6話 香織の本音
「ふざけないで!!私の気持ちなんてわからないでしょう!!」
「そっちこそふざけんな!!だれもお前のことを嫌いになんてなっちゃいないんだよ!!」
男女がケンカしている。
「嘘よ!!さっきだってあんなこと!!」
「・・・!!聞いてたのか。あれは・・・」
「「香織が亡くなればいいのに」・・・そう言ったわよね!!」
「「香り(匂いの方)が無くなれば(消臭できれば)良いのに」って意味だ!!別にお前のことを言ったんじゃない!!」
紛らわしいわ。
「もう・・・何も信じられないよ。楓も、静也も、ママでさえも!!」
「俺を信じろとは言わない。でもこれだけは言える。皆お前が大好きだ。だからこんな出しゃばるような真似をしてるんだ」
男は諭すように女に語りかける。しかし女はパニックに陥っているため、聞く耳をもたない
「嘘よ!!どうせ私なんて・・・・・・」
「生まれてこなければよかったんだ!!!!」
・・・・・・このやり取りが起きた原因の事件。それは一日前にさかのぼる
~3年2組教室・放課後~
「静也、かえろ」
「あ、ちょっと待って、用事があるから」
ここは香織と静也の教室。授業が終わり、部活もないので帰ろうというタイミングだった
「用事・・・ねぇ」
香織はおもむろに携帯を取り出し、ある番号にかける
『はい、今世紀最大の馬鹿こと楓です』
「今世紀最大の馬鹿が何でトップ高校主席なのよ。万力にでもかけてあげましょうか??」
『おお、その突っ込みは香織か。どうした??』
「登録しなさいよ・・・ってそんな話はいいんだった。静也が」
『ああ、アイツ告られてるぞ』
「何で!?」
『お前たち全員に念のため小型カメラを忍ばせてある。お前にもついてるぞ』
「念のためって・・・・相手は??」
『2年4組18番。細田優香だ。容姿は中の下、趣味が若干オタク要素を含んでいるが友達は多い。成績はあまりよろしくないみたいだな。周囲に取り巻きが居ることで有名だ。なんでもどっかの財閥の令嬢なんだと、まぁウチからすればカス同然だが。それと気になる情報がある。どうやら思い込みが激しいらしくてな。いわゆるヤンデレ持ちだ。事実上お前たちの通う中学校のトップらしい。刃向かったやつはクラスメイトから徹底的にシカトされ、いじめられるらしい』
「ごめん、突っ込みたいところはすごくいっぱいあるんだけど一言で済ますね。化け物じみた収集能力ね。ストーカーみたい」
『そうか??ちょっといろんなところに知り合いがいるくらいなんだが』
「アンタのいうちょっとは世界クラスでしょう。歩けば三秒に一回は知り合いに逢うでしょ」
『残念、毎秒五人は確実に会うぞ』
「世界中の人と友達なの?」
『・・・お、香織、遊んでる暇は無いぞ。静也が断った』
「そりゃそうでしょ。戸琴さんいるんだから」
『・・・・・・香織、いますぐ向かえ。細田の奴、刃物持ってやがる』
「刃物持ってるヤンデレの所に妹を向かわせるな。第一そこらへんの刃物じゃ傷なんて付かないでしょ」
『・・・ちがうぞ。自分の服を切り裂いてる』
「・・・・静也を変態に仕立てる気だ!!」
『お前のブレザーの胸ポケットに俺の針が仕込んである。使い方はわかるな??』
「小さいころ習ったからね!!」
携帯の接続端子にワイヤレスインカムを取り付け、右耳に装着する
『俺もすぐそっちに向かう。危ない時は静也を連れて逃げろ』
「了解!!」
香織は教室を飛び出すと、静也のいる体育館裏へとダッシュで向かった
~体育館裏~
「ちょ・・・何やってんだ!!」
「ふふふ・・・ここで叫んだらあなたの中学校生活は終わるわ。それが嫌だったら私と付き合いなさい」
静也は目の前の女、細田優香に辟易していた。ご存じの通り、静也には彼女がいる。それを何度説明してもこの女は納得しない。
「だから彼女がいるんだって!!だから無理だ!!」
「じゃあその彼女と別れなさいよ!!」
「あららら??こんなところにうちの弟が。静也、用事ってこのこと??」
「・・・香織」
いきなり現れたのは、ここまで全力疾走してきた香織だった。教室でてから30秒くらい
「楓から事情は聞いたわ。細田さん。この子には彼女がいるの。だから諦めてちょうだい。諦めきれないんだったら脅迫なんかしないで正々堂々やってみなさい」
