好きと好きの境界線
「ねぇ、likeとloveって何が違うのかな?」
私は彼に問いかける。
私の隣で本を読んでいた彼はぱちくりと目を瞬かせた。
「……急にどうしたんだ」
「いや、ね?私達ってずっと一緒に居るじゃない。幼馴染みだし。でもさ、もし幼馴染みじゃなかったら、貴方は私の隣に居るのかなって思って」
彼は少し考えて。声を出した。
「……どうなんだろうな。でも、likeとloveなんてほぼ意味が同じだぞ?だからあまり違わないと思う」
「んー……でも、likeは好き、loveは愛してるって意味だよ?日本語ではまた意味が変わっちゃう」
「確かにそうだが。そこは人によって意味が変わってくるだろ?もし、likeとloveが別々で境界線があるとしよう。日本語なら好きと好きだが、境界線なんて曖昧でいつ英語で言うlikeがloveに変わるか分からない」
「……そういうもの?」
「俺はそう思うだけだ。君はどうなんだ」
私は考える。でも、彼の考えもあっているとは思う。しかし。
「でもさ、絶対に境界線はあると思うよ、私はそう思う」
「……理由は?」
彼が話すよう促す。
ぽつりぽつり、私は言葉を紡ぐ。
「私は好きという感情は色んな感情の延長線だと思うの。逆も当然あるけど。嫌いな人だったのに好きになる。好きだったものが苦手になる。色々あると思うよ?でもさ、likeとloveではしっかり境界線はあると思うの。貴方に一つ質問だけど、私の事をlikeじゃなくてloveになれる?」
「……分からない。でも、今は見れないと思う」
「そうでしょ?もし見れるようになったら何かの一線は超えてると思うの。ねぇ。右手貸して」
彼はよく分からないまま右手を私に差し出す。
私は手を取って自分の左胸に押し当てた。
「……!?」
彼は目を見開いて、私の手を振り払う。
「なにを急に……!?」
私は笑う。
「今、貴方は私の手を振り払ったでしょう?」
「……ああ」
「それは貴方がlikeだから。loveならば好きって事なのだから、抵抗はしないでしょう?」
「……勘弁してくれ……それは、極端な例だ」
「そうだけど、わかりやすいでしょ」
彼は黙った。急な行動にビックリするしかないのだから。
「次からはしないようにしてくれ……」
「ごめんね」
一応は謝っておく。
でも、境界線なんて、本当は存在していないのかもしれない。
でも、境界線は確かに存在はしているのだ。
そんな事私達で考えたって、答えが出るはずもないのに。
私は、彼のことが好きだ。
先ほど話していたことに当てはめると、恐らく、loveの方で。
しかし、いくら私が彼を望んだって、お互いがloveで無ければただ一方的に愛を注いでいるだけ。穴の空いたバケツに水を注ぎ込む様なものだ。
その愛情を受け止めるためには、また彼の愛がいるのだろう。
そんな取り留めもないことをぽつんと考えていた。
END