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某大手ダンジョンをクビになったので、実家のダンジョンを継ぎました。  作者: 雉子鳥幸太郎
第四部

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101/214

いよいよスタートです。

 嵐の前の静けさというやつだろうか?

 カウンター岩の中、花さんと二人固唾をのみながらその時を待っていた。


 ン、ウン……。

 花さんが喉を鳴らす音が響く。

 本当にこれで良かったのか? お客さんたちは集まってくれるのか?

 俺はうっすらと手の平にかいた汗を拭いながら、身動きできずにいた。


 ザ、ザ、ザ、ザ……。

「ジョ、ジョーンさん⁉」

「き、来た⁉」

 獣道から、大勢の足音が聞こえてくる。

 慌てて外に出ると、そこには常連さんをはじめ、初めて見る顔のダイバーたちが連なっていた。


「は、花さん! 来るよ!」

 カウンター岩に戻り、接客の体勢を整える。

「よぉ! 店長! 何かヤバいんだってな?」

「豪田さん! ありがとうございます、来てくれたんですね!」

「おいおい、こんなお祭り見逃すわけないだろ?」

「そうね、有給使い切ったもんね」

 豪田さんの後ろから、ひょこっと森保さんが顔を覗かせた。


「森保さんも! いらっしゃいませ」

 花さんが嬉しそうに挨拶をした。

「ひさしぶり~」

 森保さんが小さく手を振る。

「店長、それで――下はそんなにヤバい状況なのか?」

「はい、もうギッチギチで……」

「よっしゃ! 燃えてきたぜ! 一番槍は俺が貰うぞ!」

 豪田さんは獣神の斧を掲げて、声を張り上げた。

「うるさいわね、ほら、後詰まってんだから」

「あ、ああ、悪いな」

 順番待ちをするダイバーたちに、豪田さんは照れくさそうに頭を下げ、

「じゃあ、店長! いってくるわ!」と、森保さんと数名のダイバーを引き連れてダンジョンへ走っていった。


 豪田さんたちを見送り、順番待ちで並ぶダイバーたちの受付を済ませていく。

「はい、こちらですね。お気をつけて!」

「いらっしゃいませ、順番にご案内しまーす」

 花さんもやる気満々で声を張る。

 慌ただしく、カウンター岩前は活気に満ち溢れていた。

 身体を動かしていると次第に暑くなってくる。

 俺はTシャツ一枚になり、充実感を噛み締めながら接客を続けた。


「ジョーンくん、久しぶり」

 聞き覚えのある声に目を向けると、直射日光並の怪光線が俺を襲う。

「うわーっ!」

「はは、ジョーンくんは大袈裟だなぁ」

「や、矢鱈さん⁉」

「元気だった?」

 こんがりと日焼けした矢鱈さんが笑っている。

 相変わらず、というか、さらに白さを増した綺麗な歯が、日焼けした肌とのギャップで際立って見えた。

「近くに来てたからさ。何か面白そうなことやってるね?」

「いや、不幸中の幸いというか、何というか……」

 俺は事の経緯を矢鱈さんに説明した。


「ふーん、なるほどね。じゃあ、そのサイコロを止めればいいんだ?」

「はい、でもモンスが本当にギッチギチで……」

「OK、OK。じゃあ今日はあれでいくかな?」

「え?」

 矢鱈さんはタブレットで自分の武器を眺めながら、「これにするよ」と言った。

 見ると、そこには『みなごろしの鉄球+999』とある。

 こ、これって、鉄球魔人からドロップするやつ⁉

 いまさら驚かないけど、矢鱈さんは本当に何でも持ってるな……。


「わ、わかりました!」

「あ、鎧はいつもので、盾はいいや」

 俺は「はい」と頷き、リフレクトメイルを取り出す。

 みなごろしの鉄球はバスケットボールくらいの鉄球が鎖で持ち手のグリップと繋がっていた。

 おぉ、結構重いな。

 ふらつきながら装備を渡すと、矢鱈さんはひょいと片手で鉄球を持ち、

「ジョーンくん、筋トレさぼってるね?」と笑う。

「い、いや、お恥ずかしい……」


「ははは、じゃあ、僕もぼちぼち行ってくるよ」

「あ、はい! いってらっしゃいませ」

「いってらっしゃいませ」

 矢鱈さんはゆっくりとダンジョンへ消えていった。


「すごいメンバーですね!」

 興奮気味に言う花さん。

「うん、これなら時間の問題かも知れないね」


 それから後もお客さんは途切れずにやって来る。

「いい感じに来てくれてますねー」

「うん。でも、もう少しで落ち着きそうだし、今のうちに休憩取っちゃおうか?」

「あ、はい、じゃあ、少しいただきますね」

「いってらっしゃい」

 花さんがエプロンを外して、昼食を食べに行った。


 いつもはウチの家でまかないのうどんを食べることが多いのだが、今日はコンビニに行くそうだ。

 女の子だし、炭水化物ばっかじゃなぁ……。新しいメニューを考えるか?

 そんな事を考えながら、俺はデバイスで十六階の様子を見た。

「さてさて、どうなってるかなー……うぉっ!」


 入り口からはみ出しそうになっていたモンスが、迷宮エリアの中間地点まで倒されていた。

「さすがに早い!」

 見ると、先陣はやはり豪田さんたちのグループ。

 野獣の如く、斧を振り回す豪田さんに、的確な剣さばきでモンスを減らしていく森保さん。

 サポートに回っている仲間のダイバーたちの動きも素晴らしい。


「あれ、矢鱈さんは……」

 モニターに矢鱈さんの姿を探すが、見当たらない。

 どこに行っちゃたんだろう?

 不思議に思いながらも、他のダイバーたちに目を向ける。


 改装の際、中央地点に三つの侵入口を作っていたのだが、現時点で見えているのは豪田さんたちがいる真ん中の入り口のみ。

 左の入り口にいるダイバーたちは、詰まったモンスを引き抜く係と、引き抜かれたモンスを倒す係に分かれて連携を取っていた。


 変わって右の入り口のダイバーたちは、それぞれが目につくモンスをひたすら倒している。

 うーん、このモンスの数、相当に厄介だ。

 それに、詰まって身動きが取れなくなっているモンスが倒されると同時に、解放されたモンスが雪崩のように押し寄せる。

 これは倒す順番も考えないと厳しいぞ……。


 その点、左のダイバーたちと豪田さんたちは上手くやっているが、右側のダイバーたちは連携不足が否めない。後ろには手を出しあぐねているダイバーたちもいる。

「交代交代ですればいいのになぁ……」


 そうは言っても初顔合わせだろうし、そうそう上手くはいかないのかもなぁ。

 そうだ、矢鱈さんは一体……。

 俺は他のフロアに矢鱈さんがいないか見てみることにした。


「えーっと……」

 うーん、見つからない。本当にどこに消えてしまったんだ?

 と、その時、六階の迷宮フロアにある小部屋から矢鱈さんが出てくるのが見えた。


 あれ、こんなところで何をしてたんだろう……。

 矢鱈さんはストレッチをしながら、のんびりと迷宮を歩いている。

 何かを待ってる、のかな……?

いつもありがとうございます!

GWも終わり、お仕事など忙しいと思いますが頑張ってください!


新作も連載中です、良かったら読んでみてくださいね~。

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