「ちょっとまて、何で楓が知ってんだよ」
「小型カメラをつけてあるらしいよ??念のためだって」
「やってくれるなあの天災馬鹿・・・」
天災はお前もだ。
「もうすぐ楓も合流するって。晧姉と彩花も見つけて早く帰りましょう。今日は久々にパパの手料理なんだから」
「父さんの!?」
実は悠生はものすごい料理がうまいのである。恵美はもはや超人の域なのでカウントしない。
「・・・・・・いきなり出てきて何言ってるのかしら。私が誰だか知って言ってるの??」
「細田優香。どっかの財閥の令嬢なんだって??」
「そうよ。世界トップクラスの財閥。細田財閥の一人娘。あなたのお父さんが何処に努めてるのか知らないけど、私のパパに言えば会社をすぐに首になるわよ」
「「・・・へー、だから??」」
静也と香織、双子ならではの息のあったハモりである。そもそも息の合わないハモりなど存在しないが。
「つまり、私には誰も逆らえないのよ!!」
「おっと、それはどうかな??」
突然上空から聞こえた声。香織はすぐに犯人が分かった
「早かったじゃない、兄貴」
「おう、可愛い妹と弟のためだ。学校の用事をほっぽり出してきたぜ」
「そこはやってほしかった・・・・」
・・・自称世界中に友達がいる楓だった
「さて、細田優香さん、だったか?悪いが静也は諦めてくれ。言っておくが自慢の権力は俺たちには通用しない。」
「・・・いきなり出てきて何を言っているの!?私に逆らうとあなた達の父親が・・・」
「だから通用しねえって言ってんだろうが。聞き分けがないな。令嬢なんてのはどいつもこいつも犬みたいに吼えるのな。うるさくてしょうがねぇ」
昔楓は高校の方で令嬢とバトッたことがあるらしい。今は関係ないが
「いいから諦めなって。こんなのより良い男はほかにいっぱいいるよ??今度うちの高校きて御覧。文化祭がそろそろだから」
楓は細田に近寄る。すると
「寄るな!!けがらわしい!!」
手にしたナイフ。それで楓を突き刺した。
「「・・・・・・」」
あっけにとられる静也と香織。普通なら悲鳴上げてもおかしくないのだが、この二人にはすでに分かっていた
「これこれ。俺じゃなかったら刺さってたよ??」
細田の手に残されたのはナイフの柄のみ。
つまり粉々に砕けたのだ。鉄のナイフが
「寸打って言ってな。触れた一瞬に全ての力を込める技だ。」
「・・・・・・化け物」
それだけ呟いた細田は、逃げるように走り去ってしまった
「・・・・・・ちょっと傷ついた」
「まぁいいわ。ありがと楓、助かったわ」
この時の香織は気付かなかった。
細田優香という人間の狂ったような危うさを。
そして翌日・・・・・・
「どうも。病欠してしまった大谷先生に代わって、しばらくの間担任を務めさせていただく、吉野悠生です。」
3年2組の教室で、若干1名が驚愕していた。
「そして、今日から一緒に勉強させていただく、神崎楓です。」
というか、香織である
事の顛末は、今日の朝休みのことだった。
「おい中村!!」
香織は、自分を呼ぶ声に振り向く。すると
「・・・痛い」
眉間に、紙屑がぶつけられた。それを皮切りに、チョーク、どせいさん、どせいさん等が投げつけられる。
「LIGHT・MY・FIRE!!!・・・・あれ??」
静也がトイレから帰ってくると、投擲は止む。しかし香織の周りに散らばっているどせいさんは隠しきれない。
「・・・・何だこれ」
とたん、静也の様子が一変する。今まではつかみどころのない雲。そして今は
「・・・香織に何してんだ、犬ども」
大切な人を守る、忠実な番犬。
野生的で、触れるものすべてを切り裂く、研ぎ澄まされた刃。
「別に、何もしていないわよ??」
静也に気圧されている人混みから現れたのは、昨日静也を脅して付き合おうとした女、細田優香である。
「おい、お前の手下どもがうちの姉に手ぇ出してんだろ。」
静也は、既に楓から情報を得ているため、犯人が優香の取り巻きであることを見抜いている。しかしそれを知らない優香は、しらを切り続ける
「さぁ??何の証拠もないのに良くそんなことが言えるわね」
「・・・逆に聞くが、お前たちが投げていないという証拠はどこにある??」
「投げたという証拠がないから投げて無いのよ」
