5話 恵美の一日
ここは、なかむらけ。一人ひとりが化け物じみた個性を持ち、秩序がマッハで崩壊している異常空間。
その中でたった二人しかいない常識人の一人、母親の恵美は、毎日忙しい
~AM4:00~
恵美は、だいたいこの時間に起床する。目覚めが良いため、二度寝なんかはほとんどしない。隣でいびきをかいている悠生を起こさないようにベッド(勿論シングル)から降り、リビングへと降りて行く。
「おはよ、母さん」
リビングに降りると、楓がココアを淹れながら恵美を迎える。この長男。恐ろしいことに睡眠時間が極端に少ない。睡眠無しで五日までなら活動できるらしいのだ。もっとも、その時はほとんど死んでいるといっていいらしいのだが。
「おはよう、いつも早いね」
「まぁ、癖になってるからね」
そしていつも通りの席に着いた恵美にココアを淹れてくれる。
「ありがとう」
「ん、それじゃ昨日の夕食の片づけやっちゃうね」
なかむらけは大抵夕食の片づけを翌日の朝にやる。というのも毎回毎回悠生が酔っ払い、片づけどころの騒ぎじゃなくなってしまうのだ。具体的には夜遅くまで大声で騒ぐ、意味不明な事をひたすら羅列する。等の狂態をさらし続ける。結局酔い潰れて寝るのがだいたい夜中の1時くらい。その時には恵美も寝てしまっているので、片づけもできない。よって毎回この時間にやるわけだ
「お願いね」
「ほいほーい」
楓がキッチンに消えたのを見送り、淹れてくれたココアを飲む。この時間は恵美が唯一ゆっくりできる時間と言っても過言ではない。朝の一時が、恵美にとっての小さな楽しみになっているのだ。
今日のお弁当に何を入れようかな??そんなことを考えながら恵美はココアを楽しむ
~AM4:30~
起床から三十分、楓が片づけを終えてソファーに座り、針などの手入れをし始める。これを合図に悠生を起こしにかかる。キッチンに行き、フライパンとお玉を手に取る。寝室に向かう途中に楓と目が合い、(大変だねぇ)的な苦笑を交わし、階段を上る。
いつも通り悠生はぐっすり眠っている。耳元にフライパンを構え、そして・・・・・・
~ガンガンガンガンガン!!!!!!!!!!!~
お玉をフライパンにたたき付ける。鳴り響く轟音。普通の人だったら鼓膜他いろいろ壊れてもおかしくないのだが、そこは人外こと悠生。
「ん・・・むぅ」
唸るだけで起きる気配が微塵もない。しかしいつものことなので気にせず階段を下りる。別に起こすためにやっているんではなく、悠生の意識を少しだけ浮上させるためにやっているのだ。こうでもしないと悠生は起きない。
手入れを終えた楓が入れ違いに上に行き、悠生を起こすための準備を始める。そして・・・・・・
~AM6:00~
~ズドォォォォォン~
なんか爆発した。なのに家が一切揺れていないのはなかむらけクオリティ
「ん・・・朝か」
「ああ、そうだよ。おはよう。そして昨日より数倍強い威力だったのに無傷とか何者だし」
「それに関してはお前もそうだろうが。何眼前で起爆しといて何ともないとか・・・」
いつも通り楓と悠生が会話を始めたのを確認し、恵美はお弁当作りに取り掛かる。悠生に楓、彩花、静也、香織、晧子と6人分のお弁当を作るために、恵美の料理スキルは世界最高クラスにまで昇華されている。その腕を存分に振るい、あり得ない速度で下ごしらえを終わらせる。
~AM6:30~
料理開始から30分。デザートまで作った恵美はいつも通りペットにえさをやる。リビングの一角にある水槽。その主がこの家のペットである。
「徳光くん、おはよう」
「ああママさん、おはようさん」
徳光は恵美が声をかけるとゆっくりと身を起こすのは、金魚こと徳光。最近五分だけなら人間になれるようになったらしい。なぜ五分なのか、そもそも何で人間になれるのかはいまだ解明できていない。つーかどうでもいい
「今日のご飯はかまぼこよ」
「ママさんや、かまぼこって魚のすり身だよな??俺に共食いしろと??」
「あら、そう言えばそうだね」
「忘れられた設定!?」
ちなみにこのやり取りも毎朝の事である。
そして何やら上が騒がしく・・・・・・
「静也~朝だぞ~起きないと足から二ミリずつ刻んでくよ~・・・・・・」
「何起きぬけに恐ろしいこと言ってんの!?それより助けてくれ、こいつら・・・・・・」
「あ、悪い、お楽しみ中だったのね」
「待てぇい!!この状況見てどうしてその結論にたどり着く!!」
「いや、姉と妹に夜這い掛けられてるとしか思えないんだが・・・・・・」
「おっはよー!!!!!」
