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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
ダンジョン病棟編

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ダンジョン病棟編① 話題のダンジョン

お待たせしました、ダンジョン病棟編、全6話でお送りします!

よろしくどうぞ!

 開店準備をしながら、俺は小さなため息をついた。

 条例がお蔵入りになってからというもの、世間ではにわかにダンジョン・ブームの兆しが見え始めていると言うのに、どうもいまいち乗り切れていない感が離れない。


 メダルブームの時は、あれだけダイバーでごった返していたわけだし、お客さんがいないわけではない、ウチに来ていないだけなのだ……。


「はぁ……」


 先日、紅小谷から聞いた『ダンジョン病棟』なるものを調べてみた。

 調べると言っても、スマホで簡単に検索しただけなのだが。


 俺はスマホを取り出して、ダンジョン病棟のサイトに飛んだ。


―――――――――――――――――――――――――


リピーター続出‼ 阿鼻叫喚⁉ 恐怖の連鎖がクセになる⁉


『 ダ ン ジ ョ ン 病 棟 ~君は生きて帰れるか?~』


 当ダンジョンは、『ホラー』をメインコンセプトとして、大胆なフロア構成、内装、モンス構成、及び配置物等、細部に至るまで、一流のフロアメイクデザイナーを起用し、他にはない極上のエンターテインメントを追求しています。


 ※当ダンジョンでは、専属の医療スタッフが常時出動待機しております。


―――――――――――――――――――――――――


 これですわw

 もうね、完全にプロというか、サイトの作りからして違うんですわ。


 なんか絶叫してる動画とかも流れるし、バックで心臓の鼓動音とか聞こえてくるんだよね……。


 まるで映画の特設サイトみたいで、好奇心をガンガンに煽ってくる。

 しかも、ホラーに特化している分、他にはない凄みを感じるんだよなぁ。


 大抵なら、フロア構成やモンス構成もサイトで紹介していそうだけど、このダンジョンではそれを徹底して隠していて、SNSでも『当店のモンス構成について他言しないで欲しい』などと呼びかけている。


 これだけなら誰かうっかりバラしそうなものだけど、何故か情報は流れてこない。

 まるで、訪れたダイバー達も一緒に面白がって隠しているようにも思える。

 秘密の共有? もしくは満足したお礼?

 どんな理由があるにせよ、今、一番熱いダンジョンなのは間違いない。



 本日最後のダイバーを見送り、ひとり閉店作業を行っていると、矢鱈さんと紅小谷がやって来た。


「おっつー、ジョンジョン」

「お疲れ様~」


「あれ、二人とも……どうしたんですか?」


 陽も落ちたというのに、矢鱈さんが白い歯を輝かせた。


「また近いうち海外に行くから、ジョーンくんとご飯でも食べておこうと思ってね」

「まぶっ! あ、いや……それは嬉しいです! もう終わるので、ちょっと待ってて貰えますか?」


「もちろん」

「お腹ペコペコなんだから、早くしてよねー」


「わ、わかった」


 紅小谷に急かされながら、俺は猛スピードで作業を終わらせる。

 デバイスをCLOSEにして、フェンスのカギを掛けた後、俺達は近所の居酒屋へ向かった。


 *


「本場地鶏の唐揚げ、枝豆、ホッケ、んー、紅小谷は?」

「矢鱈くんの横からつまむー」


「ジョーンくんは? 何か頼む?」

「はい、ミニお好み焼きとミニピザのハーフ&ハーフ、フライドポテト、刺身の盛り合わせをお願いします」


 紅小谷は恐ろしいものでも見るような目で俺を見る。


「あんた、どんな胃してんのよ……」

「え? そ、そんな変だったかな?」


 矢鱈さんが苦笑しながら、

「ま、まあまあ、それより乾杯しようよ」と、ジョッキを持つ。

 俺と紅小谷がジョッキを持つと、矢鱈さんが音頭を取った。

「じゃあ、色々大変だったみたいですが、無事業界も盛り上がっているって事で、みなさん頑張って行きましょう、乾杯!」


「「カンパーイ!」」


「プッハーーーッ!」

「く~、もう八割堪能したわ」


 紅小谷は口の周りに泡の髭を付けている。 


「お待っせしましたぁ! はい、本場地鶏ぃ、はい、枝豆ぇ、はい、ホッケェ~、残り後でお持ちしまぁす」

 板前風の店員が料理を運んで来た。


 早速、矢鱈さんが唐揚げを口に入れる。

「ほふほふ……うん、ほれはふまい!」

「え、わたしも食べよっと」

 横から紅小谷が唐揚げを一個、パクっと食べた。

 美味しそうに目を細めて、

「んふーっ! 柔らかーい!」と手足をバタバタさせている。


 前から不思議に思ってたが、紅小谷と矢鱈さんって、どういう関係なんだろう?

 恋人ってわけじゃなさそうだけど、友達にしては距離感が近い気がする……。


「あのー、お二人って知り合ってから長いんですか?」


「ん? あぁ、そうだね、紅小谷がこんな小さい時から……」

「あーーーーー! 言わなくていいから! ちょっとジョンジョン、そんなことよりダンジョン病棟のことは調べたの?」


 露骨に話を変えられてしまった……。


「うん、あれから一応調べてみたよ」

「で、どうなの?」


「どうって?」

「どうってじゃないわよ、感想よ、感想、何かあるでしょ!」


 イライラしているのか、ブチィッと唐揚げを噛み切る紅小谷。


「うーん、とにかく凄そう、かな。何だろう、サイトも金かかってる感じがしたし、徹底してるっていうか。何か一般的なダンジョンっぽくないというか、協会のサイトにも登録してないしさ」


「ジョーンくんはまだ行ってないの?」

「はい、茨城ですもんね、中々簡単には……」


 と、そこに残りの料理が運ばれてきた。

「はぁい! お待たせです! ミニお好み焼き、ミニピザのハァーフ、フライに、刺身盛り合わせぇ! ごゆっくりどうぞ!」

「ありがとうございます」


 ポテトを咥えながら、テーブルに料理を並べる。


「ったく、中学生みたいな頼み方してんじゃないわよ!」

「ははは……」


 紅小谷はそう言いながらも、ピザに手を伸ばした。


「定休日と繋げて二日くらいなら、休んでもいいんじゃない?」

「そうよ、今すごい話題だし、見ておくべきね」


「うん……確かに」


 その時、隣卓からもダンジョン病棟の話題が聞こえてきた。


『でさー、こいつ泣き出しちゃって』

『やだ、やーだ、言わなーい、そいうの言わなーい!』


『病棟って茨城だよね? ヤバくない?』

『やべぇよ、マジ恐怖だし』

『えーヤバーい』


『どんなモンスでんの?』

『お、来た来た、それなー! 実はさぁ……』


『いえませーん!』


『『なんだよ~! っざけんなよぉ~!』』

『はははは!』


 俺は隣の大学生らしき人達の会話を聞いて確信した。

 これは……本物だと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本物ですか・・・ しかし、近頃はブームになるとそれはそれで定着前に寿命が尽きるようなことも多い気がするので、活きのいいうちに茨城で実体験しなかればいけないですかね
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