「・・・・・・お前、頭悪いのか??」
静也は呆れてしまう、こんな馬鹿な奴とやり取りしていたのかと。
「・・・・・・まぁいい、香織、どっかケガはしてないよな??」
「うん、それは平気(そもそも怪我してたらクラス皆死んじゃうからね)」
外傷が無いことを確認すると、静也はいつも通りに戻り、「トイレ。」と言い残してどこかへ去って行った。
そして、悠生と楓が学校に現れたのである。
「号令!!」
「きりーつ、れーい、ちゃくせーき」
今いちしまらない号令の後、香織は高速もかくやと言うスピードで悠生と楓、静也を捕獲、屋上の扉まで全力ダッシュで駆け抜けた。世界新記録おめでとう。
「―――何で二人がここにいるのかな?」
「静也に聞いた」
「―――何で教えたのかな??」
「教えろって楓が」
「―――死にたい??」
「俺だけ酷くないか!?」
なぜか楓にだけ物言いがえげつない。
「とりあえず、しばらくは監視するから安心しろ」
「どう安心しろと??明らかにより危険だよ??」
「直接的なことはしない。ただ見るだけだ。」
悠生と楓はチャイムが鳴ると、「いつもどおりに接してくれていいぞ」と言残して階段を下りて行った
「そもそも、なんで楓は偽名を使っているのかしら・・・・・・」
偽名を使った意味を、香織はほどなくして知ることになる。
「んだとこのクソ女!!」
「だから!!あなたが何でここにいるのよ!」
「俺は香織と静也の家の近くに住んでんだよ!!」
「じゃあ何で今更転校してきたのよ!!」
「・・・人の家の事情を詮索するな!!」
「(何この三文芝居。)」
香織は全力で教室から逃げたい衝動を抑え込み、半ば諦めながら教室に入って行った
「!!。中村さん!!本当に神崎くんはあなたの兄妹ではないのね??」
「・・・ええ、楓と私たちは兄妹ではないわ」
ああめんどくさい。素直にそう思った香織だった
「・・・・・・とにかく、このクラスにいる以上は私の言うことには絶対だから」
「だが断る」
「・・・即答!?私は細田財閥の一人むす「うるせーよ、細田ってあれだろ??俺がちょっと前に技術提供したとこ」・・・え??」
優香はあっけにとられたような顔をする。それが面白いのか、楓は笑いをこらえながら
「IT企業でNO.1のシェアだっけ??俺が断ってたらとっくに潰れてたぜ??」
「そ・・・それって」
「まぁとりあえずたかだか中学生に協力を求めているようじゃ細田も終わりだなってことだよ」
言いたいことだけ羅列し、楓は机に突っ伏してしまう。完徹3日目のため、結構頭が回っていないのだ。
「・・・・・・授業始まるよ、楓」
「・・・んあ、マジか。つってももう授業受ける必要無いんだけどな」
楓は高校生だ。だから中学の授業は受けなくても問題ない
「にしてもメンドイな、御嬢様ってのは」
楓の席は静也と香織のすぐそばだ。なので比較的楽に会話ができる。
「仕方ないよ。だってああだもん」
香織が指差す先には、「さすが細田さん!!」「相変わらずのリーダーシップですわ!!」等という戯言を吐く取り巻き共が、これでもかと細田を盛りたてている。
「・・・・ブッ殺してぇな」
「やめなさい」
ある一角になるとものすごい短気な長男は、今にも襲いかかりそうな(殺人的な意味で)状態だ。
「・・・仕方ねぇ、可愛い妹のために我慢するか。それにしても殺してやりたいな」
我慢できてないし。
事件が起きたのは、そのあとしばらくしてからだった
それは、休み時間の事だった
楓と悠生、それに静也が連れだって「「「トイレ」」」と始めから終わりまで完全にハモって出て行ったところから始まる。
「早く戻ってこないかな・・・・・・」
いつもなら気にしないのだが、今日の香織はある事情によってすごく不安になっている
ある事情。それは先天性精神不全症という。
一ヶ月に3回ほど、精神的にとても不安定になる謎の病気。原因も分からず、治療法も不明。正真正銘未知の病だ
今日は正に、3回の内の一回なのである
「・・・私もトイレに行って来よう」
実に自然な口実を述べてから、自分を正当化してから、香織は席を立つ
トイレに行くため、本音は安心を得るために。
「・・・!。・・・・・・じゃ・・・・よ」
「??この声は・・・」
