ひみつ
この事は誰にも言わずに、絶対に秘密にしておいて欲しいんだけど、聞いてくれる?
あのね、私には実は好きな人がいるの。
その人は私より3つ年上で、本当に素敵な人。
落ち着いた雰囲気や、知識が豊富なところ。
他にも、スラッとした体や、きれいな黒髪。
ふいに見せる表情は、すごくミステリアスで……知らない内に彼に夢中になってしまっていたんだ。
だから私は勇気を出して伝えたんだ。
あなたの事が好きです。って。
でもね、フラれちゃった。
彼は、何度も何度もごめんねって謝ってくれた。
どうして?と聞くと、好きな人がいるんだって言ってた。
今までそんな事聞いたこと無かったから、本当にショックだった。
毎日毎日、涙を流す日々だったな……。
でも、きっと彼が好きになる人だから、私より遥かに素敵な人なんだろう。そう思った。
そう思って何度も諦めようとした。
だけど……
ダメだった。
どうしても彼の事が好きで好きで……
彼以外考えられなくて……
それから何年か経った後、私彼にもう一度告白した。
私、やっぱりあなたの事が諦められなかった。
好きなんです。って。
その時、彼は本当に困った顔をしていた。
彼はまた前みたいに何度も何度もごめんねって謝っていた。
どうして?と聞くと、好きだった人と付き合えたんだって。
そんな事初めて知ったから、本当にショックだった。
また前みたいに毎日毎日、涙を流し続けた。
でも、彼と付き合えた彼女は本当に幸せなんだろうな。
あんなに素敵な人、なかなかいないから。
だから幸せになってほしい……。
そう思って、私は自分の思いを断ち切ろうとした。
だけど……
ある日届いたんだ。
おしゃれな封筒に包まれた、1通の手紙。
すごく嫌な予感がしてたまらなかったけど、知らない内にその封筒を開けてた。
それを見て、私は絶望した。
彼、結婚するんだって。
式の日時と場所が書かれた手紙。
それを見て私は絶望した。
諦めるなんて言いながら、結局諦めることなんて出来なかった。
ずっと好きだった。
もう涙なんて流れなかった。
かなり前に枯れ果ててしまったんだろうね。
私はきっとこれから先も、彼以外を愛すことは出来ない。
彼の幸せを願うことさえも出来ない。
私は、もう壊れてしまったんだ。
この事は誰にも言わずに、絶対に秘密にしておいて欲しいんだけど、聞いてくれる?
彼が今、目の前で動かなくなっているの──。