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ラキモン○○説⁉

 お堂の襖を開くと洞窟が口をあけていた。

 紅小谷と二人、少し緊張しながら奥へと進む。


「今のところ、変わってるのはこの竹の壁くらいかしら」

「うん……こんなのは初めてみたなぁ」

 壁には綺麗に竹が隙間無く並んでいた。 


「一応、持てるだけ装備は持ったし、変なモンスが出ないことだけを祈るよ」

『ぴょ~』


 ラキモンの声が漏れ聞こえるバックパックをポンポンと軽く叩く。

 そして、ぎゅっとルシール改を握りしめて、俺は周りを警戒した。


「あれは何かしら……?」

「ん? 玉砂利になってるぞ」


 土の道に、途中から綺麗な白黒の玉砂利が敷かれていた。


「……何かありそうね、ジョンジョン、下がってて」


 紅小谷は探索者のポーチからスケルトンの骨を取り出し、玉砂利の方へ投げた。

 骨はくるくると回転しながら玉砂利の上に落ちる。


「……」

「だい……じょうぶそうかな?」


 ほっと安心しかけた、その時――。

 玉砂利から黒い煙のようなものが立ち昇る!


「あれは⁉」

「来るわよ、ジョンジョン!」


 紅小谷が死の大鎌を構える。

 俺も慌ててルシール改を握り直した。


『オオオオオオ……』


 黒い煙は人型になり、徐々に烏帽子を被った平安貴族のような姿になっていく。


「ゆ、幽霊……?」

「か、顔が無い⁉」


 のっぺらぼうみたいに顔は真っ白で、そこにあるべき目、鼻、口はどこにも無かった。


『眠りを妨げるのは誰ぞ……』

『誰ぞ……誰ぞ……』


 のっぺらぼうはゾンビのように玉砂利の上を徘徊している。


「ジョンジョン、突っ切るわよ!」

「え⁉ ちょっと待って⁉」


 紅小谷は嘆きの小楯を前に、のっぺらぼうに突っ込む。

 ええいっ! どうにでもなれ!


「う……うりゃあああ!!!」


 ルシール改を振り回しながら、紅小谷の後を追いかける。


『見つけた……見つけた……』

『捕らえよ……捕らえよ……』


 のっぺらぼうが、覆い被さるように襲いかかってくる!

 咄嗟に、俺はルシール改で顔面を殴りつけた。


『あぁれ!』


 ん? 手応えがある⁉


「紅小谷! こいつら攻撃が通じるぞ!」

「なるほどね、なら……何も問題はないわ!」


 紅小谷は死の大鎌をくるりと回し、のっぺらぼうに向かって斬り込んだ!

 一振り三体、二振り六体、凄まじい勢いで突き進む紅小谷。

 何てスピードだ……さすがにやるな。

 だが、俺も負けてられない!


「うぉりゃああ!! 舐めんなコラァ!」


 フルスイングでのっぺらぼうを打ちのめす!


『あぁれま!』

『ひぃぃ!』


 叫びを上げながら、のっぺらぼうは玉砂利の一粒に戻っていく。


「走るわよ!」

「おぅ!」


 紅小谷の後を追い、玉砂利の上を駆け抜ける。

 しばらく走ると板の間の廊下が見えてきた。


「抜けたぞ!」


 滑り込むように廊下に飛び込むと、後ろから追いかけてきていたのっぺらぼう達が、一斉に玉砂利の姿に戻った。


「どうやら、あいつらは玉砂利の上にいる間だけ出てくるみたいね」

「ああ……、あんま強くない奴らで助かったよ」


 ゆっくりと立ち上がり、周りを見た。

 お屋敷の中のようだな……。


 廊下は真っ直ぐ続いていて、突き当たりから左右に分かれている。

 両側の壁は、若草色の土壁のようだ。


「ちょ……ジョンジョン、あれ何?」


 紅小谷が指さす方を見ると、廊下の突き当たりに、何か大きなものが横切るのが見えた。


「な、何だ⁉」


 紅小谷と顔を見合わせ、再び目を向けると、馬鹿でかい鉈を持ち、虚無僧のような天蓋を被った大男がこっちを見た。


「「ひっ⁉」」


 その瞬間、虚無僧は大鉈を振り上げ、俺たちに向かって猛ダッシュしてきた!


 ┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


「のわわあああああ!!!!」

「ちょっと、ジョンジョン! あんたの出番よ!」

「や、やめろって! 押すなよ!」


 あっという間に目の前に来た大男は、躊躇いなく古びた大鉈を振り下ろした!

 ――ガチンッ!


「うぉおおお……!」


 俺はルシール改で受け止めた。

 す、すげぇ力だが……、ん? いけるかも……。


「ぬぅん!」


 渾身の力を込めて押し返す。

 ちょ……俺、何か力強くなったかも?

 徐々に大鉈は大男の方へと近づいていく。


『フシュルル……』


 天蓋から獣のような息が漏れる。


「こ、こっちは……コツコツ筋トレ積み重ねてんだよ! 舐めんなぁーーーっ!!」


 一気に押し返し、大男が体勢を崩した。

 すかさず、俺は前蹴りを入れ、倒れた大男をフルボッコにした。

 大の字になった大男に、紅小谷がとどめを刺す!


「これで終わりよ!」

『ウゴフッ⁉』


 死の大鎌が大男の胸深く突き刺さると同時に、黒い霧となって霧散した。


「ふぅ~、やったわねジョンジョン、見直したわ」

 差し出された紅小谷の小さな手を取り、起き上がる。


「へへ、筋肉はすべてを解決するっていうからな」

「なによそれ?」

 紅小谷がふふっと笑う。


「ネットで見た」

「ったく、早く行くわよ」

「あ、ちょ、待って」


 *


 奥へ進んで探索していると、着物姿の蛙や三味線を持った鼠など、他では見られないような変わったモンスに遭遇する。二人では厳しい場面もあったが、持ち込んだ大量のアイテムを駆使しながら、俺達はどうにかやり過ごしていた。


「やっぱり禁足地ってだけはあるわね……段々と手強くなってきたし……」

「うん、ちょっと休憩しとこうか?」

「そうね」


 広い和室で辺りを見回しながら、腰を下ろす。

 探索者のバックパックからポーションを取り出し、紅小谷に一瓶渡した。


「さんきゅー」


 二人で一息に飲み干し、はぁーっと大きく息を吐いた。


「そろそろ、ラキモンの出番かもね」

「大丈夫かな?」


 俺はバックパックの中に向かって、

「おーい、ラキモーン?」と呼びかけた。


 すると、バックパックからもぞもぞとラキモンが顔を出す。


『うぴょ? 呼んだラキ~?』

「なあ、このダンジョンに俺達の他に誰かいるかわかるか?」


『ぴょ? ラッラッラ、ダンちゃん、そんなのわかるわけないラキよ~、ラッラッラ……』

 ラキモンは楽しそうに笑っている。


「え……」


「で、出口は……わかるわよね?」

 慌てて紅小谷が訊ねると、

『んーっと……、ここはダンちゃんのダンジョンラキか~?』と、キョロキョロしながら首を傾げた。


 俺と紅小谷は顔を見合わせた。


 ――まさかのラキモン何の役にも立たない説⁉


「ちょ、紅小谷……ラキモンには特別な力があるって……」

「し、知らないわよ! ネットに書いてあったんだし……それにあんただって、あの記事みたでしょうがっ!」


「ぐ⁉ ま、まあ、喧嘩してもしょうがないか」

「そ、そうね……少し冷静になりましょう」


「今は出口を探すよりも、リーダーを探さないとな」

「どこまで続くのかわからないけど、奥へ進むしかないわね」


 お互いの顔を見て頷く。


「よし、行くぞラキモン」

『ラキ~?』


 バックパックから身を乗り出したラキモンの頭を撫でる。

 俺達はさらに奥へと足を進めた。

次話4/21(水)12時です。

どうぞよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 1週間くらいラキモンほっといたらダンジョンの構造理解して教えてくれるんでしょうかね
[一言] これこのダンジョン内でラキちゃんにご褒美あげたら匂いにつられてここに元々いる噂の元のラキモン出てきそう
[一言] これアバンチュール的な何かあんのか?
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