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ネガティブ小噺【人生生きてりゃ良いこと無い】

作者: 橘一真

はいどーも皆々様。

今宵は私のチンケな小話に付き合っていただけるそうで。

え?私ですか?ここでは不運なネガティブ少女ってことにしておいてくださいな。

え?少女じゃないって?ケッタイな事言うねお客さん。

こうして声しか聞こえない空間なんだから少女でいいじゃないですか。そのほうがお互い幸せですよ。


さて、今からお話させていただく話は、


『人生、生きてりゃいいことない』


ってお話です。

え?何?「いいことある?」と間違えてるんじゃないかって?

いやだなぁ旦那さんいやお嬢様かな?まぁどっちでもいいか。

そんなこと言う輩は大体既に『成功』してる輩なんでさ。

いや別に私はそれを妬むつもりもありませんし足を引っ張るつもりもありませんよ。

ただね、無闇矢鱈にそういうことを言っちゃいけないってことをいいたいんでさ。

『一寸先は闇』

とも言いますしね。


とどのつまり今の私がポジティブに

『人生、生きてればいいことあるさ!!』

なんて言えやしないし、その言葉が軽すぎて何の重みもありゃしない。

私が言えるのは精々

『足元を掬われるな』

ぐらいですよ。


なんだって?そこに座って話してるんだから少しぐらいはいいことあったろって?

これは失礼しました、ですがね、これはこういうシステムなんですよ。

私みたいなもんは……そうですね穴をほってそこから喋るぐらいが丁度いいぐらいなんですが……こうね、座敷の下に穴を掘ると怒られてしまうんですよ。

恐らく私の見立てでは不発弾とかも見つけちゃうんですよね。

それでもなぜここに座ってられるかって?それは私が成功していない話を延々としているからにすぎませんよ。

あら、そこのお嬢さん随分と幸せそうだね。彼氏でも出来たかな?

でも、これだけは注意してくれ。

『三日以上日持ちさせるのは餅と同じで大変だぞ」

と。

いや別に私、餅のこと詳しくないんですけどね。



そうですね、では皆様には今日成功しなかった話を一つ。

まぁ私はお金もそんなに無いものですからね、それが表情に出るんでしょうか?街をフラフラ~フラフラ~っと当てもなくぶらついていたんですよ。良さそうな雑誌があれば立ち読みし、マッサージ屋の前の図を暗記したりとまぁそんな日常です。

で、そんなある日のこと喫茶店の食用サンプルを見ている私にある男がこう声をかけてきたんです。

「お嬢さん、今空いてますか?よければこの喫茶店でお食事でもどうです?」

と?そんなこと言われ慣れてない私は蛙みたいな声を上げてその場から逃げ出そうとしたんですが、

「ちょっと人とお話がしたくて、お食事代はお出ししますので」

そこで運悪く私の腹が鳴ってしまいましてね。まぁこれは不幸というよりも笑い話でさ。

そんでまぁちょっとひょろっとした優男、世間で言うところのイケメンですかね、について行って食事を御馳走になり話を聞いてみると、やれツボを売っているだ、やれ幸運を呼ぶ代物だと胡散臭い話になってきましてね。話の種にでもなるだろうと思ってついて行ったんですよ。

そしてその幸運を呼ぶツボのお値段なんと500万円。

私の年収より高い代物で、流石にこれを買えっていうのは無理な話だ。

「私がそんなお金持っているように見えますか?」

ってそれこそ慣れてない男との会話だ。蚊の鳴くような声できいてみたんでさ。

ってそこは笑うポイントじゃないぜ皆々様。


ここに座ればこうして喋ってもいられるが席を外せば根暗なロンリーガールと来たもんだ。

なぜ笑いが起きるかはさておいてそんなこんなで話を勧めているとですね、

「月々一万円からのローンでも大丈夫ですよ、お嬢さん」

こうきたもんだ。

そこで言ってやったんだ

「……ローンの審査落ちると思いますけどやってみますか?」

ここまではっきりと言ってはいないですが、こうやって切り替えしたところ相手もみるみる笑顔になってな、いやー優男の笑顔ってのは絵になるもんだと思いながら申込用紙に記入したんだ。

ここで闇金とかだったら流石に逃げようと思ったが、どうやら真っ当な会社との取引らしくて、その審査を待っている間に珈琲やら茶菓子やらでもてなされて30分ぐらい立った所で審査結果が帰ってきたんだ。

「もちろんローンは組めませんと」

その後も優男は何とか笑顔を保ちつつ提携会社に色々交渉をしていたんだがまぁかれこれ2時間ほど全部ダメで、焦燥しきった顔で私を送り出したね。


え?全然不幸じゃないって?

いやいやこの話にはまだ続きがありましてね。

後日友人の家に転がり込んで、インターネットを使わせてもらいましてね

あの壺のことを調べてみたんですよ。なにせ記憶力はいいですからなんかこう詐欺事件にでもなってないもんかと、そうすれば話のネタにできるとね。

そしたらあったわけですよ、満面の笑みの優男と美女の写真が、

何やらあの壺本当に幸運の壺だったらしく、その美女が優男にコロッといっちまってその壺を買った翌日に宝くじが大当たりしたそうな。

いやー、本物ってのは実在するそうで、そして持っている人のところに転がり込む。

今日ここにお集まりいただいた皆々様がぜひ持っている側の人であることを期待してこの話を終わりにしたいと……え?なんだって私の今までの一番の幸福はだって?

えー……



「こうして皆様に噺を聞いていただけているのが私の一番の幸せであります」



さて、いい感じにお茶を濁した所で私の噺はおしまいおしまい。

皆様外で私と思わしき美少女を見かけても決してお声がけなさらないでください。

蚊の飛ぶような声で叫んで逃げてしまいますので。

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