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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
オブザデッドの孤島編 ~またも名刺を拾ったら~
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再会

〈PLAYER:john dan〉


「おーい、ラキモン……どこだよ?」


声を殺しながら自販機の裏やゴミ箱の中を覗いてみる。

ツンとした酸っぱい臭いに思わず顔を背ける。


「う゛ぇ~っ! 生ゴミ……こんなところだけリアルかよ……」


『オオォォ……』


突然、背後から呻き声がする。


「ひっ⁉ こ、このっ……!」


振り向くと同時に、ルシールでリビングデッドを突き飛ばし距離を取る。


「あ、あぶねぇ~……そっか、こいつら裸足だもんな……」


クソッ、足音がしないのは盲点だった。

気を抜くとマズいな……。


『――PLAYER:suzune benikoyaがボーナスモンスをキルしました! モンスポイント+5をゲットしました。PLAYER:suzune benikoyaには、ファーストボーナス+10が加算されます』


「え?」


――ワールドアナウンス?


「うへぇ~オネイロスの本領発揮か、マジすげぇな……。ていうか、さすが紅小谷は抜け目ないっていうか……おっと、俺も負けてられないなっ……と!」


俺はリビングデッドの頭部を砕き、ウィンドウの時計を見た。


もう少しで15時……。

よし、一旦隠れてマンドラの実を使おう。


なるべく大通りより、道が分かれているセンター街の方がいいな。

ケバブ屋にマクドナルドンか……しなびたポテトが食いてぇ~……。

見慣れた店を見て、思わずお腹が鳴る。


ウィンドウ越しに中を覗いてみるが、食べ物は再現されていない。

うぐぅ……なんで生ゴミだけ再現してんだよ……。


しかし、これは世界有数のゲーム会社Circle Pit(サークル・ピット)が考えたゲーム。

絶対、ただのゾンビパニックものじゃないよなぁ……。


ダンジョン経営者を集める意味は何だろう?

宣伝とか? ん~……プレリリース的なものって考えるのが普通だけど……。


ラキモンを探しながら、俺は道なりに進んだ。


「おっ、十字路か……」


この辺なら、どっちにでも逃げられるな。

俺は道の端に身を潜め、15時を待った。


3、2、1……。

15時ジャストにマンドラの実を踏み潰す。


『ギュワワワワワーーーーーーーーーッ!!!!』


「――え⁉」


共鳴針を確認すると、狂ったようにぐるぐる回り続けている。


「だ、だめだ……なんで……⁉」


ん? まてよ……。

このゲームの参加者はダンジョン経営者ばかりだよな?

マンドラの実や共鳴針で、仲間とコンタクトを取るなんて常識だから……。


そうか! 皆が同じタイミングでマンドラの実を潰したのか⁉

むぅ……それなら、共鳴針に影響が出てもおかしくないか……。


となると、この先……共鳴針は当てにならない。

せめて、全体マップが確認できればいいんだが……。


「仕方ない、切り替えて行動あるのみっ!」


ギュッとルシールのグリップを握り、気合いを入れ直す。


まずは、ラキモンを探そう!

裏道はあらかた探したし、次は大通りだな。


俺はルシールを握りしめ、大通りに向かって走った。



  *



〈PLAYER:suzune benikoya〉


「あーもう! どこにいったのかしら……」


スクランブル交差点を見渡す。

しかし、これがダンジョンだなんてね……ホント信じらんない。


「どのくらいの規模なのかしら……」


さすがに、渋谷全域を再現なんて無理がある。

恐らく再現は一部、そして他のエリアも存在するはずよね……。


しかも、オネイロスOS……通常のダンジョンとは別物と考えた方がいいわね。

運営はダンジョンコアを複数移設したと言っていたけど……。


しかも、リビングデッド三万体だなんて……コアの負荷やコスト面からみても違和感ありありだわ……。


それに、さっきのキリングバット三世は何なのよ……。

リビングデッド以外にもモンスが設置されているってことかしら?


ふと、近くの案内図に目が止まる。


「……ん?」


よーく見てみると、渋谷の地図ではない。


「――こ、これは⁉」


この島の……全体マップ⁉

見ると、渋谷エリアと表示された場所だけ明るい。


その他のエリアはグレーアウトされていて、金色の鍵のマークが表示されている。

鍵のマークには『2P』とか『3P』などの数字が虹色に輝いていた。


「うーん……」


鍵エリアは全部で3つ――。

渋谷と合わせて、この島は4つのエリアで構成されているってことね。

たぶん、この数字はマップ解放に必要なMP(モンスポイント)ってところかしら。


私のMP(モンスポイント)の手持ちは15P……。

試しに隣の鍵エリアを解放してみる……?