「イッテェ!?晧子!!お前なんで朝からそんなテンション高いんだよ!!」
「だってオールしたんだもん!!あはははは!!!!」
「だーもうウザってぇ!!下行ってろ!!」
「はーい。あはははは!!!!」
「はいはい起きろ!!おら彩花!!香織!!いい加減静也のベットに潜り込むのやめろ!!お前たちのベットは部屋にあるだろうが!!」
「だってぇ・・・」
「狭い・・・」
「どう考えてもそこに三人の方が狭いだろうが!!」
・・・・・・朝っぱらから何というハイテンション。しかしこれもいつも通りなのはなかむらけクオリティ。
「おはよう、恵美、徳光」
「おはよう、悠生さん」「おはよ、パパさん」
「おっはよぅ!!!」
いつの間にか晧子と悠生が降りて来ていた。起きていたからあたりまえではあるが
「ココアと紅茶、どっちがいい??」
「ココアで」
「あたしも」
「はいはい、まってね」
晧子と悠生がいつも通りの席に着き、それぞれの事をし始める。
なかむらけの朝は、まだ始まったばかりだ
body
~AM7:00~
全「いただきまーす」
ともあれ全員が起床し、朝食を囲む。今日の朝ごはんはグラタンである
朝からグラタンとは、この家族、中々のやり手である
悠生「うん、美味い」
彩花「相変わらずプロも裸足で逃げる腕だね」
恵美「褒めても何も出ないわよ」
晧子「実際美味いよね、恵美おばさんの料理」
恵美「おば・・・」
楓「晧子。『お姉さん』の間違いだろ??」
晧子「そ・・・そうだったね、恵美お姉さんの料理。うん。」
楓「それより母さん、今度これの作り方教えてくれない??」
恵美「良いわよ。以外に簡単だけどね」
楓「母さんの簡単は俺にとって難関だったりするんだぜ??」
静也「あ、時間が・・・」
楓・悠生・晧子・彩花・香織「「「「「ごちそうさまでしたっ!!」」」」」
静也「えぇ!?いつの間に・・・っていうか置いて行かないで!!」
どたばたと慌ただしく駆けていく静也を、慈愛に満ちた顔で見送る恵美。なんだかんだ言いつつも毎日必ず完食していく家族に、心の内で感謝を告げる。
(最初は四人も子供ができちゃって、悠生さんの精力を恨んだけど・・・今思えば、皆いい子に育ってくれたわ)
恵美にとって今やこの家族は、かけがえのないものになっていた。
~AM:7:30~
さて、食器を悠生&楓の合作。『食器粉砕機』に入れ、スイッチを入れる
~キュイン・・・ズガガガガガガッ~
食器洗い機とは思えない音を立てて稼動する食器粉砕機。名前からしてヤバそうだが名前に反して食器をけして壊さずに汚れだけを完全に除去する。無駄にクオリティが高いため、食器は新品同様の輝きを取り戻すのだ
~AM8:00~
粉砕機が元気に稼働している間に部屋の掃除を始める。と言っても恵美がやるのは
「よいしょっと・・・」
しゃがみ込み、下に待機していた五体ほどの円形のロボットのスイッチを入れる。ロボットたちはそれぞれ別の方向に向けて走り出し、通った後には塵一つない。
そう、こいつらは悠生作の掃除ロボット。その名は・・・
「相変わらずすごい綺麗になるわね、ルンバ───
・・・すいませんでした、これは普通に買ったやつっぽ───
───MKⅡ」
──MKⅡ!?
~AM9:00~
ともあれルンバMKⅡに掃除を任せ、洗濯物を畳みに行く恵美。
二階へ上がり、洗濯物を取り込み、せっせと畳む
「これは静也君の、これは楓君の、これは・・・??」
得体のしれないものが洗濯ものの中に入っていた。見た感じ男物の服だが、だれもこんなチャラい服は着ない。
「ああ、それ俺のだわ」
ドアから聞こえた声に振り向くと、徳光(人間ヴァージョン)がドアに寄りかかっていた
「あれ??徳光君、いつの間に人間になったの??」
「今さっきだよ。なんかひまだから手伝おうと思って」
「そう??じゃあ洗濯ものを畳んでくれる??」
「OK、任せろ」
徳光と二人、せっせと畳み続ける。人数が多いため、洗濯物の量は半端じゃない。
~ひゅるるるる・・・ぷすっ~
「痛い!?」
開け放たれた窓から、針が飛んできた。徳光の背中に刺さったそれを見ると、紙が括りつけられている。それを広げてみると
『なんか母さんに危険が走ってる気がしたので投げましたby楓』
そう書いてあった
「・・・俺がママさんといることが危険だと言いたいのか!?」
徳光、激昂
まぁ、あながち間違ってもいないので特に何も言わずにスル-して洗濯物たたみを再開する。その後も何度か針やら何やら飛んできたが、特に関係ないので
喰らえ、必殺!!
KA★TU★A★I★!!!
