表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
オブザデッドの孤島編 ~またも名刺を拾ったら~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

202/214

ゲート開放

「はあ……はあ……」

「ふぅ……何とかなったな……」


自販機の陰から大通りを伺った後、俺は紅小谷に向き直った。

ラキモンは俺の頭の上に乗ったままだ。


「もう無理……走れない……」

「クッソ、この自販機買えねぇし……くぅ、コーラ飲みてぇ……」


やはり街にあるものは、殆どがオブジェクトのようだ。


「飲む?」


紅小谷がアイテムボックスからポーションを取り出した。


「ポーションか……これ、苦いんだよなぁ……」

「何もないよりマシでしょ……いらないなら別にいいけど」

「いる! ありがたく頂戴します!」


俺は紅小谷からポーションを受け取り、一気に飲み干した。


「ぷはぁ……うぇええ、やっぱ苦いな……」

「なんなの? 小学生なの?」


紅小谷は俺を睨みつつ、

「ここを出て、MAPまで行ってエリア解放するとして……その後、他のエリアに行く……このゲームの終わりってなんなのかしら?」と呟くように言った。


「んー、普通に考えればボスとか……でもリビングデッドだしなぁ。まぁ、ボーナスモンスみたいに別枠で用意されてるのかも」


「うーん……なら、そのボスの発生条件ってさ……」


紅小谷と目を見合わせる。


「エリア解放か……」

「その可能性が高いと思うわ」


この状況でボス戦か……いくら紅小谷の腕が立つといっても、俺とふたりじゃなぁ……。矢鱈さんやリーダーなら楽勝なんだろうけど……。

もうちょっと俺が強ければ……。


「他のプレイヤーはどうしたんだろうな」

「そこよね、まだ一人も遭遇してないわ。だって、私とジョンジョンが遭遇したのよ? 50人くらいは参加者がいたはずだし、誰かひとりくらい出くわしても不思議じゃないと思うんだけど……」


「そうだよなぁ……」


「中位種程度ならふたりでも何とかなると思うけど……さすがに上位種になると厳しいかもね」

「はあ、こんなときにリーダーでもいてくれればなぁ……」


ピクッと紅小谷の肩が反応する。


「そういやリーダーと連絡取ってんの?」

「なっ⁉ なんなのよっ⁉ 突然……!」


みるみるうちに紅小谷の顔が赤く染まっていく。


「ははーん、やっぱリーダーと……」


「この……たっ……たわけーーーーーーーーっっ!!!」


「ふごっ⁉」


紅小谷の右アッパーが俺の顎を打ち抜いた。


「う……うぅ……」

「あっ、ご、ごめんジョンジョン! つい……大丈夫⁉」


「あ、ああ……平気平気……」

「もう、ジョンジョンが小学生みたいなこと言うから……」


「……」


紅小谷にリーダーの話は禁句だな……。

しかしラキモンが離れない。

寝てんのかな?


「おーい、ラキモン、起きてるか?」

『ラ……むにゃむにゃ……』


「モンスが人の頭の上で……寝る?」

「俺も初めて見たよ……」


いつもならすぐにどっか行ってしまうんだが……腹でも減ってんのかな?

案外、瘴気香待ちなのかも……。


「まあ、モンスだしね。花さんでもない限り理解できるわけないわ」

「ははは、たしかにそうだな」


花さん大丈夫かな?