「むむむ……」


いや、こういう時は焦ると裏目が世の理。

それに、この案内板の内容は、誰でも同じ内容が見られるのかしら……。

だとすると、誰かが解放するのを待った方がMPの節約になるかも?


ファースト解放ボーナス的なものもあるかもだけど……。

とりあえず、渋谷エリアもまだ全然調べてないんだし、先を越されたとしても、さっきのボーナス分があればMPでの遅れはカバーできるはず。


「ま、後回しでいいわね」


それよりも、早いとこジョンジョン達と合流するのが先だわ――。


私はファッションビル『1009(センキュー)』を見上げながら、道玄坂方面へ向かって駆け出した。



  *



〈PLAYER:john dan〉


「ぬぅんっ‼」


リビングデッドの頭部目がけて、ルシールをフルスイングで振り抜く!


「はぁ……はぁ……あっち~」


さすがに数が多いな……。

ただ、まるで波のように、襲ってくる数に一定のリズムがあるように感じる。

俺の感覚が正しければ、そろそろ休憩できそうだが……。


ていうか、これ全部リポップしてるとしたら、とんでもない速さだよなぁ。

どうやってんだろ?


終わったらニコラスさんに聞いてみるか……。


「ん?」


遠くにリビングデッドと違う動きをしている人影を見つける。


「あれはっ⁉ プレイヤーか……?」


『『オオオオ……』』


目を懲らしている間に、周りをリビングデッドに囲まれていた。


「ええぃ! 邪魔だぁっ!」


前蹴りでリビングデッドを押し飛ばし、突破口を作る。

倒れたリビングデッドの上を走り抜け、俺はそのまま人影の方へ走った。


人影は路地の方へ入って行ってしまう。


「やばい! 見失う!」


――が、ふと思った。

安易に近づいていいのだろうか?


もし、PKなんてことになったら……。

いやいや、ニコラスさんもデスゲームじゃないって言ってたし……。

大丈夫だよ……な?

走りながら、段々と不安になってくる。


やっぱり、様子をみるべきか⁉

いや、隠れていても何も始まらない!


えぇい! あれこれ考えるのは性に合わない!

いつも通り、当たって砕けろだああぁーーー!


「おぉーーーい!! おぉーーーい!!」


俺は人影が消えた方角に向かって大声で叫んだ。

と、その時、路地裏からひょこっと見知った顔が覗く。


「べ、紅小谷⁉ ははっ、やったぁーーー!! 紅小谷じゃーーん!!」


跳ねるような気持ちで駆け寄る。

紅小谷も凄まじい速さで俺の方へ向かってきた。


あんなに急いじゃってまあ、へへっ、そんなに嬉しかったのか……。

へへ、やっぱり仲間っていいよなぁ。


「紅小谷~! いや~、早めに合流できてよか――⁉」


ん? あれ? 何か……怒って……らっしゃる?



「この……たわけーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



思いっきり鳩尾に跳び膝蹴りをくらう。

俺は体をくの字に曲げたまま吹っ飛ばされた!


「ぐぶほッ……⁉⁉」


ゴロゴロと転がり、地面に倒れた俺は紅小谷を見上げた。


「ぐ……な、なにを……」


紅小谷が鬼のような形相で俺を見下ろす。


「あんた馬鹿なの⁉ これだけのリビングデッドがいる場所で大声出すなんて、囲んでくださいって言ってるようなもんでしょうがぁ!」

「あ……」


確かに迂闊だった……!

リビングデッドは音に反応して集まる習性がある。


「ったく、馬鹿みたいに大声出して、こっちの身にもなってよね!」

「ご、ごめん……悪かったよ」

「もうっ……ほら、立てる?」

「ああ……」


紅小谷に手を引いてもらい起き上がる。


「ふぅ~、いてて……ん?」

「何よ?」


「べ、紅小谷……さん?」

「は? だから何よ!」


俺はゆっくりと紅小谷の後ろを指さした。


「いちいち勿体ぶって……なんなのよもう……」


紅小谷が不機嫌そうに振り返る。


「……」


顔を戻した紅小谷が無言で俺を睨む。


「……どうしよう?」


「どうしようって……逃げるしかないでしょうがぁぁああああああ!!!」

「うわああああああーー!! 何なんだよ、あの数はああぁぁーーーー!」


俺と紅小谷は同時に駆け出した。


背後には、大通り一杯に埋め尽くされたリビングデッドの大群が迫っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「1009」はアリですね 合流は安心できましたが、花さんの続報が無いのが気になる
[一言] 最後のは明らかに紅小谷のせいである。 どうせ主人公のせいにするだろうけど。
[気になる点] 速攻でフラグ回収♪~(´ε`) これは無事脱出出来ても紅小屋のお仕置きが行われるんじゃ?
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