トイレへ向かう道の途中。聞き慣れた声に香織は気付く。それは双子の弟である静也のものだ。
「・・・二日酔い・・・薬・・・」
「二日酔い??」
続いて、楓の声も聞こえてくる。しかも会話の内容がものすごい怪しい
声が聞こえてくるのはトイレではなくそのすぐそばの空き教室。おそらく悠生もそこにいるのだろう
「何を話しているのかな・・・??」
香織はドアの近くに寄り、耳を澄ます
「とりあえず、このままじゃヤバいだろ」
「ああ、全く・・・かおりがなくなればいいのに・・・・」
「(・・・え??今、なんて???)」
聞こえてきたのは衝撃的な一言。静也から発せられた言葉は、香織の心を砕くには十分すぎた。
「ん??まさか・・・!!」
楓がわずかな物音に気付く。香織は慌てて階段を駆け上り、屋上前の扉へと向かう。そこは香織のお気に入りの場所。誰もいない、静かな・・・・
「やっぱり、中村をやっちゃいますか。」
「ええ、あの女には一度身の程を理解してもらわないと」
何でこう、タイミングが悪いのだろう。つーか何でそこにいるんだ。
「・・・もう、いいか・・・」
今聞こえてきたのは間違いなく香織を貶める作戦を話しあっていた
「でも・・・」
静也達は頼れない。彩花じゃ相手を殺してしまうし、皓子じゃ逆にやられてしまう。
つまり、頼れる人は今居ない。正真正銘孤独、一人きりだ。
「う・・ああ・・・」
恐怖、畏れ、不安、さみしさ・・・どす黒い感情が香織の中に渦巻く。足がすくみ、手が震える
カラカラになったのどから声を絞り出す。今まではその言葉は意味のあるものだったが、今は意味などない。だって・・・
「たす・・・けて・・・」
助けてくれる人など、いないのだから。
「・・・全く、なんかおかしいと思ったら・・・なんで二日酔いで学校来るんだよ。ほい、薬」
悠生がふらふらしている。どうやら昨日飲み過ぎて二日酔いになってしまったらしい
「とりあえず、このままじゃヤバいだろ」
薬を飲んだとはいえ酒の匂いまでは消すことができない
「うっすらだったら香水って言い張れたんだが・・・」
「ああ、全く・・・もう少し香りが無くなればいいのに・・・」
そう言って消臭剤をスプレーしまくる。と、
「ん??まさか・・・!!」
楓が何かに気付く。
「どうした??」
「まずい、細田と香織が接近してる」
「・・・別にいいんじゃ・・・」
「今日は何の日だ??」
「・・・!!香織の病気の日か!!」
「静也、香織は屋上に向かってる。お前は急いで追いかけろ」
「でも、俺じゃ・・・」
「お前以外にだれがいる!!」
突然声を大きくした楓に驚く静也。楓はそのまま続ける
「俺たちはずっと一緒にはいられない。そうなったら、アイツを守ることができるのは静也、お前だけだろうが」
楓は本来高校生だ。悠生は会社員。一緒に居られたとしてもそれは高々数日だ。
「俺・・・だけ。」
「ああ、良いから早く行け。俺もすぐに向かう。」
楓の言葉を最後まで聞かず、静也はドアをぶち抜き、屋上へと走り出した
「さて、俺は・・・っと」
静也がぶち抜いたドア、その向こうに大柄な男たちがたくさんいる。おおかた、細田の差し金だろう
「何の用だ??」
「優香様の命令だ。一緒に来てもらうぞ」
大柄な男たちはそれこそ無礼に、楓に指を突き付ける
「・・・気をつけな、ここは俺の領域だぜ??むやみに動くと・・・・」
瞬間、突き付けられた指が一筋、紅い軌跡を生む
「・・・死んじまうぜ??」
教室中に張り巡らされた鋼糸。男たちを見つめ、楓は不敵に笑った
「何処だ・・・!!」
静也は走っていた。屋上への道、そこに香織はいなかった。学校中走り回っても、細田すら見つからない
「・・・そうか!!」
今だ探していないのは屋上。残る可能性はそこしかない
「おいおい、縁起でもねぇ・・・」
一瞬よぎった、『最悪の可能性』。それを振り払うように走る。最後の階段を駆け上がり、思いっきりドアを蹴っ飛ばす。そこそこ頑丈なドアは紙屑のごとく吹き飛び、眩しい光に一瞬目がくらむ。だがそれを気にせずに辺りを見回し、・・・いた
「香織!!」
案の定、香織は細田とその取り巻きに囲まれていた
「テメェら!!なにしてやがる!!」
静也は取り巻きに近づき、容赦なく蹴り飛ばす。フェンスにぶち当たり、崩れ落ちていく取り巻き。
