ファーストボーナス
〈PLAYER:suzune benikoya〉
「ん? あ、あれ! ジョンジョンじゃない!」
窓から見下ろしたスクランブル交差点に、ジョンジョンとラキモンらしき人影を見つけた。
私は慌ててビルを出ようと出口に向かう。
ドアから出ようとして、妙な気配に足を止めた。
『オォォォ……』
「いるわね……」
外の廊下からアンデッドらしきうなり声が聞こえてくる。
まあ、でも数百体に囲まれるならまだしも、ビルの中ならせいぜい数十ってところでしょ……フン、上等じゃない。
私は死の大鎌を握り絞め、大きく深呼吸をする。
――行くわよ!
バンッ!
と、ドアを開け放ち、廊下に躍り出た。
廊下には五体ほどのリビングデッドが彷徨っている。
「邪魔よ!」
リビングデッドを斬り払いながら、一気に廊下を駆け抜ける。
『オガァッ!』
『グアアアアッ!』
倒しきらなくてもいい。
体力を温存しつつ、今はジョンジョンと合流することを最優先にしなければ――。
階段を見つけ、私は一気に駆け下りる。
出口の自動ドアはもう、すぐそこだ――と、その時!
大きな自動ドアが闇に染まった。
「え……?」
『キキキキキーーーーッ!!!』
けたたましい鳴き声と共に闇が一斉に宙を舞った。
「きゃっ⁉」
バサバサという羽音が一点に集まっていく。
黒い塊が宙に浮いて蠢いている。
「な……」
段々とそれは形を成していく。
「キ……キリングバット三世……⁉」
『キキキ、人間……我の名をしっているキリか……』
現れたのはアンデッド系の中でもかなりレアなモンス、キリングバット三世だった。
ほんとにふざけた名前だと思うけど、そう決まっているのだから仕方が無い……それに、かわいい。
『恐れをなしたキリか! この愚鈍な人間めがっ! キキッ!』
牙を見せて笑うキリングバット三世。
貴族のような出で立ちをした、ちょっと大きめの蝙蝠……。
大抵はヴァインパイア・ロードやヴァンパイア・クィーンなど、高位種の影にひっそりと隠れている中位種だ。
「はぁ、悪いけどわたし急いでんの」
『ムッ! なまいきな人間キリ……後悔しても遅いキリよなぁっ‼ キキキキキーーーーッ!!』
キリングバット三世が牙を剥いて躍りかかってきた。
「――ほっ!」
私は死の大鎌を一閃する。
キリングバット三世は真っ二つに割れた。
『キキッ! ぬ、ぬぅ……』
「逃がさないわよ」
私は嘆きの小楯をかざす。
小楯についた顔から超音波が放たれる。
『キ……ギ……ギキキキキーーーーーッ!!!』
断末魔を上げた黒い塊がボタボタと地面に落ち、黒い霧となって消滅した。
「フン、これでよし……ん?」
床の上に何かが落ちている。
近寄って見てみると、一枚のカードが落ちていた。
「何かしら……」
カードには『MP+5』と書かれている。
裏面を見ると、アイテムBOXに入れてくださいと書かれてあった。
私はアイテムBOXにカードを入れてみる。
すると、ファンファーレのような効果音が流れた。
「な、なによ⁉」
『――PLAYER:suzune benikoyaがボーナスモンスをキルしました! モンスポイント+5をゲットしました。PLAYER:suzune benikoyaには、ファーストボーナス+10が加算されます』
「へ? モンスポイント……私が最初ってこと?」
いや、考えるのは後でいい――。
早く合流しないと。
私は外に出てスクランブル交差点に向かって駆け出した。
ありがとうございます!
暑い!





