侵略者
けたたましいサイレンと怒号が鳴り響き、寝ていた者達も戦闘の準備を始める。
「おい、まさか」「そのまさかさ。ここまで、来たんだよ。あいつらが」ここは、最後の砦だ。あいつらが侵入してしまえば、被害は必ず出る。
「行くぞ」隊長に呼ばれ、俺は初めて最前線に赴く。怖い。でも、大丈夫だ。
そう、思わざるを得なかった。
俺はあいつらを初めて見た。あいつらは黒く分厚い装甲をまとい、見た事の無い黒い怪しい物体を持っていた。
一人が何か叫ぶと響きわたる爆音と共に突然、隣の仲間が体から血を流し倒れた。何が起きたんだ。思考が回り始める前にまた爆音が響く。また一人、倒れる。
と、これを合図に次々に爆音が響き隊長もみんな血飛沫を上げて、その場に崩れ落ちた。
絶望した。こんなのに勝てる訳が無い。そして、俺は逃げた。「脱兎の如く」とは正にこのことだった。
しかし、俺はただの脱走兵だ。
数日後、俺は村に戻った。建物は全てを焼かれ、仲間達は皆変わり果て、もう街の面影は殆ど無かった。
俺の心は、怒り、憎しみ、復讐で染まっていた。いつか絶対に復讐してやる。絶対に殺してやる。全員殺してやる。
でも、それまでは何処かこいつらのいない場所へ逃げて――――
走る、駆ける、逃げる。と、その瞬間に目の前に広がる四角い創造物と光。
全身の血の気が失せた。嫌だ、そんな――――
そうか。あいつらからしたら俺達などすぐに掻き消す事が出来る種族だったのか。
俺はあの日、敵の名を知った。俺達を破滅に追いやったあの、侵略者の名を。
その名は、ニンゲン。
俺はお前等を許さない。
絶対に。