「何するのよ!!女に手を出すなんて!!」
「黙れ」
細田など静也の眼中にはない。その眼に映っているのは香織ただ一人。
「香織、悪かった。お前の状態を気にかけることができなくて・・・」
「・・・いで」
「・・・え??」
「ふざけないで!!私の気持ちなんてわからないでしょう!!」
「・・・・・あぁ。」
「たった一人で残されて、不安で、怖くて・・・どせいさんを投げられていた時もそう!!我慢するしか無くて、辛くて・・・そんなことも、どうせ理解できないでしょう!!皆が私を嫌っている!!」
「・・・そっちこそ、そっちこそふざけんな!!誰もお前の事を嫌いになんてなっちゃいないんだよ!!」
「嘘よ!!さっきだってあんなこと!!」
「・・・!!聞いてたのか。あれは・・・」
「「香織が亡くなればいいのに」・・・そう言ったわよね!!」
「「香り(匂いの方)が無くなれば(消臭できれば)良いのに」って意味だ!!別にお前のことを言ったんじゃない!!」
香織は不安定な中一生懸命に耐えた。信用できる家族がそばにいてくれる。だから頑張れる。そのはずだった。
しかし、その信用は打ち砕かれてしまった。
実際はそんなことは無いのだが。
「もう・・・何も信じられないよ。楓も、静也も、ママでさえも!!」
「俺を信じろとは言わない。でもこれだけは言える。皆お前が大好きだ。だからこんな出しゃばるような真似をしてるんだ」
楓が、発信器を付けていたのも。二人が学校に来たのも。彩花も、皓子も、徳光だって、口にこそ出さないものの相当心配しているはずだ。
そう続けようとした。しかし香織はその言葉をさえぎる。
「嘘よ!!どうせ私なんて・・・・・・」
「生まれてこなければよかったんだ!!!!」
バチィン!!
左ほほに走った痛み。そんなことは気にはならなかった。問題は頬をはたいた人間である
勿論香織が自分ではたいたわけではない。静也でもない。では一体だれが。
「冗談でも、そんなことを言うのはやめなさい!!」
なんと、細田優香であった。
「なにすんだこの女!!」
静也、瞬時に怒りが爆発。
「黙りなさい!!」
しかし、いつも以上の迫力の優香に気圧されてしまう。
「あなた・・・本当に生まれてこなかった方がいいと思っているの??ふざけるものいい加減にしなさい!!誰だって生まれた意味ってのがあるのよ!!どんな人間にも!!それに、あなたが生まれたのは両親が愛し合っていたからでしょう??あなたはそれを否定するの??」
「いや、あの親父なら間違えて・・・とかありそうだけどな」
「・・・(絶対零度の視線)」
「はい、だまります」
「・・・こほん。いい??話を戻すわ。人が育つのには周りの人間の手助けが必要なの。あなたがここまで育ったということは、それだけ愛されている証拠でしょう??あなたのお父さんや、お兄さんだってそう。身分を、年齢を偽ってまで学校に来たのも、それだけあなたが大切だからでしょう??」
「気付いて・・・居たの??」
「あたりまえよ。あなた達には共通のくせがあるもの。ボーっとしてたり何かを考えている時に顎に手を当てる癖がね。」
優香は香織に微笑みかける。
「ごめんなさいね、あんなことをしてしまって。私は一人っ子だから、兄弟に愛されている貴女がうらやましくて、嫉妬していたの」
優香は香織に続けて、本当は仲良くなりたかったこと。実は取り巻きがそろそろだるかったので何とかしたかったこと、そして本当にどせいさんを投げたのは自分たちではないこと。等を話した。
ってマジで投げて無かったのかよ。とは静也の言である
「最後に、私がしたことは消えないわ、でも、私と友達になってくれないかしら??」
『取り巻き』でもなく『下僕』でもなく『友達』。対等に扱うという契約。香織の答えは
「・・・・うん。こちらこそ」
晴れやかな笑顔を浮かべながら、香織はうなずくのだった
2日後、昼休み
「香織、何か飲む??」
「うーん・・・ココア」
「じゃあ俺たちはコーラ」
「って何であなたたちがいるのですか!?」
「だって・・・」
「「心配なんですもの(キラッ」」
「気持ち悪いからやめてください!!」
こうして、優香と香織は、無二の友達となったのだった




