出発
陸斗たちは真瑠から言われた通り、関門所へ向かった。
関門所の役割は外の雪原への通行を管理、そして集会場としての役割がある。
陸斗たちは関門所に入ると周りを見回した。
真瑠の言っていた『リベラシオン・エグリース』のメンバーを見つけるためだ。
「あ、あれじゃない?」
先に見つけたのは柚季だった。
『リベラシオン・エグリース』のギルドメンバーには共通のマークが付いたフード付きマントを着用している。真瑠が最初に着けていたものと同じものだ。
マークとは、翼を広げた天使に『LE』の文字が付いているもの。
三人がマントのマークを確認すると、その人物へと接近した。
「すみません、もしかして『リベラシオン・エグリース』の人ですか?」
テーブルカウンターに腰掛ける青年に声を掛ける。彼は手にグラスを持ち、顔が若干赤い。おそらく酒を飲んでいたのだろう。
「ん?なんらテメーら?」
既に酔いが回っているのか上手く呂律が回っていなかった。
「えっと……俺たちギルドに入りたいんです。『リベラシオン・エグリース』に」
ギルド名を告げるとトロンとしていた眼に鋭さが宿った。
「許可証は持ってるか?」
この答えは事前に予想していた通りだった。
『リベラシオン・エグリース』は超大型ギルドで、入信者を厳しく制限しているのだ。
人が多くなれば仲間内で亀裂が入りやすくなる。一枚岩でなければ簡単に崩壊してしまうのだ。だがそれも、全員が同じ目標である儀式を受ける資格を得るためなら、となんとか分裂せずに済んでいる状態である。
そのため、余計な不和を生まないようにするためギルドメンバーが選んだ人しか今はギルドに入ることができない。
その話を聞いていたからこそ、真瑠から事前に許可証を三枚貰っておいたのだ。
「はい。……あ、ちょっと待ってください」
陸斗がポーチから許可証を出すと、突然振り返って青年から少し離れる。
「な、何よ。どうしたの?」
陸斗は柚季と美姫を連れて、ひそひそ話をするように集まった。
「今回、美姫には街に残ってほしい。理由は二つ。一つは、美姫は目立つ存在だ。これは言わなくても分かるよな?」
「まあ、こんな子供が変な宗教に入信しよう、なんておかしな子として見られるわね」
「美姫ちゃんが目立つと同行者の私たちも目を付けられる。そしたら調査が難しくなるってこと?」
「まあ、簡単に言うとそうだ。そして二つ目は、俺たちがギルド内で何かあった時に外からの応援が欲しい。ノブもこの街にいるっていう可能性は低いから、美姫にお願いしたい」
「わかったわかった。そんな理論付なくても陸斗から言われれば残るわよ」
なんとか美姫の理解を得られて陸斗はホッとする。
「ありがとう。じゃあ、何かあったら頼むよ」
「がってん!」
話がついたので再び青年の元へ行く。
「こそこそ話は終わったかい?」
酔った顔のまま鋭い眼差しで三人の顔を見て回る。
変な疑いを持つこともなく青年は再びグラスを傾ける。
「俺とこっちの柚季が入信希望です」
「ほう、じゃあそっちのちびっ子はなんだ?」
「ちびっ――!?」
「あ、えっと送り迎えですよ!今回で俺たち、別々の道を歩むことにして、その別れに、というわけで」
美姫の口を抑え、即興の言い訳をまくし立てると青年はまた鋭い眼差しを向ける。
「ま、ええけどよ。じゃあ、アンタら含めて今日は三人だな」
「三人?」
「はい……私です」
青年が肘掛けるカウンターの少し離れたところに小柄な少女が座っていた。身長で言えば美姫とあまり変わらないくらいだ。
「えっと……とりあえず俺の名は泰樹だ。手短に自己紹介しな」
青年がまず先程の少女に目を向ける。
「私は紗亜弥です。十三歳です。よろしくお願いします」
「私は柚季。年齢も言う流れなのかな……。十七歳です」
「俺は陸斗。柚季と同じ十七歳です」
一通り自己紹介が終わると、泰樹がログウォッチを確認する。
「今が四時か……。こりゃ夕食には間に合わねーな」
泰樹は面倒くさそうにため息をつく。
自然と、紗亜弥と陸斗と柚季は一塊に集まっていた。
「これからギルド本部に移動する。だいたい移動時間は四時間くらい?一応乗り物に乗るわけだが、雪原の中じゃ寒さは変わらねぇ。だからまずはこいつを着てもらう」
泰樹はポーチから自分が着ているのと同じ濃緑色のマントを三枚取り出す。それをみんなに配ると、泰樹は木製の扉の前に佇む人物の方に向かった。
陸斗たちは急いでマントを羽織り、泰樹の所まで行く。
「よし、準備は出来たな」
泰樹が三人の装備を見て回すと、振り返り扉に向かう。すると、扉の端の人物――おそらく門番だ――に目配せを送る。
「開門!」
突如として門番が声を張る。当然声は関門所全体に響き渡り、周囲の人たちが揃って視線を向ける。
若干この状況に羞恥心を覚えるが、すぐにそんなことを考えられなくなる。
ゴゴゴ、と重たい音を立てて扉が開く。扉の隙間からは外の吹雪が入り込み、周囲の温度がガクッと下がったのを感じた。
開けられたのは最小限人一人が通れる分だけだ。
「よし、乗り物は外だから早く出ろ!急がねぇとここにいるみんなが凍え死ぬぞ!」
逆風を押し返しながら四人は門を潜る。
新キャラ紹介
大神大樹(27)
『リベラシオン・エグリース』のギルドメンバーで、役割は新規入信者の移送。酒が好きでだいたいいつも飲んでる。本人はめんどくさがりだが、仕事を投げ出したりしたことはない。




