大群
〈PLAYER:suzune benikoya/john dan〉
「「ぬあああああーーーーーーっ!!!」」
大通りを必死に駆ける俺と紅小谷。
どうする⁉ このままじゃ……!
ふと、視界の端で黄色い物が動いた。
「え?」
いまのって……ラキモン⁉
錯覚? いや、あの横道のところに居たような……。
えぇい! どうせこのままじゃ囲まれるだけだ!
「紅小谷! こっちだ!」
俺は大通りを離れ横道に向かう。
「ちょ……ちょっと、ジョンジョン! 待ちなさいよ!」
紅小谷も後を追ってきている。
横道に入ると、T字路の突き当たりでラキモンが跳ねていた。
いたっ! やっぱりそうだったか!
「ラキモーンッ!」
『うぴょー、ダンちゃ~ん、こっちこっち~』
ラキモンは何度かその場で跳ねた後、スッと左手の道に消える。
俺は急いでその後を追った。
ラキモンが跳ねていた場所まで行き、左手を見ると緩い登り坂になっていた。
地面には『スクールゾーン』と書かれている。
そのまま坂を登ると、右手に赤い階段のある建物が見えた。
「ここは……小学校か!」
『ぴきゅっ、ダンちゃん、こっちラキ~』
ラキモンが小学校の中に入っていく。
「お、おい……ラキモン!」
さすがに建物の中はリスクが高い気がするが……。
しかし、このままラキモンを放っておくわけにもいかない。
ここではぐれてしまうと、一生探し出せない自信がある。
「はぁ……はぁ……ジョ……ジョン……ちょっと……ま……」
フラフラの紅小谷が追いついてきた。
「紅小谷、ここに隠れよう!」
「……小学校? 大丈夫なの?」
渋る紅小谷の手を引き、俺はラキモンの後を追った。
* * *
俺とラキモンは、二階の教室の窓から外の様子を伺う。
ラキモンは俺の頭の上だ。
ひんやりぷにぷにしてて、ちょっと気持ちが良い。
「あれだけいたのに……嘘みたいに静かだな」
『ラキィ……』
「ったく……いい加減にして欲しいわ」
ご機嫌斜めな紅小谷は、椅子を斜めにさせながら大きなため息をついた。
小柄な紅小谷は、小学生用の椅子でも違和感が無い。
「しっかし、こんな広いダンジョン初めてだよ。マジでサークルピットは凄いよなぁ……」
『広いラキ凄いラキ! うっぴょ~!』と、ラキモンが俺の真似をする。
「そうね……でも、何かひっかかるのよねぇ……」
「何が?」『ラ?』
「うーん……うまく言語化できないんだけど、他のプレイヤーに会わないのも変だし、この規模のダンジョンだと、攻略にかなり時間がかかるわよね?」
「まあ、そうだな。大抵の場合はフロア構成がわかった上で挑むわけだし……普通ならパーティーを組んで、何日かに分けて階層ごとに攻略していくべきだと思う」
「てことは、完全攻略まではプレイさせない気かもね。ほら、チュートリアルっていうか、プレオープン的なものかも知れないわ」
「言われてみると、そんな気もするよな」
『ぴょ、ぴょ、ぴょ……』
ラキモンが俺の頭から飛び降りて、教室の中をウロウロし始めた。
「実はさっきね、交差点の近くに案内図があって、そこに全体マップらしきものがあったのよ」
「えっ⁉ マジで⁉」
「でも、表示されてたのは渋谷エリアだけで、後はグレーアウトされてたの。で、鍵マークがあって、恐らく解放に必要なポイント数が書かれてたわ」
「ポイント……あぁ、なるほど……だからMPか!」
「ええ、私はボーナス含めて、いまの手持ちは15Pのはず」
「いや、ちょっと待てよ……たしか、全員で集まった時のクイズで10ポイントもらったはずだろ?」
「あっ! たしかにそうね……でも、あれって加算されてるのかしら……」
「オネイロスだし……どうにかすれば持ちポイントくらい表示されそうだけどな」
「アイテムボックスは見られるんだけどねぇ……」
言いながら、紅小谷はアイテムボックスを表示させた。
「ん? それ! そのアイテムボックスの右上の数字!」
「あーーーっ⁉ ポイント数だわ……!」
アイテムボックスのフレームの右上に『25P』と表示されていた。
「なんでこんな小さく……いや、気付けて良かった。クイズの分も加算されてるみたいね」
「俺も見てみよっと」
俺もアイテムボックスを表示させ、ポイントを確認する。
『10P』と表示されていた。
「俺はクイズ分だけだな」
「んー、ここで隠れてても仕方ないわよねぇ……でも、闇雲に探索するよりは、私のポイントでマップを解放してみるのも手かも」
「むぅ、交差点まで戻るとして、問題はさっきみたいな大群が来たらどうするかだ」
「ええ、何か別の場所でおびき寄せる方法があれば……」
ふと、校内放送用のスピーカーが目に入った。
「――これだっ!」
「もうっ! 何なのよ急に……ったく、声のボリュームは気を付けなさいよね」
「あ、ごめんごめん……。あれだよあれ」
俺は校内放送用のスピーカーを指さした。
「え、使えるの?」
「わからない、けど試してみる価値はあるだろ?」
ぴょんっと、ラキモンが俺の頭に飛び乗る。
『うぴょー』
紅小谷はラキモンを見て「はぁ……」と力の抜けた笑みを浮かべる。
「わかったわ、試して見ましょう――」
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