早く会いたいなぁ……。


「よし、そろそろ行くか?」

「いいけど……ボスはどうする?」


「そうだな、もう進むしか道はないわけだし、ボス戦になったらなったでなんとかなるさ。サークルピットもゲームバランスはちゃんと設計してるんじゃないか?」


「あーそっか! そうよね、自然のダンジョンってわけじゃないのか……なら、難易度に合わせたモンスが出るわよね。たまにはいいこと言うじゃない!」


紅小谷がバシンっと俺の背中を叩く。


「いてて……さぁ、そうと決まれば行こう!」

「ええ!」


俺達は大通りを横切り、MAPの場所まで走った。



 * * *



〈PLAYER:hana hirako/amenoma〉


「これ何でしょう……」


それは半透明の黒い壁だった。

うっすらと向こうに街があるのが見える。


「壁……向こうに街があるな……」


あめのまさんが壁に顔を近づける。


「ん? これって……渋谷?」

「え⁉」


私も慌てて壁の向こうを見ようと目を細めた。


「あっ……た、たしかに渋谷に見えますね! といっても、何回かくらいしか行ったことがなくて……あんまり詳しくはないんですけど……」


「俺もだよ、仕事で何度か。後は動画で見たくらいかな」


そう言って、あめのまさんは微笑み、両手を腰に当てて黒い壁を見上げた。


「さて……どうやったら向こうに行けるのか……」

「んー、特に何もないですもんねぇ……」


私は壁をコンコンとノックしてみた。

すると、壁に表示が現れる。


「あっ⁉」

「おぉ! コントロールパネルみたいだな」


壁にはMAP(恐らく島の地図)が表示されている。

たぶん、この光点のある場所が現在地だわ……。


その他のエリアはグレーアウトされていて、金色の鍵のマークが表示されている。

鍵のマークには『2P』とか『3P』などの数字が虹色に輝いている。


「なるほどね、モンスポイントはこういう使い方をするのか」

「みたいですね」


「よし、なら俺のモンスポイントを使ってみよう」

「え……でも、いいんですか?」


「なぁに、構わないさ。土エルフの分もあるから」

「私、ずっと後ろに居ただけなのに……すみません」


「ちょちょ、謝んないで……気楽に行こうよ、ゲームなんだしさ、ね?」

「は、はいっ、そうですよね!」


「うん、じゃあ解放してみようか……」


あめのまさんが鍵マークのアイコンをタップする。


すると、

〈 エリア解放 3MP YES/NO 〉

と表示が変わる。


YESをタップすると、MAPの表示が消える。



『――PLAYER:amenomaが"シェラン島"から"渋谷"へのゲートを開放しました。PLAYER:amenomaには、ファーストゲート開放ボーナス+5Pが加算されます』



「えっ……シェラン島って……ここ、やっぱり世界樹の……⁉」

「どうしたの花さん?」


「あ、いえ……」


『――ALL PLAYER:ゲート開放により、Gate(ゲート) Keeper(キーパー):枯れ果てた世界樹の主 レイズ・オベロンが召喚されました。30秒後、半径2㎞圏内のPLAYERは強制転送されます。衝撃に備えてください』


「こ、これは……⁉」


ゴゴゴゴ……と、地面が割れた!

隆起した岩の台座に、紫色の古びたローブを纏った老エルフが座っている。

すでに顔の至る所が朽ち、その枯れ木のような手も所々欠けていた。


「オ、オベロン⁉ な、な、なんて……す、すばらしいっ!!」


統治種のオベロンなんてレイド級なのに……いったいどうやって……。

でも、完全なオベロンではない? え? アンデッドのオベロン……。


そんなモンスって……存在するのかな……。


レイズ・オベロンがスッと手を払う。


来たれ、我が同胞よ(インヴォカティオ)……』


「花さん! 危ない!」


あめのまさんの声でハッと我に返る。

周囲から一斉に無数の土エルフが召喚された。


「な、なんて数だ……」


――と、その時、聞き慣れた心地よい声が耳に入った。


「あ、あれ? 花……さん?」

『ラキィッ!』


見ると、そこにはジョーンさんとラキちゃん、そして紅小谷さんが立っていた。


「ラ、ラキちゃんっ⁉」


「いやいや花さん? そこはさすがに私かジョンジョンが先でしょ」


紅小谷さんが私に苦笑いを向ける。


「あ……」


やってしまった……。

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やった合流 しかし、これは言われていたようにレイド難易度だから召集されてしまったということですかね そうなるとまだまだ集まったりして
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