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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
オブザデッドの孤島編 ~またも名刺を拾ったら~

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201/214

ジョーン開眼

〈PLAYER:suzune benikoya/john dan〉


俺と紅小谷、そしてラキモンは校内の放送室へ向かった。


「何か急に出てきたりしないわよね……」


紅小谷は終始警戒モードだ。

それに比べてラキモンはどこ吹く風、楽しそうに跳ねている。


『ぴょっ、ぴょっ、ぴょっ』


「ラキモン、頼むから勝手にどっか消えないでくれよ?」

『ラキ~?』


「ほら、D&Mに戻ったらたっぷり瘴気香あげるからさ」

『ほんとラキね? ダンちゃん言ったラキよ……』


ジロリと俺を見据えるラキモン。


「心配しなくてもあげるから……」


悪い顔してんなぁ……。

それにしても、ラキモンって不思議なやつだよな。

ダンクロ笹塚店時代も懐いてくれてたけど、こんなに話すようになるなんて思わなかった。


まあ、ラキモンと意思疎通してる時点でおかしな話なんだが……。

やっぱり、他のラキモンとは違うユニーク的な個体なのかな。


考えても答えは出ないだろうし、俺はラキモンがいれば楽しい。

それで十分かな。


「ほんと、なーんでジョンジョンに懐いてんのかしらね」


紅小谷が不思議そうに言う。


「そりゃあ人徳だろ? ラキモンには、俺のダンジョン愛がわかるんだよ」

「それ、あんまり他の人に言わないでね?」


「なっ⁉ ど、どういう意味だよ!」

「どうもこうも、そういう意味よ。ほら、着いたわ」


目の前に『放送室』と書かれた部屋がある。


「おっ! 入ってみよう」


俺はゆっくり扉を開け、隙間から覗いて、リビングデッドがいないことを確認した。


「大丈夫みたいだな」


狭い部屋の中には大きめのコンソール、いわゆるPA卓があり、奥には録音ブースが見える。


「へぇ、意外と本格的なのね」

『ラキィ~』


ラキモンがPA卓の上に飛び乗る。


「あ、こらこら、そこはダメだって」

『なんでラキ?』


「変なところ触ると壊れちゃうかもだろ? 調べるから降りて」

『ラ゛~……』


 あからさまに不満げなラキモンがぴょんっと卓から降りた。

 まあ、今は仕方ない。後で機嫌を取ろう。


「見て、電源が入るわ。これ生きてんじゃない?」


紅小谷が卓の電源ランプを指さす。


「ほんとだ……えっと、どうやって音流すんだ?」

「は? 知らないで言ってたの⁉」


「いや、見ればわかるかなぁーって……」

「ったく、私がいなきゃ詰んでたじゃない、もう!」


「へへへ……紅小谷こういうの詳しそうだもんな?」

「ちょっと黙ってて」

「はい……」


むぅ……気まずい。

だが、ここは適材適所、俺にできることで挽回しよう。うん。


「うん、これなら大丈夫。どうする? 放送するのは良いけど、その後の計画を立てないと……」

「そうだな、よし! 放送後、すぐに一階へ降りる。リビングデッドが校内に入っていくのを隠れてやりすごし、波が途切れたら一気にMAPの場所まで走る。どう?」

「……わかったわ」


俺と紅小谷は互いに頷き合った。


「ラキモン、アイテムボックスに入ってくれるか?」

『いやラキ』と、ぷいっと顔を背ける。

「即答かよ……」


「ちゃんとお礼するからさー」

『ラキ、ラキ~』


完全に俺を無視してその辺の機材を触っている。

駄目だ、もう抱えていくしかない。


「いいよ、紅小谷。抱えていくから」

「大丈夫? まあ、いつまでもここにいるわけにもいかないしね……OK、じゃあ行くわよ?」

「ああ、頼む――」


紅小谷がフェードスイッチを上に上げる。

すると、校内に音楽が流れ始めた。


何の曲かはわからないが、妙に軽快なポップミュージックだった。


「なあ、紅小谷、これ何の曲だろう?」

