い
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