「調子に乗っちゃだめだよ??」
・・・・はい、すいませんでした
~PM0:30~
時刻は正午を回り、そろそろお昼ごはんの時間だ。
洗濯、洗い物、お風呂掃除、トイレ掃除等を終わらせ、お昼ごはんを作ろうと冷蔵庫を開ける恵美
「あれ・・・少ない」
冷蔵庫には数えるほどしか食材がなく、お米も残り少ない。そう言えば今日は買い出しの日だったと思いだす恵美。どうにかお昼は平気としても、夜ごはんはとてもじゃないがたりない。かといって一人で行くには重いものもあるわけで、さすがに一人では無理かと考えていると
「あれ??全然ないじゃん。買い出し行くなら付き合うよ??」
ここで出ました人間型金魚こと徳光。三分しか人間になれないので今まで水槽に入っていました。
「そう??じゃあ頼もうかな」
「OK、任せろ」
あれ??なんかデジャブ・・・
~ひゅるるるる・・・~
「甘い!!ってえぇ!?」
間抜けな音とともに飛んできたのは、鉄球でした☆
「何でこんなもん投げてくんだよ!!授業中だろ!?」
例のごとく鉄球には紙が貼ってあり、そこには
『体育の授業中に、冷蔵庫の中身が少ないからって徳光と母さんが買い物に行く気がしたので投げましたby楓』
「「予想以上に正確に把握している!?」」
これにはさすがに恵美でもツッコンでしまう。
「さすがにこれは人外というか魔物に近い気がする」
徳光は鉄球を投げ返し(楓のいる高校に向かってだ)ながら呟く。うん、お前が言うな。
「とりあえずいきましょう」
「あいさー」
紆余曲折は特になく、極平和にスーパーへと到着した二人。恵美は買い物リストを取りだす
「えっと、お米20Kgにお肉400g、ピーマンとニンジン、ナスと・・・」
「量が多いな、一回の買い物なのに」
「それと電球にグラス、マフラーに・・・」
「あ、食品だけじゃないのね。買うモノって」
「肉切り包丁、中華包丁、出刃包丁・・・」
「あれ??なんか先行き不安だぞ?」
「ハンドミキサーにペーパーナイフ。それから包帯」
「誰かが怪我するの前提なんだ!!」
「返り血対策のカッパに手袋、マスク、帽子・・・」
「誰か殺す気ですか??」
「トカレフ、グロック、ルガーにベレッタ」
「拳銃!?スーパーには売ってないと思うよ!?」
「バター」
「え、それで終了!?なんかしょうもない!!」
「・・・と見せかけてエロ本」
「何故!?」
「・・・は買わない」
「デスよね!!」
~PM15:30~
結局必要なものだけを購入し、二人は帰路についていた
恵美「大丈夫??」
徳光「平気だ。これくらい重さじゃないから」
恵美「そう??ホントに平気??」
徳光「・・・というか持たせたら静也を始めとする鬼畜集団に殺されちゃうから」
恵美「あはは・・・」
苦笑する恵美。
???「あ、母さん、それに金魚も」
坂の上から声がする。見るとそこには・・・
徳光「ん??誰もいないぞ??」
???「こっちだこっち」
坂の上、に立っている塀の上にいたのは楓だった
徳光「何故そこに??」
楓「なんとなく」
楓はてくてく歩いて合流し、三人で歩きながらしょうもない雑談をしていた。と
香織「あ、お母さん」
彩花「それに金魚もいる」
晧子「あ、楓も」
静也「これはこれは皆さんお揃いで」
晧子、香織、彩花、静也だった。この四人は学校が同じなため、時折に一緒帰ってくる。今日はたまたまそうだったらしい
楓「ん??静也、お前今日告白されたか??」
静也「な・・・何故それを!?」
彩花「あれ??戸琴さんは??」
晧子「戸琴さん??」
香織「静也の元カノ。」
静也「現役だよ!!」
楓「じゃあ何故告白された??」
静也「そ、それは・・・」
??「ほう、言ってみろ、どうした??」
子供たち「「「「「(お)父さん!?」」」」」
悠生も合流。なんでも今日は早く帰れる日だったらしい
楓「結局全員集合ってことか」
彩花「まあいいんじゃない??たまにはこういうのも」
8人そろっての帰宅。それは初めてのことであった
悠生「時に金魚よ、何でそんなに重そうな荷物を持っているんだ??」
徳光「買い物に行ってたんだよ。荷物持ちだ」
悠生「ほう・・・その割には楽そうだな」
徳光「全然重くないからな」
悠生「じゃあこれも頼む」
楓「あ、じゃあ俺も」
静也「俺も~」
彩花「あたしのも!!」
香織「私も」
晧子「うんじゃウチも」
徳光「ねぇ、あんたたち馬鹿なの??死ぬの??」
悠生「天才ですが何か??」
徳光「・・・・・・・(いや天才って言うより変態だろもはや)」
・・・とまあこんな感じに、平和に暮らしていたわけだ。
温かい家庭だった。
でも、それは一瞬で、
ある出来事によって、平和ではなくなっちまう
次は、香織の物語。
学校で起きるイジメ。だれにも相談しない香織に、静也がキレる。
全ては、そこから始まった・・・・
・・・とか何とか言っちゃって~。