「たわけーーーーっ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが! 行くわよ!」


「お、おう!」

『うぴょっ⁉』


俺はラキモンを抱えて紅小谷の後を追った。


階段を駆け下りる。

は、早い! 身軽だとは思っていたが、まるでパルクールみたいな身のこなしで紅小谷が階段を駆け下りていく。


「うおおおおーーーっ!」


頭の上にラキモンを乗せ、必死に遅れまいと走った。


「ひぃいい……! はあ、はあ……!」


やっと一階へ着くと、紅小谷が校舎の影に身を隠した。

その後ろに俺も身を隠す。


「見て、集まってきてる……」


そっと覗くと、どこから湧いて出たのか、大量のリビングデッドが押し寄せていた。


「すげぇ数……こりゃ見つかったら死ぬな……」


息を殺して様子を見守っていると、ラキモンがもぞもぞと動き始める。


「ちょ、ラキモン、もうちょっとだけ我慢してくれって……!」

『……ラ~ッ!』


ぴょんっと俺の腕の中から飛び出す。


「ちょ⁉」

「えっ⁉」


『ラァ~~~~キィ~~~~~ッ!!!』


「ばっ……馬鹿!」


俺はラキモンの口を塞ぐ。

だが、時すでに遅し……。

リビングデッドが俺達を補足した。



『『『オォォオオオオオオ……』』』



「ひっ……」

「あわわわ……」


マズい! と、とにかく突破口を開くしかないっ!


「紅小谷! 援護頼んだ!」

「ちょ……ジョンジョン!」


俺はルシール改を握り絞め、「シャッ」と気合いを入れる。

あれだけ筋トレしてんだ……何とかなんだろ!


「うぉおおおおおおーーーーーー!!!」


一番数が少ない場所! あそこかっ!


校門ではなく、登って越えられそうな壁に目を付ける。

越えた先は丁度、大通りへと続く細道だ。


「紅小谷! あの壁を越えよう!」

「わかったわ!」


「オラァッ!」

「邪魔よ!」


二人でリビングデッドを蹴散らしながら、壁に向かって突き進む。


クソッ……! キリがねぇ……でも、やるしかないっ!


矢鱈さんは基本が大事だと言っていた。

今の俺にできるのは基本しかないんだっ!


「基本だぁ! 基本、基本、基本ーーーっ!!」


肘の角度! 力の抜き方ぁ! 足の位置ぃ!


――シュッ!


「で、出来た⁉ え⁉ 出来たんだがっ⁉」

「ジョンジョン! 早く!」


そうこうしている間にも、リビングデッドは増えていく。


「すまん、でも……何かわかった気がする!」


――シュッ!


紅小谷を囲んでいたリビングデッドを粉砕した。


「ジョンジョン……や、やるじゃないっ⁉」


「任せろ! 何か掴んだ!」


――シュッ!


――シュッ!


――シュッ!


おぉ! これは……開眼では⁉


体が軽い……だが、攻撃力は上がっている……。

やはり基本! 基本しかないんだっ!



――シュッ!



「よしっ! 先に行け!」


壁まで来て紅小谷を先に押し上げた。


『ラ゛キ゛~……』

「ごめん! ホントマジで我慢してくれっ!」


嫌がるラキモンのお尻を押して塀の向こうへ押し上げ、俺もその後を追う。

リビングデッド達は、音楽に吸い寄せられるように校内に戻っていった。

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― 新着の感想 ―
それなりに長い付き合いでも気ままなペットみたいに見てるからか、懐かれてはいるけどジョーンのラキモンへの観察と理解が足りない感じが良いですねえ、せっかくいい匂いがするって言ってくれてるのに。
[良い点] シュッ!開眼か しかし、ラキモンがなんかおかしくなっていないか ダンジョンの毒気でもあるんでしょうか
[気になる点] ラキもんってこんな基地外モンスターだったの? 大量のモンスターから逃げるのに嫌がって抵抗するとか意味わからんのだけど 本能でリビングデット数100匹よりも自分の方が強いとわかってるとか…
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